九話 独りよがりを卒業することだ
午後のレッスンが始まり、翔からの直接指導が入る。その内容にDreaming Maker+のメンバーは仰天する。
午後のレッスンの時間になった。Dreaming Maker+と百花繚乱は、午後は分かれてのレッスンだ。Dreaming Maker+のメンバーが集まる部屋に翔が入ってきた。
「よろしくお願いしますっ!!」要が真っ先に礼をする。つられて皆も礼をした。
「うんうん、挨拶ができるのはいいことだ!先輩だからな俺は!まあ矢島くんは年齢的には俺より上だけども」そう言って皆の前に向き直った。
「色々考えた結果、俺が特別講師として皆を直接指導することにした!ビシバシ行くから覚悟しとけよ〜!早速一人一人に午前のレッスンを見た上での感想を述べよう!」翔は社長からもらった紙切れを見つつまずは裕一の前に立った。
「えー風間くん!熱意は十分!今後はそれが空回らないように全体のスキルアップをしましょう!だそうだ!俺もそう思う!」「はい!頑張ります!」次は渡の前に立った。
「続いて龍ヶ崎くん!まだどのスキルも芽が出たばかり!今はその芽を潰さないようにどのスキルも平等に伸ばしていきましょう!ゆっくりでいいので!だそうだ!俺もそう思う!」
「はい〜頑張りまーす」伸びやかな返事をした。
「お次は黄金坂くん!君のダンスには目を見張るものがある!その才能を信じて突き進め!あと歌は厚木くんに学びましょう!だそうだ!俺もそう思う!」「なるほど、分かりました!」千尋も頷く。
「四番目〜矢島くん!リーダーとしての心意気を感じました!皆を支えるのが得意なようですね。でもパフォーマンスでは皆を支えることよりも、我こそは!と競い合うことによってお互い高め合うことができるので競う気持ちで前に出ずっぱりになりましょう!だそうだ!俺もそう思う!」「はい!頑張りますっ!」要は胸に手を当てはっきりと答えた。
「次は厚木くん!歌の才能を大事に伸ばしていきましょう!歌についてあれこれ口出しはしません。そのかわりダンスは黄金坂くんに学びましょう!だそうだ!俺もそう思う!」「はい!ダンスも得意じゃないけど頑張ります!」拳を握り意気込んだ。
「続きまして桧山くん!全体のスキルが安定していてとてもグッド!欲を言えば君はこれ!と目を見張る特技があるとなおよし!ユニットでのポジションも大切ですからね、だそうだ!俺もそう思う!」「特技ですね、頑張ります!」メモをこまめにとりつつ頷く優月。
「お次、宮田くん!どのスキルも安定していてかつレベルが高い!さすがは島貫学院の生徒!皆に知識を共有してあげるのもよし、他者からさらに学び取るもよし、だそうだ!俺もそう思う!」「他者、ですか。分かりました」納得したように返事をした。
「最後!御影くん!オリジナリティがあってよろしい!誰にも真似できない自分自身が形成されています!でも上手い人から盗み取るとか、他者の影響を受けることは何も悪いことではないので、ユニットメンバーのことをよく知ってみるのもこの機会にいいかもしれません!だそうだ!俺もとってもそう思う!」「...はい」ボソッと返事をした。
「一気にここまで突っ走ったが大体こんな感じで社長はお前たちのことを見ている!ただヒゲ蓄えて偉そうにしてるだけの大人じゃないんだぞ!さて...」一旦話を切った翔。一息置いてまた続ける。
「頑張れ頑張れとは言ったが、ふわっとしたアドバイスだけでは何をすればいいのか分からんだろう。ここからは俺が考えた特別メニューをこなしてもらおう!紙にざざっと書いたからこれを見てくれ!」八枚の紙切れを見るとびっしりと練習メニューが書いてあった。それも一週間分。
「講師の先生にもお願いしてレッスンメニューを基本メニューから俺特製メニューに変えてもらった!新人時代にやってたメニューに似ている!ちょっと意味が分からないかもしれないがやってほしい!俺は次は百花繚乱のかわい子ちゃんたちにアドバイスしてくるから終わったらまた見にくるよ!それまでそのメニュー、サボらずこなすんだぞ!」そう言って翔は早々に部屋を出て行った。その瞬間、部屋の中を八人(陽昇除く)の「なんじゃこりゃ〜!!!」が埋め尽くした。
「いい、誠くん?」「いいよ、千尋くんこそ大丈夫?」二人は心配そうになりながらお互い確かめ合った。何をしているのかというと。
「よーい...ドン...」秀のやる気なさそうな掛け声で二人三脚を始めていた。
「うわわっ!!転ぶ転ぶ!」「ちょっとちょっと!そっちじゃないでしょ!!」二人はフラフラして、たまに転びながらゴールした。
「これを、あと3回だとよ」秀に言われてげんなりする二人だった。
「よーい!どーん!」一方こちらでは優月の掛け声と共に要と裕一が水中息止め対決をしていた。
「...」「...ぷはぁ!無理無理!」勝者は裕一。でも喜ぶというよりは、「で、何これ?アイドルのレッスン?」
そんな感じであちらこちらで二人や三人組で何やら怪しい、意味の分からないレッスン?をしていた。しばらくして翔が帰ってきた。
「元気にやってるか〜?...っておお...」翔が見ると意外にもハードだったのか、げんなりとへたり込んだ八人の姿があった。
「まぁ結構全部体力使うように設定してるからな〜、変なだけのレッスンじゃないんだぜー!」翔がげんなりした裕一の肩をポンポン叩く。
「んで、このレッスンの意味が分かる人〜!」と翔が挙手を要求すると秀が恐る恐る手を挙げた。
「おっ分かるか?島貫キッズ!いや、年齢的には俺より上だけども」
「分からないから手を挙げたんです、こんなレッスン、学校じゃ受けたことありませんよ」その答えに翔は顎に手を当て続けた。
「まぁ学校じゃ基本的なことしか教えないからな〜、実際芸能界に出てから学ぶことの方が多いぞ、あんまり学校で学んだ事ばかりアテにするな」と答えた。
「じゃあ特別にこのレッスンの意味を教えてやる!それはな、独りよがりを卒業する事だ!」
その答えに皆キョトンとする。
「まだ初心者ばかりの新人ユニットには酷な話だが、やっぱり始めたての頃は自分のことで精一杯だ。それは仕方ないんだが、いつまでも自分のスキルを上げようとか、誰よりも上手くなろうみたいな対抗心を燃やしてばかりじゃユニットという一つの集団として成長できないんだ。いいアイドルになりたいならいくらでも一人でスキルを磨け。でもな、この八人で成長していきたいと思うなら、相手のことを思いやりながら共に成長していく意識がないとダメなんだ。俺も最初は分からなかったがレッスンを重ねていくうちに合同レッスンの大切さを身に染みて感じた。だから俺は後続ユニットのお前たちに恥さらしはしてほしくないしお前らを期待しているからこそユニットで成長してほしいと感じているんだ」その答えにメンバーは徐々に納得していき頷いた。
「うん!それでよし!じゃあ早速続きのレッスン、と言いたいところだが、ちょっと個人面談を仕込みたいと思う。何人か気になるメンバーがいるからな。まずは御影くん!カモーン!」翔の後を陽昇がついて部屋を出て行った。うつむきながら歩く陽昇を見た。しかしすぐに前に向き直り歩みを進めた。




