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疾風!プレステイル  作者: やくも
第二話 刹那の壁を打ち砕け
13/75

2-3 カガミさんちの双子ちゃん

『ーー続いてのニュースはーー』


 カチャカチャとなる食器の音と終始無言の2人にテレビの音が食卓にある。

食事風景としては些か寂しいものがあるが、それは否定しようがない。


 セツナ自身あまりお喋りなワケでもないし、クオンはクオンで美味いモノでも与えると黙々と食うタイプである。

両親は、と言うと……2人とも揃いも揃ってフットワークが軽いのか家を開けている事が多い。

いや、いる方が稀か。

今は確か揃って海外出張に行っているはずだ。


 そんな事でカガミ家の食卓を支配する音はテレビだ。

しかし、テレビも堅っ苦しいニュース番組であるので何とも彩りもない。

その分、食事には一切の妥協無し。

かたや華やかな食事が並び、かたや華やかさとはかけ離れた日常と言う非常にアンバランスな光景、それがカガミ家の食卓。


『ーー市で爆発事故が発生し、付近の住人は一時避難しました。 爆発の規模は広範囲であるものの幸い死傷者は0でありーー』


 セツナがピクリと反応する。

テレビのニュースが告げるは昨日のこと。

まぁ、テレビ屋さんが放っておく訳がないな、アレは。


「ねえ」


 とクオン。

既に3枚目のトーストをサクリと音を立て頬張る。

朝から食い過ぎだろ。


「……んだよ?」


 牛乳を口にする。

うむ、カルシウムが身体の隅々まで行き渡る、そんな気がする。

やはり骨は丈夫にしないとな。

決して背丈の事なんか気にしてないぞ。


「ナユ姉とは何処まで進んだの? もしかCまで行っちゃった?」


 ブッと牛乳を噴き出しそうになる。

朝っぱらからなんて核弾頭を放り込むんだコイツは。


「ーーお前なあ……」

「ウソウソ、冗談だってば」


 そんな度胸セツナにあるわけ無いし、とヒラヒラと手を振る。

それはそれで馬鹿にしてるだろ、お前。


「ーーで、何だ?」


 セツナはイラつきを隠す事なくクオンの話を促す。

クオンは、あまりにもいつも通り通りだったから忘れてたケドさ、と前置いて続けた。


「あんた、昨日ナユ姉とあっちの方に行ってたんじゃないの?」


 偽る必要は皆無、セツナは首を縦に振り肯定する。

大丈夫だったの? と案の定ナユタの方を心配してきた。


「当たり前だ。 ナユタも大事には至ってない」

『良く言うよ……』


 ウルサイ終わり良ければすべて良しだ、頭の中のツッコミに噛み付く。

彼女はただ軽く足を捻っただけだ。


 嘘は言ってない。

事実は聞かれた事を答えた。

間違った事は言ってない。

彼女は足を捻ったものの怪我に入らないような状態だ。

昨日は多分、パニックのし過ぎて動けなくなったのだろう。


 しかし、細部は言わない。

事の顛末なぞクオンに話したならば、即ち、それは皆の知る事と成るだろう。

それ程までに彼女のウワサ好きと言うかウワサの伝染力は高い。

ある種のカリスマ的なものかもしれない。


「大事はない…ってナユ姉怪我したの?」

「らしいな」

「ダメっしょ! セツナの三大義務はナユ姉を守ることなんだから!」


 ……そこ、怒るところか?

と言うかなんだ、三大義務って……初めて聞いたぞ。

ナントカ5つの誓い…みたいなやつか?


「一つ、セツナは何があってもどんな時でも守り通す事! ナユ姉はあたし達の財産です」


 クオンが勢い良く立ち上がった。

椅子がガタッと後ろに吹き飛ばしながら。

セツナは冷ややかな視線を投げつける。


「二つ、セツナはナユ姉を幸せにする事! ナユ姉の幸せはあたしの幸せです」


 拳を振り上げ力説するクオンを残念なモノを見るような視線を送る。

やっぱりコイツ面倒臭い。

思いっきり脛を蹴っ飛ばしていいのかな。


「三つ、ーーいい? これが一番重要なんだけどーー」


 ズイッと身を乗り出してくる。

セツナはそれに動じず、最早無の境地に至ってるのでは…と思われそうな程の一片の憐れみと無感情さを持って彼女を見つめる。

大きく深呼吸。


「ーーセツナは一生、あたしを飢えさせず、苦労させない事」


 目が点になる。

今、コイツ何て言った?


「あたしはセツナとナユ姉の愛のキューピットです。 飢えにより効果が半減どころか、祟りがーーイダッ!」


 無表情でクオンの脛を蹴り飛ばす。

思いっきり、力いっぱい、躊躇無くあと2発。

コイツ、これが本音か。

是が非でも共同したくないようだ。

どこかで会った事があるような?ーー彼が頭の中で首を傾げるが、セツナはそれを華麗にスルーした。


「イダッ! 痛いってセツナ!」

「あれは…エサをちゃんと与えるように、と解釈していいよな? ーー何と言うか……ペットみたいだな」


 何時の間にか、セツナはクオンの傍に立っていた。

そしてこれ以上無い程の邪悪な笑顔で彼女を見下ろす。

これ以上無い恐怖を教えてやると言わんばかりに。

彼女はイヤ、イヤ、と首を横に振る。


「何が嫌なのかな…クオン?」


 優しく、そして、黒い感情だけを込めて彼女の肩に手を置く。

ビクッと彼女の身体が跳ねる。


「そうだな…、ペットなら躾が必要だな」


 クオンの目の前は真っ暗になった。

そんな時だった。


「おっはよぅ!」


 聞き慣れた声と強い衝撃がセツナを襲う。

軽いデジャヴュを感じながら世界が横に流れて行く。

ああ、また、体当たり、された、のか。


「ーー!?」


 吹っ飛ばされ、頭に衝撃を、目には弾けんばかりの火花を、意識が強制的にシャットダウンした。


「……きゅ~…」


 我に返ったクオンは一瞬で状況を理解する。

ぶっ倒れてノビているセツナに、その傍でオロオロしている彼女……導き出される答えはただ一つ。


「ナユ姉…ぐっじょぶ!」

「え… え~?」


 彼女はナユタに輝かんばかりの笑顔とサムズアップを送った。

彼女は形のいい眉を八の字に下げ困惑していた。

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