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早登校

 朝早い教室には数人の生徒しかいないので、質問攻めを受ける事も無いのがとても助かる。白薔薇さんのことを聞かれても僕だってわからないのにどうしろと言うのだろうか。


『異世界から来たのよ』


 って言っていたよなんて伝えたとして、誰が受け入れてくれるのだろうか。パルクールの練習だってとぼけようにも、パルクールのプロだってあんな事出来ないだろう。あぁ、もう気が重い……。


「よう獅子丸。今日は早いんだな」


「おはよう海斗君。まぁ教室の前で質問攻めにされるよりは寝ているフリしていた方が良いかなって」


「なんだよつまらない事を言うなぁ。じゃあ俺にだけは教えてくれよ。彼女はなんて言うんだ?」


「な、名前は白薔薇さんって言うんだけど……他は本当に何も知らないよ? 本当に出会ったばかりなんだ」


「これからお互いの事を知り合って、やがて二人は結ばれるってか。オーライ、もう大丈夫だ」


「むむ、結ばれるなんてそんな!」


 海斗君は僕の反論を聞こうとはせず、イヤホンをつけて勉強を開始してしまった。まぁ勉強と言うより僕の噂話をメモしているとかそんな所だと思う。彼はそんなに勉強が出来る人じゃないから。

 本当に白薔薇さんを彼女にするだとか、キスするだとか有り得もしない噂話ばかり立てるのはやめて欲しい。僕はそれを狙って彼女と出会った訳でも庇った訳でも無い。勿論嫌だというつもりは無いけれど、やっぱり彼女にとって迷惑でしかないだろう。


「はぁ……」


 僕は机に突っ伏すと寝たフリをする事にした。勿論他の生徒から何か質問されるのを回避する為だ。どうせ寝たフリをしていたら諦めて勝手に噂話を流すだろう。僕は起きたあとにそれを否定するだけでいい。静かな教室で目を閉じると、本当に眠気がやってきた――


「獅子丸、獅子丸起きろって!」


「はっ!」


 目を覚ましたのは朝のホームルームが始まって少し経ってから。担任の先生が出欠確認をしている時に僕が寝ていたので、海斗君が起こしてくれたみたいだ。


「どうした黒羽、体調悪いのか?」


「あ、ごめんなさい。大丈夫です」


「そうか。良いか、黒羽だけじゃない。皆この時期、季節の変わり目は体調を崩しやすい。体調が悪いと感じたら無理に学校に登校せず休むか、保健室に行くように。以上。それでは朝のホームルームを終わる」


 まだ頭がぼーっとしていたので、先生が教室から出たのを確認してもう少しだけ寝ようかと思った。そのまま寝れたら良かったのだけど、勿論白薔薇さんの事を質問する生徒に囲まれて寝る事は出来なかった。

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