Ⅳ 『スーズ』
第四話です。
「何回も言ってるが、天使は、人々の願いをかなえるためにいるんだ。」
「うん」
「俺たちは、願いを実現させるために、『スーズ』というのを使うんだ。」
「『スーズ』?」
「まあ、一種の魔法みたいなもんだ。天使によって違うが、皆、動物や物の形をしている。」
そういうと、ジ―クは右手で左手の甲に指で何かを書いた。
すると、ジ―クの左手から青白く光って何かが飛び出してきた。
「わぁ…」
「俺の場合は、長剣だ。ま、俺ぐらいの力量にいなると、二種類になる。変化ができるようになるんだ。」
そう言ってジ―クは左手の甲にもう一回何かを書いた。
すると今度は動物が出てきた。と、ほぼ同時に剣は消えてしまったが。
「と…虎?」
あまりにも大かったため、ランティスは驚いた。
「俺の場合は、だが。お前もやってみるか?」
興味身心に虎を見ていたから、やりたいと思っている、とでも思ったのだろう。まあ、少しはやってみたいという気持ちもあったから、否定はしないが。
「うん。どうやるの?」
「まずは、自己紹介だな。なにか書くものないか?」
自己紹介?一体誰に??
疑問は消えなかったが、とりあえず従うことにした。
「名前はランティス、女、十五歳、身長***㎝、祖父と二人暮らし、幼いころの記憶なしっと…」
用意した紙に、ジ―クは次々とランティスのプロフィールを書いていく。
「ねえ、こんなの書いて、何に使うの?」
気になって仕方がなかった。我慢していたが、とうとう耐えきれなくなった。
「これで、お前に合った『スーズ』を見つけるんだ。」
私に合った『スーズ』?
声には出さなかったのだが、ジ―クは聞こえたかのように言ってきた。
「そう。好みや性格って人それぞれ違うように、『スーズ』もみんな違うんだ。だから、自分に合った『スーズ』を見つけて、契約する必要があるんだ。」
「へぇ…契約って?」
「まあ、『スーズ』を呼び出せれば契約が完了したことになる。向こうは嫌なら来ないからな」
あまりにもさっぱりと言われた為、もし来てくれなかったらどうなるのか、という不安がよぎった。
「よしできた。これでいい。両手を広げて。」
書けたらしく、彼はその紙を私の両手にのせた。
すると、紙から青白い炎がでてきて、やがて紙は燃え尽きた。だが、不思議なことに熱いと感じることはなかった。
燃え尽きた紙のくずから、またまた青白いものが出てきた。今度は炎ではなく、雌鹿だった。
「きれい…」
その雌鹿がとても美しかったため、しばらく見入ってしまった。
「これが、おまえの『スーズ』だ。」
ジ―クに言われ、ランティスはますます見入ってしまった。
「なんてきれいな雌鹿なの………」
「ああ。さすがだな。そうだ、これをやる。」
ジ―クはあの真っ黒な服の胸元にあるポケットから、ペンダントを取りだして渡してきた。よく見ると、クローバーの飾りが付いている。
「なにこれ…」