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黒獅子

「う~ん、夢ではないみたいね。正直あれじゃあつねられているのかも分からないけれど?」


「ごめん……」


 初対面の女性の顔をいきなりつねるなんて出来るはずもなく、つまむ程度になってしまった。少し肌に吸い付く様なもちもちとした触感はしばらく忘れる事が出来ないと思う。


「ん、夢じゃないっていうならあなたも存在するのよね?」


 目の前にいるにも関わらず存在を疑われるなんて初めての経験だ。

 とりあえず思う事は、全く嬉しくない。


「そう……だけど」


「ふぅん、あんた名前は?」


「え、えっと……黒羽 獅子丸」


「獅子丸っていい名前の割にそんな弱々しい性格しているのね」


「よ、余計なお世話だよ」


「じゃ、あんたは黒獅子って呼ぶわね。私の事はゆかりって呼びなさい」


「え」


 薄々と勘づいていたけれど、やっぱりこの子は常識が通用しないのだろう。なんでたった一度こうして話をしただけの関係で下の名前を呼び捨てしていいと言えるのだろう……?

 彼女がおかしな子なら――せめて僕はちゃんと受け答えをしてあげるべきだろう。


「ごめん、僕は白薔薇さんにさせてほしい」


「なんでよ?」


「いきなり出会った人をしたの名前で呼ぶなんて僕には出来ないし、気が引けるんだ。普段から呼び慣れている言い方にさせてほしい」


「……なるほどね。ならそれでいいわ。でも私はあんたを黒獅子と呼ぶことにしたから」


「そ、そっか……」


「ところであんたがさっきから背後に隠している物は何? それ、明らかに私から見えない様にしているわよね?」


「あ、えっと……」


 白薔薇さんを二度目に見つけた時、反射的に背後へと隠したのは本屋で今日買ったライトノベルを同じくお店でもらった袋に入れた物。別に隠す理由は無かったのだけど、ページが折れて表紙のイラストに引きずられた痕のついた本を彼女に見せてしまうと気にしてしまうかもしれないと思ってそうしてしまった。


「何よ? まさか、女性に見せにくい様な変な物を買ったわけ?」


「ち、違うよ!」


「なら隠す必要ないじゃないの。何を隠しているの?」


「ちょっ、ほ、本当にちょっと待って!」


 近い近い近い近い近い近い近い!

 自分の頭がそれで一杯になる。彼女は腰当たりに隠された本を見ようと身をかがめ、疑る様に見上げている。腕を前に出すと彼女の顔に当たってしまうと思う。


「えい!」


 彼女が僕の背後へと手を伸ばそうとするのを横に跳んで回避する。

 片手だったから良かったのだけど、今両手を伸ばされていたら危なかった。逃げ道が見つからない事もそうだけど、動けずに止まっていたら抱き着かれる形になっていたと思う。本当に良かった。


「あら、そこまで隠されると――ちょっと本気で取りたくなるじゃない!」


「諦めてよ!?」

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