脱糞ババアと放尿ジジイ
キャベツを両手で持ったババアは、「キィエーィッ」と奇声をあげて、背後から、ジジイの頭に、全力で振り下ろした。キャベツは爆発したように散って、ジジイは「マーキュリィッ」と叫び声をあげた。ジジイの首はジャバラのように、頭部は危険水域までメリこんで、物理法則を超越しながら、ペチャンと顔から倒れた。スーパーの店内は騒然となった。キャベツが粉々になっているのが、その破壊力を物語っている。
近くにいた客が、ババアにインタビューをした。
「何故、キャベツを使用したのか?」
ババアは、笑顔で答えた。
「今ぁ旬でぇ、甘みぃあっから」
ジジイは、失禁している。
「そもそも何故、今回このような行動に出たのか?」
「訳などねぇ」
ババアとジジイは共に、九十歳を越えていた。
「今後の展開は?」
「そごに、ブッ倒れでるジジイと、芋ぉ食って寝ます」
失神していたジジイが、ブツブツと「だ、大丈夫。大丈夫だから」と小さな声で、痩せた上半身を起こし、支えてくれている客に言った。
心配そうな客は、改めて訊いた、
「大丈夫ですか?」
ジジイは、鼻からだけでなく、耳からも大量の血が出ている。
「大丈夫だ。……降りやまない雨など、ない」と、訳のわからないことを、照れくさそうに、ほざいた。
数日後、老夫婦は自動車で、スーパーに向かっていた。運転席のジジイは、ようやく復讐の時が来たと、嬉しそうに鼻の穴を拡げた。ジジイはスーパーを通り過ぎて、海へと向かった。ババアは嫌な予感がして、キッ、とジジイをにらんで訊いた、
「どご行ぐべが?」
「僕は、スーパーマーケッツ。君は、あの世」と言って、ジジイはサングラスをかけた。
ババアはシートベルトを外そうとしたが、外れず「チッ」と舌打ちした。ジジイの、罠にかかったのだ。運転するキャデラックは、加速した。
鼻で笑ったジジイは、ボタンを押した。すると助手席の天井が、パカッと開いた。顔を梅のようにして、ババアは怒った。
「ッファッーーック!」
ジジイは最後の、ボタンに手を当て、
「三途の川で、溺れるなよ」と言って、ボタンを押した。
ババアは車内から、逆バンジーの如く、座席ごと空高く放り出され、
「このクソが! 糞が! くそがっー!」と叫んだ。
キャデラックはドリフトをし、反対車線へと向きを変え、スーパーに向かって走り出した。ジジイは両頬を、たこ焼きのようにして笑った。
しかしババアは冷静に、そのキャデラックを眺めていた。こんな事もあろうかと、座席の後ろ側に、パラシュートを仕込んでいたのだ。そして、座席がミサイルのように発射する瞬間、サイドブレーキをつかみ、発射の威力を活かして、もぎ取っていたのだ。もちろん、サイドブレーキにも細工がしてあって、これがそのままライフル銃となった。ババアは片目を閉じて、
「丑寅の方角。速度は120キロ。風向き、アタスの落下スピードが……」やがて、パンッ、と乾いた音がなった。
まずは、タイヤを打ち抜き、車を止めた。車内から、ヒザを震わせたジジイが、手錠された犯罪者のように、取れたハンドルを握って出てきて、
「ブーン」と言って、そのまま自分の足で走った。ジジイは号泣しながら、放尿していた。その滑稽な姿にババアは喜び、脱糞していた。




