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Dreaming Maker+  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
3/35

二話 何でアイドル目指したの?

ついにレッスンが始まった。まずは基本スペックから。皆のパフォーマンスが次々と行われていく。陽昇のパフォーマンスを見た裕一の頭に、ふとした疑問が浮かんだ。

2回目の集まりの日。シャインエール・プロダクション事務所内のレッスン室に八人が集まった。

「はーい!皆さん注目ー!改めましておはようございます!本日から正式にレッスンが始まります!専任の講師の先生が来ているのであとは先生にお任せしましょう!よろしくお願いします!」世奈がそそくさと説明を終えると男性講師が前に出てきた。

「本日は我々はオーディションで見ているけれども皆さんの基本スペックを披露してみます。まずはお手本映像などがあるのでそちらを見てから。アドバイスもしていきますのでよろしくお願いします」先生がテレビを用意してそこからしばらくお手本映像を見て学んだ。アイドルとしての経験がゼロに等しい渡はついていくのが精一杯ながらも楽しみながら映像を見た。


「いよいよ実践です。風間くんから順にダンス、歌唱を見ていきましょう」先生の合図で裕一からパフォーマンスを始めた。

「風間裕一、 Dreaming Maker完コピ行きます!」そう言ってダンスを始めた。

「...」皆黙々と見ている。完コピ、と言った通りライブでよく見る Dreaming Makerのフリやら歌い方もそっくりに完コピされていた。

「コピー能力は類稀なるものですね。賞賛に値します。ですが皆さん、改善点はどこだか分かりますか?」陽昇と優月が同時に手を挙げた。しかし陽昇は優月が手を挙げたのを見るとすぐ手を下げた。

「桧山くん、分かりますか?」「はい、オリジナリティに欠けるところ、ですかね。誰かの真似っこで観客からお金取るなんてそんなひどい話は無いです」割と辛辣な言い方に裕一はどきりとした。

「その通り。今のはただの真似。あなたらしさをそこから見出す必要がありますね」でも優月の方を見ると「大丈夫、まだまだこれから!」と微笑まれた。裕一はホッとした様子だ。そんな中、陽昇は横目で裕一を睨みつけた。誰も気がついていないが。

「では次、龍ヶ崎くん」「はーい」次は渡の番だ。「えっとーさっきの映像を見たままとりあえずやってみます!」そう言ってパフォーマンスを始めた。

その言葉の通り、あの映像を見た通りの歌とダンス。分かることは、初心者。ということだ。

「お前、ダンススクールとか通ったことある?ボイトレはしたことある?」と秀からの質問に

「生まれてこのかたやったことないでーす」と笑顔で答えた渡。秀も苦笑いを浮かべた。「無理に皆と足並みを揃える必要は無いです。あなたのスタートラインから始めてみましょう」先生もフォローを入れる。「次、黄金坂くん」「はーい!いっきまーす!」勢いよく前のめりになりながら皆の前に立った千尋はパフォーマンスを始めた。オリジナルのダンス、ブレイクダンスだ。そのレベルの高さに思わず渡は「ぱちぱち〜」と拍手をした。

「拍手はまだまだ!次は歌だよ!ダンスよりはちょっと苦手だけど!」と言ったが、なかなか歌も上手い。気になるのは変声期の差し掛かりでややくぐもった声質だということぐらいだ。

「レベルが高いですね。歌もダンスと同レベルになるとよりファンを魅了できるでしょう」先生も賞賛した。千尋はえっへんと胸を張った。「次はリーダーの矢島くんですね」そう言われるとやや緊張気味の要が前に出た。

「えーっと、とりあえず渡と同じくさっきの映像を真似てみます。クオリティはあんまり期待しないでくれ」一言予防線を張りパフォーマンスを始めた。至って普通。といったところだろうか。特に飛び抜けて上手いわけでも下手なわけでもなく、特徴はこれといってない。

「これから特技となるジャンルが出てくるといいですね」そう言う先生と目を合わせることが出来ず、「リーダーなのにすんません、次もっと頑張ります」と肩を落としながら元の位置についた。「そう凹むなってー!」裕一の励ましに要は裕一の肩をどついて答えた。「次は厚木くんお願いします」「はっはい!」誰よりも緊張しながら前に出た。ガチガチだ。

