第一話
これからは基本的に一人称視点で進める予定です。
顔に暖かい感触を感じて目を開くと、白い毛玉が視界いっぱいに広がっていた。
正体を確かめるべく顔から引き剥がすと、耳から尻尾の先まで真っ白な子狐であった。
『おや、目覚めましたか?』
突然声が聞こえ、周囲の気配を探るがこの辺りには己と子狐の気配しか無い。
警戒しているとまたあの声が聞こえてくる。
『此処です。私です』
子狐がてしてしと己の手を叩く。しかし何処かに何者かが潜んでいる故構ってやることができぬ。
暫く何時襲われても対処出来る様身構えていると、子狐が腕から抜け出した。
「これ、此処には何かが居る。危ないぞ」
そう言うと子狐が右前脚を挙げた。それと同時に声が聞こえる。
『だから私です!貴方の目の前の子狐です!』
ふむ、確かに声と子狐の行動は一致しているし、己でも気づけない程の隠蔽能力ならば声を発さずに襲えば良い話だ。だが話す狐など俄には信じられぬ。
「それは誠か?ならば一度回って鳴き声を上げて見せよ」
すると子狐は言った通り回ってこやん、と鳴き声を上げた。
『如何ですか?これで信じましたか?』
成程、誠の様だ。
「あぁ。しかし喋る狐とは面妖な」
『ちっちっち、これは喋っているのではありません。念話と言って、思念を直接雀様に送っているのです』
胸を張る様に背筋を伸ばして自慢げな子狐。
そこでふと、此奴の名が気になった。
「おい、そなた、名は何と云う?」
問うと子狐は暫し考える様な素振りをし、思い付いた様に答える。
『う〜ん、そうですね…………吟華 、吟華とお呼びください!』
吟華は己の名が気に入った様で、幾度もその名を呟いている。
暫くはしゃいでいた吟華だったが、漸く我に返って思い出したのであろう事を話し始める。
『では改めて、転生おめでとうございます、雀様。今の身体に違和感はありませんか?』
そう聞かれ、手を握ったり開いたりする。違和感は無く、心做しか前世よりも細く白い手が引っかかりも無く滑らかに動く。
「問題ない様だ。寧ろ前世よりよく動く」
『良かった。実はその身体、見た目を貴方様の前世のお姿に似せただけで全くの別物なんですよ』
ほう、身体まで作ってしまえるとはやはり女神様はとてつもない御方だ。
己の仕草でその思考を読んだのか吟華が頷きながら思念を送って来る。
『流石は女神様です。雀様の美少女具合を一切削ぐなう事無く半神としての身体を創りあげるのですから。因みにサービスとして胸を少々盛ったそうです』
なんと半神とは、とてつもない恩を受けた様だ。と、そこまで考えた所で先程の吟華の言葉に違和感を感じた。
その違和感の正体を探るべく胸に手をやると案の定とも言うべきか、柔らかな感触が出迎えた。
慌てて股間に手を伸ばすも、そこに慣れ親しんだモノの感触は無くなっていた。
「ぎ、吟華……己は男……だぞ……?」
そう、己は女になっていた。
確かに、前世ではよく女に間違えられたし、出会い頭に求婚された事もあったが、歴とした男である。少なくとも前はそうであった。
呆然としていると吟華が話かけて来る。
『そ、その……此方側の手違いがあったのは謝罪します。申し訳ありませんでした。……あ、そうです、女神様から言伝を預かってるんでした。もしかしたらその件について判るかもしれません』
そう言ってから虚空を見つめてから言伝の内容を己に伝える。
『では読み上げさせていただきますね。えーとなになに……『これを聞いているということは無事、転生する事ができたという事ですね。おめでとうございます。そして、謝罪したい事が一つ、貴方が女の子だと思って女の子の身体にしちゃいました。ごめんなさいね。でももう貴方に干渉する事はできません。なので頑張って慣れてくださいね。因みに貴方につけた子狐ちゃんは雌なので恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。──女神より』……との事です』
救いは無かった様だ。
膝と両手を地面に突き項垂れる己の肩に吟華が慰める様に前脚を置いた。
野生の狐は病原菌を持っている可能性がある為、触らないようにしましょう。吟華は特別なので大丈夫です。
話が変わりますが魔女兵器って皆様ご存知でしょうか?TS好きなら必見のゲームですので興味がお有りでしたらプレイしてみては如何でしょう?