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質問

 教室に戻ると、既に僕と白薔薇さんの事は噂されていて、何人かの生徒は僕にヘアピンを貸してくれるところまで見てしまったそうだ。当然自席に戻ると質問攻めが開始されてしまった。


「お、おい獅子丸! あいつ知り合いじゃないって言ってたじゃん!」


「あ、その……ごめん」


「やっぱり知り合いなの!? どんな関係!? もう付き合っているの?」


「あ、いやそんなわけないよ。僕と白薔薇さんじゃ釣り合わないし……」


「キスしていたってマジ?」


「ぶっ!?」


 不意打ちの質問に、加えていた芋虫パンを吐き出しそうになってしまった。危なかった……。どうすればそんな噂がすぐに生まれるのだろうか。


「それは無いよ。僕だって昨日会ったばかりだもん」


「そうだよなぁ」


 僕の質問に、男子は嬉しそうな声を漏らし、女子は何やら陰口を言う。とりあえず早く食べないと時間が無くなってしまうので、芋虫パンを下で購入した飲み物で流し込む。それから先生が来るまでは、白薔薇さんとの関係のある事無い事の噂を答える時間になった。この時ほど先生が来てくれた事をありがたいと思った事は無い。

 その後の授業は頭に入らず、ただひたすらに先生の書いた黒板をノートに写す作業をしていた。時折先生の目を盗んで回されたメモで、白薔薇さんについて訊かれる事で更に心身の疲労が溜まるのを自覚した。


「お、終わった……」


 最後の授業まで終わった後、帰りのホームルームがあるのを頭で分かっていながらも呟かずにはいられなかった。まだ僕の方を見て何かこそこそ話している声は聞こえるけれど、敢えて無視して僕は帰りの支度をする。


「おい見ろ!」


 そんな折、生徒の一人が窓の外を指差して声を上げた。全員が男につられて視線を窓の外へと向ける。僕も鞄から窓へと目を移す。すぐに彼の言おうとしている事を理解した。

 建物の三階に位置するこの教室からは遠くの電信柱がよく見えるのだけど、その上に彼女は立っていた。外の風は強いのか銀色の髪を靡かせているのがよく分かる。多分彼女は、あの菫色の目で僕の事をまっすぐ見ているのだろうと思ってしまう。


「おい獅子丸! あれ!」


「あ、うん見えているけど……」


 白薔薇さんは動かずに電信柱の上に立っていたかと思えば、三十メートル程離れて配置された隣の電信柱に飛び移り、またその隣の電信柱を飛び移りを繰り返して窓から見えなくなってしまった。

 教室は一気に静まり返り、全員が窓の外を呆然と見つめる。見ていた対象がいなくなれば、今度はその人物に関連する人へ対象が変わるのは当然かもしれない。更に僕への質問攻めが始まる雰囲気を感じた僕は、慌てて教室を抜け出した。後ろから何人かの生徒が質問と共に追いかけてくるけれど、階段を上って振り払う。このまま教室に戻ってまた質問を沢山されるよりはホームルームをサボってしまいたいという考えに至り、僕は屋上の扉を開いた。

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