「とりあえず、好きな歌手の歌と、さっきの映像のダンスをやってみますね!」あまりの緊張っぷりに千尋も心配そうに身を乗り出す。歌から始めた。するとすぐに千尋たちの心配も吹き飛んだ。歌唱力は今までで一番。安定した音程、伸びやかな歌声、どこを取っても上手いとしか言いようがなかった。「すごいよ!歌うまいねー!」千尋も思わず褒め称える。「えへへ、良かった、でも...次は期待しないでね」そう言ってダンスを始めた。それは、とてもダンスとは言えなかった。千尋の顔もだんだん曇り汗が一粒頬を滑り落ちた。そしてパフォーマンスを終えると「すみませんでしたぁ!!」と勢いよく土下座した。先生はすぐさまフォローに回った。「いやいやいいんです、土下座するほどでもありません。心意気はあるようですから伸び代がないわけじゃないですよ」そう言うと秀が挙手した。

「はい。質問。さっきも他の奴に聞いたけどダンススクールとか通っては...いないよな。ダンス、好きか?」その質問に「...嫌いです、大嫌いです」と答えた誠は膝に顔を埋めてうずくまった。「...次、桧山くんよろしくお願いします」切り返すように先生の指示で優月が前に出た。「島貫学院アイドル科で今やってる曲の振り付けと歌唱やってみますね!」緊張は一切なく、すぐにパフォーマンスを始めた。芸能人育成学校に通っているだけある。レベルが今までと段違いだ。どれもバランスが良く、プロに近い感じがする。「さすがです、島貫学院に通っているだけあって、洗練されています。この調子でもっと高みを目指しましょう」先生もテンションが上がった様子だった。そして、「秀ちゃん、僕より上手くやらなきゃダメだからね!」と秀に声をかけた。秀も緊張など一切なく前に出て「今優月がやったのと同じやつやります」と言ってパフォーマンスを始めた。こちらも負けじとクオリティが高い。ダンスも歌唱も申し分ないクオリティだ。「宮田くんもさすがです。さぞ努力したんでしょうね。今指摘するポイントは無いですね」とはっきり言い切った。秀も今まで見せたことのない達成感のある顔をした。「では最後、御影くん、よろしくお願いします」しかし陽昇の名前が出ると秀は一瞬で表情を戻した。陽昇は前に出る。

「オリジナルの歌と振り付けがあるんです。披露します」と言った。オリジナルの歌とダンスを披露するのは陽昇だけだった。秀は、皆はパフォーマンスに集中した。

圧倒された。オリジナル曲、と言うことは作曲も自分でしているのだ。歌いやすく馴染みやすいメロディラインと歌詞。歌唱力もついて行っている。ダンスも裕一から見たらプロ振付師とも言えるほどの実力だった。さすが天さんの弟、と思い浮かべると裕一の頭に何か違和感が浮かんだ。ダンスの癖や歌い方の癖をよく見てみた。たくさん観察してきた裕一だからこそ分かった。全く似ていない。別人にしても離れすぎている。天さんに憧れてアイドルを目指したんじゃないのか、なら天さんの影響を1パーセントでも受けていいんじゃないか、と途端に考えが浮かんだ。パフォーマンスを終え「終わります」といいかけた陽昇の声にかぶせて「はい!」と裕一が挙手した。「お前、何でアイドル目指したの?」素直な疑問だった。それ以外何も言葉が出てこなかった。その質問に陽昇は顔をしかめた。「お前に何の関係がある」すぐ我を取り戻した裕一は「ごめん!何でもない!」と手を下ろした。先生が話そうとしたところを今度は秀の声が遮る。「俺も同じことを思った。天さんに憧れてアイドルを目指したんじゃないのか?お前は何でアイドルを目指したんだ?お前のパフォーマンス見たら疑問がたくさん湧いて出たよ」挑発的な秀の言い回しに陽昇は今度こそ目をはっきりと見開き「お前には関係ない!」と一瞥し部屋を出て行った。「ちょっと待ってください!」後ろで見守っていた世奈が陽昇の様子を見に行った。しばらくすると頭が冷えたらしい陽昇と世奈が戻ってきた。それから少しパフォーマンスについての話などをしてその日はレッスンを終えた。


要はリーダーとして、陽昇のことが放っておけなかった。自分は大家族の長男。相談に乗るのは慣れているから大丈夫、と思ってレッスン終わりの陽昇をあちこち探して、屋上で黄昏ている陽昇を見つけた。「おう、ちょっと面貸せや、話してぇことがある。たっくさんな」「...好きにしろ」陽昇は要とともにベンチに座って話を始めた。

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