覇気
「なんだあん時のか。なんだ、用事か?」
「あ、あの……タマーの光を買ってくれた事をお礼したくて……」
「なんだよそんな事か。あれはたまたま自分用に買った物が手元にあったから渡しただけだ。気にするなよ」
それで話を終わらされてしまうと僕としてはとても困ってしまうのだけれど。白薔薇さんの家に初めてきた時の思い出が『お礼を受け流されて終わりました』なんて悲しすぎる。
ってあれ、今お姉さんは自分用にって言っていた様な……。
「あの、タマーの光を読んでいるんですか?」
「おう。あれは面白いよな。戦う描写は分かりにくいし戦略はぬるいと思うけど、展開が面白れぇ。今回なんて主人公が何かに吹っ切れたところで終わっただろ? そして次で覚醒するなんて熱い展開だろ!」
「分かります! ずっと頼ってばかりいた主人公が一人で戦える様になるシーンはとても熱くなりました!」
自分には絶対諦めるだろうという状況でもタマーの光の主人公は諦めず立ち向かう。そんな主人公の生き様はとても憧れる。
「なんだお前、話が合うな!」
「僕も意外です。まさか白薔薇さんのお姉さんがタマーの光を読んでいたとは思いませんでした。でもあの本を僕に渡してしまったら自分の分の本が無かったんじゃ……」
「あぁ? そんなもんもう一冊買えばいい話だろ。気にするな気にするな」
「で、でもお金……」
「気にするなと言ったのが聞こえなかったか? それ以上喋ったらそのうざったらしい髪もろともお前の頭をぶった切る」
「……」
お姉さんの怒りに触れてしまったのか、とても低い声色でそう言われてしまった。次何か抗議しようものなら本当に首が飛ぶかもしれないと思ってしまう凄みがそこにはあり、僕は思わず口を閉じてしまった。
お姉さんはそんな僕を見て小さくため息を吐いた後、僕に背を向けてしまった。多分もう振り返るつもりは無いのだろう。
「黒獅子、出よう」
白薔薇さんに肩を叩かれて頷いた僕は、ポケットから財布を取り出し、タマーの光の代金をその場において部屋を後にした。このまま何もせず部屋を出るのはなんか負けた気がして癪だったからだ。
そんな様子を見て白薔薇さんは小さく笑ってから部屋を出た。僕も急いでその後に続く。出る直前、お姉さんから小さく舌打ちが聞こえた気がして背筋が震えた。




