平和の神様【冬の童話祭2026】
今日も、新宿のマージャン店『大三元』には、お客さんが、いっぱいです。
とても、優しいお客さんで、いつも、店内の雰囲気は、穏やか。
そこは平和な空気が、ただよっている雰囲気の良い場所でした。
『大三元』のお店には、『平和の神様』を自称するキラキラとした目、大きな口、ふくよかで真っ赤なホッペをした、温和な容貌のおじいさんが居ました。
『平和の神様』は、今日もマージャンを楽しみます。
最初のゲームのことです。
『平和の神様』は、言いました。
「よーし、いい待ちだ。リーチ!」
リーチを宣言すると、あと1枚で自分の勝ちとなることが相手にばれる反面、もらえる点数が高くなります。
あと1枚だけ必要な牌が来れば、その局の勝ちとなる『平和の神様』は、点数が高くなるようにリーチを宣言しました。
対戦相手の小森さんは言いました。
「5萬を切ってのリーチか・・・じゃぁ8萬は通るかな?」
567と続いている数字を持っている場合、5を切ってリーチを宣言することはありませんので、『平和の神様』が67と持って8でのあがりを宣言する可能性はありません。
そう考えて小森さんが、安心して8萬を切って捨てた瞬間のことでした。
『平和の神様』は、キラキラした目を輝かせて言いました。
「そいつは、通らないぜっ!ローン。」
なんと、『平和の神様』は、わざと5を切って8で待つことで、相手を騙してひっかけたのです。
「おいおい、なんでそんな卑怯な待ちをするんだ。あんた、『平和の神様』じゃないのかよっ。」
少し、不機嫌な声で、小森さんは、言いました。
『平和の神様』は、すました顔で言い放ちます。
「これが、マージャンってもんだよ。ひっかかる方が悪いのさ!」
次のゲームのことでした。
『平和のかみさま』は、言いました。
「よーし、いい待ちだ。こいつは、自分でツモれるだろうっ。リーチ!」
対戦相手の渋河さんは、言いました。
「赤色の5萬を切ってのリーチか・・・じゃぁ7萬は通るかな?」
赤色の5萬は、持っているだけで点数が高くなる特別な牌です。
その赤い5萬を切っているということは、『平和の神様』は、他に通常の5も持っていないということが推理できます。
つまりは、56という形から、『平和の神様』が7をあがり牌として待っている可能性がないのです。
しかし、そう考えた渋河さんが、安心して7萬を切って捨てた瞬間のことでした。
『平和の神様』は、キラキラした目を輝かせて言いました。
「そいつは、通らないぜっ!ローン。」
なんと、『平和の神様』は、わざと赤い5を切って7で待つことで、相手を騙してひっかけたのです。
「ちょっと待てよ!なんでそんな卑怯な待ちをするんだ。赤い5を切って、普通の5と6を持って相手をだますなんて・・・あんた、『平和の神様』じゃないのかよっ!」
渋河さんは、怒鳴り声をあげました。
しかし、『平和の神様』は、すました顔で言い放ちます。
「最近、目が悪くなってきて、赤色が分からなかっただけだなぁ。そもそもそんな牌を切るのが悪いんじゃないのかい?」
お店の平和な空気は、いつのまにか殺伐としたものとなっていました。
しかし、ゲームは続きます。
そしてやって来たのは、オーラスと呼ばれる最終ゲームです。
『平和の神様』は、言いました。
「よーし、いい待ちだ。最後は、自分で引いて決めてやる。リーチ!」
対戦相手の大井さんは、疑い深そうに『平和の神様』の顔をじぃぃっと眺めて言いました。
「5→7の順番に切っているから、3萬は通るかな?」
そうです。
4557と持っていたら、5が3枚集まることを期待して、5は切らずに7から捨てるのがセオリーです。
つまり、『平和の神様』が45を持って、3で待つ場合は、7→5と捨てるはず・・・5→7の順番であれば、『平和の神様』が45を持って、3で待つ可能性はありません。
大井さんは、それでも恐る恐る3萬を切ります。
『平和の神様』は、少し間をおいて溜めた後、キラキラした目で言いました。
「この煮詰まった局面で、そんなの出るかねぇ。ローン!」
なんと、『平和の神様』は、わざと逆順に牌を切ることで、相手を騙してひっかけたのです。
ガシャンッ!
その瞬間、麻雀牌が飛び散る激しい音がしました。
バコン! ボコン! バカン!
続いて鈍い打撃音も響きます。
10分後のことです。
そこは、新宿のマージャン店の外にあるごみ捨て場・・・
デカピンという大きな文字が書かれた看板の前には、なぜか目にパンダのような青あざを作って伸びている『平和の神様』の姿がありました。
その目の上には、キラキラしたお星さまが回るように飛んでいます。
新宿のマージャン店『大三元』は、今日も平和!!!
閉店後のお店を出て見上げる空には、きっとキラキラとしたお星さまが輝いているはずです。
(おしまい♪)
☆彡 おまけ ☆彡
大井さんは、それでも恐る恐る3萬を切ります。
『平和の神様』は、少し間をおいて溜めた後、キラキラした目で言いました。
「この煮詰まった局面で、そんなの出るかねぇ。ローン!」
なんと、『平和の神様』は、わざと逆順に牌を切ることで、相手を騙してひっかけたのです。
「おじいちゃん、ちょっと待ちなよ。」
その時でした。
『平和の神様』にロンと言われた対戦相手の大井さんが、あきれたような顔で『平和の神様』が切って捨てた牌を指さしました。
「それ、5萬でもあがりだよ!フリテンだから8000点ねっ。」
悔しそうな『平和の神様』の目から、きらきらとした涙の粒が零れ落ちます。
こうして『平和の神様』は、フリテンというルール違反をしてしまったため、8000点の罰金を取られることになってしまいましたとさ・・・
(おしまい♪)
エンボス加工して漢字に凹凸を付け立体感を出してから、フリテンに気づいたため、作り直すことに・・・悔しいからおまけをつけ足しました。




