目つき
「白薔薇さん、これはいじめとかじゃないよ」
「……そこまで追い込まれているの?」
「脅されて言えないって訳じゃないよ!? その、この人達はさっきまで体育の授業だったんだ。で、数量限定のこのパンを買えないからって僕に言っただけで……その、恐喝されているとかそういうのじゃないよ」
「あらそうなの? なら申し訳ない勘違いをしたわね。謝っておくわ」
「い、いやこんな可愛い人に肩を掴んでもらえたんだから、なぁ?」
「そ、そうだよ。別に俺達が悪い事していないってわかってくれたならそれでいいんだよ。ほら獅子丸、これお返しの金。俺達はもう行くからまたな」
白薔薇さんから手を離された二人は、僕にパンの代金を支払うと肩を叩いて校舎の中に戻っていった。去り際に頑張れよって言われたけれど、別にそういう関係じゃないんだけどな……。
「あ、改めてこんにちは。何で白薔薇さんがここに?」
「ん? あぁ、あんたを探していたのよ。昨日の本の件で恩返ししようと思ってね。で、丁度いいところに敵がいると思ったらただの友達だし……はぁ」
「あ、あのごめん……」
「第一! その目が隠れるか隠れないかの所まで伸ばしている前髪のせいであんたがいじめられっ子に見えんの! 黒獅子なんて名前しているんだったらもっとシャキッとしなさいよ」
「い、いや僕の名前は獅子丸……」
白薔薇さんは何を思ったのか、僕の前髪を後ろにやり、自分の紙から抜いたヘアピンで固定した。敢えて隠していた視線が露わになり、恥ずかしさで視線を白薔薇さんから地面へ移す。
「黒獅子、あんた結構いい顔してるのね。その、目つきはとっても悪いけど」
僕が一番気にしている事を平然という白薔薇さん。そんな事自分が一番よくわかっていて、一番気にしているから髪の毛で隠していたんだ。この目つきのせいで少し帰るのが遅くなった時、ガラの悪い人に絡まれてお金を取られてしまう。
「でも、かっこいいと思うわ」
「え?」
「隠しているのが勿体ないわよ。まぁ、あんたの生き方だから別に良いんだけど」
白薔薇さんはそう言ってピンを僕の髪の毛から外すと、数歩離れた。ようやく視線を白薔薇さんへと戻す事が出来る。顔を上げると、何故だか白薔薇さんは怒った顔で僕を見ていた。
「な、何かな?」
「このままじゃあんたに恩返し出来ないからどうしようと思っているのよ。借りは作りたくないからね。ってあんた、時間大丈夫なの?」
「え、あぁ次は教室の授業だからまぁ大丈夫だけど……。白薔薇さんこそ、時間は大丈夫なの?」
「えぇ。どうせやるべき事も今は無いからね。ま、良いわ。どうせこの後またこの建物でやる事があるんでしょ? 終わらしてきなさいよ待っておくから」
「あ、うん」
肩を持って回された挙句、背中を叩いて見送られたけれど……待っておくからって何だろう? もしかして学校が終わるのを待つって事なのかな……。




