人気
早い様な遅い様な、そんな微妙な時間で授業は終わる。でもそれが四限目まで続くと流石に長くも感じてしまう。強面の国語教師が教室を出ていくと同時に、教室の数人が立ち上がる。
「お、行くのか?」
「あ、うん。今日は僕の番だから行ってくる」
僕もその中に混じり立ち上がると、高尾君に見送られて教室を出る。目指しているのは購買部のいるエントランス。いつも月曜日に数量限定で販売している物があって、それを目当てに皆がエントランスへ降りてくる。前から後ろから押されながら購買部の人へお金を渡し、目的のパンを三つ手に入れる。
腕を高く上げてパンが潰されないように気を付けながら、右へ左へと流されて人混みから抜ける。絶対間に合わないと分かっていても生徒が並びたくなる程美味しいパン。名前は芋虫パンなんて呼ばれている。
購買部の部長が営むパン屋の自慢のメニューなんだそうで、初めこそ名前のせいで人気が無かったのに今となってはこんなに大人気の商品となった。
ちなみにそのパン屋は、白薔薇さんがパンを盗んだ場所だ。
「三個ちゃんと買えてよかった……」
一人三つで限定されている芋虫パンを落とさない様に抱えて廊下を歩いていると、
「おう獅子丸君。今日もしっかり買ってくれるとは感心感心」
僕より数センチ背が高く、難いの良い二人に肩を叩かれ、挟まれながら校舎の裏へと案内される。そして校舎を背にして二人が僕へと詰め寄るのだ。
「よぉし、早速二つ渡してもらおうか?」
「そういう約束だもんな?」
「あ、うん……」
僕は素直に手に持ったパンを二つ彼等へと手渡す。男達はニヤニヤしながらポケットに手を入れて僕を見つめる。そんな時、視界の端に銀色の髪をした女性が降りてきた。菫色をした瞳が怒った様にこっちを睨んでいる。
昨日の今日で見間違えるはずも無い。白薔薇さんがどこからか降りてきて、僕達の方へと歩いてきた。そして、彼女の事を気が付いていない男達の肩に掴みかかる。
「……あんた達何しているの?」
「え?」
「ん?」
「一人の男に二人で食って掛かって、何しているのかって聞いているの」
あれ、白薔薇さんすごい勘違いをしているのかもしれない。確かにこの状況、鍛えていない僕と運動部二人の差を見ればそういう現場に見えなくはないのかな……。って、そんな冷静に状況を分析している場合じゃなかった。




