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Dreaming Maker+  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
6/35

五話 誰も悪くなんかないよ

ついに合宿初日となった。皆体力作りなど地道なレッスンに取り掛かる。

それから数日後、ついに合宿初日となった。Dreaming Maker+と百花繚乱のメンバーが事務所前に集まった。

「皆さん揃いましたね!これからバスに乗って合宿場までびゅーんとひとっ走りで行きます!忘れ物は無いですね〜?」世奈が簡単に説明を始めた。

「はいはい質問!どこに行くか聞いて無いんだけどどこ行くの〜?」きぃの質問に確かに...とあちらこちらで声が上がる。

「それは着いてからのお楽しみですよ、それでは行きましょうか!」大地の声に皆はいと返事をしバスに乗り込んだ。


「うわ〜!なんか郊外に出たんじゃないか?緑が増えてきたぞ〜!」裕一の声に皆外を見た。

「確かに...もしかして行き先、相当山奥...?僕虫嫌だなぁ...」誠が虫を想像して身震いした。

「秀ちゃ...僕...酔った...おえっ」優月は口を抑える仕草をする。

「バカ、ここで吐くなよ、せめてこのビニール袋に...」差し出した瞬間吐き出す優月に一同は目をそらし耳を塞いだ。

「大丈夫ですか〜?...とりあえず優月くんは目的地に着いたら一旦休ませましょう。びゅーんとひとっ走りって言いましたけど意外とかかりますから」その一言に皆げんなりした顔をした。

「えぇー!?まだかかんのかよ!!いい加減座りっぱなしでケツ痛いんだけど...」要もぼやく。

「これだけ時間をかけていく価値がある場所ですから。あと少しの辛抱です」大地の言葉に一同は各々返事をしたり眠りこけたりした。


「とうちゃーく!俺がいっちばん乗り〜!」「やだ!きぃが一番乗りなの〜!」裕一ときぃが競い合うようにバスから降りた。着いた場所は皆の予想通り、民家1軒すらない合宿場がポツンとあるだけの山奥だった。

「とりあえず優月くんは休ませておいて...皆さんにスケジュールを改めて説明します!」世奈がスケジュール表を確認しながら話を始める。

「1日目午前は体力作りの為この山全体を使って運動します!曲練習は午後になります!午後十二時から30分間は休憩を挟んで。午後の曲練習は立ち回りの練習も兼ねて合同で。午後六時には皆さん大好き飯盒カレーを手作り!役割分担はこちらでします。午後八時にはお風呂、午後十時には就寝、という流れになります!大丈夫でしょうか?それでは早速先生に来てもらっているので体力作りのトレーニングから行きましょう!」講師の先生の指導のもと、メンバーは体力作りトレーニングを開始した。


「えっと、あれ?皆は?」休憩を終え、すっかり元気になった優月は皆がいなくなっているのを見て呆然と立ち尽くした。


「ぜぇはぁ...ちょっと...休みませんか...」誠は誰よりも早くへばり地面に転がった。

「おいおい、こんなんじゃステージで息切れするぞ、俺たちは先に行く、せいぜい午後までには戻ってこい」割と余裕そうな秀、要、陽昇は山登りランニングの続きを始めた。


「腹筋、ですか?」皆とやっと合流した優月はレッスン内容を改めて聞き始めた。

「そ!ひたすら腹筋1000回!その後に背筋とか腕立て伏せとかもやるって!」裕一も改めて説明をする。

「...」渡がなぜかピクリとも動かない。千尋は渡をツンツンした。

「おーい渡〜?」「んぁ...ごめん、寝てた」その返事に一同は思わずズッコケた。


そうして午前の練習を終え、休憩時間となった。各々持ってきた弁当などを食べていた。

「もごもご...愛央たちはどんなレッスンだった?」

「本当疲れたんだけど、腹筋とか100回ずつ...本当に地道な体力作りって感じだったよ〜」

「100回!?俺たち1000回だぞ!?なんで10分の一だけなんだ!?」

「そりゃ女子と男子にゃ体力差があるだろ、男子と同じレッスンやってたら体壊すぞ、きぃなんてまだ小6だし」コンビニの蕎麦をすすりながら要が答えた。

「でも愛央、すっごい頑張ったじゃない、諦め悪くなったよね、うん。いいことだ」葵もコンビニ弁当を食べながら感心感心、と頷く。諦めが悪くなった、という言葉を聞いて愛央は嬉しさ半分、そして過去を思い出してもどかしさ半分となった。

「そういえば、さっきからあの子、一人で食べているけど誘うべきかしら?」

みかんが一人でサンドイッチを食べる陽昇を指差した。陽昇はこちらのことなど気にせずに黙々とサンドイッチを食べている。

「やめとけ。あいつのペースで馴染めばいい。無理に引き抜こうとすれば余計警戒心を強める」早々に蕎麦を平らげた要はくずかごに蕎麦の容器を投げ込んだ。平気そうな顔をしていたが、内心声をかけたい、誘いたいと要は自分の中の相反する考え同士と葛藤していた。


「それでは午後のレッスン、始めます」先生の合図で皆レッスンに取り掛かった。ステージに出る順番は百花繚乱、Dreaming Maker+の順。お互いステージを去る、ステージに上がる時の立ち振る舞いなどを今日初めて合わせた。

「なるほど、ハイタッチで入れ替わるんだな、そしてここは...」各々話を聞きながらメモを取る。そんな中、陽昇だけはメモを一切取らずずっと下を向いていた。その様子を見かねた秀が立ち上がろうとするが、その足を優月が止めた。

「秀ちゃん、もういい加減にしてよ、秀ちゃんがキレなきゃ平和安寧のままなのに」

「諸悪の根源を取っ払わなきゃ何度も同じことを繰り返すことになる。いいのかそれで」仲がいい友達同士の二人が険悪なムードになる。要はリーダーだから止めなきゃ、という気持ちともう飽き飽きした気持ちの両方に引っ張られる。そこに裕一が立ち上がった。

「誰も悪くなんかないよ。秀は、ユニットに真剣で一生懸命だから、悪いことを許さない気持ちなんだろ?それはすごいいいことだ。でも陽昇にもきっと考えがある。陽昇だって悪いやつじゃないんだ。お兄ちゃんなんかに負けられない、プライドを持ってる筈だ。その行動が奇怪に見えても仕方ない。俺だってなんでだろうって思った。でも、やる気がなければとっくにやめているし、お前に対立もしない。あいつにはあいつのやり方があるはずだ。それをゆっくり見守ってやろう?」そう言うと秀は落ち着いたのか息をふっと吐き座り込んだ。その様子を見た愛央は、だんだん裕一が遠くの人のように感じた。自分はリーダーなのに、喧嘩を止めたり、あんないいことも言えない。もう諦めてしまおうか。ふと、そんな考えが浮かんでしまった。


午後六時。夕飯の時間になった。皆ワイワイと飯盒カレーの準備をする中、愛央はなかなか手が動かなかった。その様子にいち早く気がついた葵が愛央に近寄る。

「どした?嫌なことでもあった?」

「いや、何でもない」何でもない、と言ったら絶対話さないのが愛央の癖だと葵は理解していた。

「本当に耐えきれなくなったら声かけてよ」とだけ言い残してその場を去った。

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