ある日の雨の中で⑤ーサリアナ視点ー
時刻的にユリちゃんをログハウスに残すのは気が引けるけど、魔物避けに張っていた結界魔道具が壊された事や、警鐘音をほっとくわけにはいかない。
下手をすると秘密基地も壊されるし、大事な妹を殺されるなんて、私が許さないわ‼
私は自分の愛剣ルーナスを握り締めるとログハウスを出て、地面に着地する
後方から四人のレオルド、シクス、ブライアン、ジルクも各々の武器を持ち着地している
前方には熊形の魔物であるベルフォルトウォルグが5匹いる
単体での魔物ランクはE~D
群れになるとCランクまで上昇する
「┄えらくやっかいなのが来たよな、サリアナ」
レオルドが横に来るなり、獣耳をピクピク動かし、辺りを警戒しながら言われ
「本当だよな、俺等まだ、見習い騎士なのにってやつだな」
次にシクスが槍を構え、私の後方の敵を見据え
「なに言ってんだよシクス、口元が笑ってるくせに」
「うっせっての! ブライアンこそ┄同じだろうが┄」
「┄まあな┄」
シクスの隣りをブライアンがスピア系の武器を構えて、バカな会話をする
「何をしてるんですか┄敵の前で┄、まあ気分はわかりますけどね」
クスクスとマイペースに笑うジルクに、私達は無言でつっこむ
((((┄一番、楽しそうな顔している┄お前に言われたくない))))と
などのやり取りのあと
「┄グオォォォォ‼」
ベルフォルトウォルグが咆哮を上げる声に、私達は気持ちを切り換えて真剣モードにし、攻撃をしかける。
5匹をそれぞれに相手をするフォーメーションAを発動し動く
私の相手は他の4匹よりも少し大きいぐらいの熊に見えた。
しかし、よく観察すれば、レオルド達のベルフォルトウォルグ達は単体に動き相手をすることに戸惑いをみせ、私のそばにいるベルフォルトウォルグを司令塔にしていると推測できた。
このベルフォルトウォルグがリーダー各かも知れないわね?
愛剣ルーカスの握りを掴み、火属性を纏わせ、身体強化させるとスピードを上げて切り込む
左右や上下、下から上と連撃を繰り返し攻撃を仕掛ける
ベルフォルトウォルグは、私の攻撃を全方向に爪や腕で素早く動き防御されてしまうが、腹部辺りが、隙だらけだと気づき、刀身を突き立て、刺し込んだ。
肉の食い込みを感じ、力を強め、切り広げるべく動かそうとした
しかし、腹部に刺した剣が急に動かなくなった。
私は何が起きたのか? と敵の腹部を見れば、自己再生が始まり愛剣が飲み込まれる
ベルフォルトウォルグは苦痛の表情を浮かべるわけもなく、真逆に口角をつりあげると、次のときには、私は奴の爪に切りとばされてしまった。
服は裂け、肌は爪で切られ、臍から胸元までの深い傷を受け空を浮き
そして地面を転がるようにゴロゴロと回転して┄止まり┄血が染まり土の上には赤が広がり、口から血が滴り落ちていく
ゴホッ、ゴホッ
と咳き込み、全身に痛みが走り始めた
「サリアナ、くそ! いま┄助けるからな‼」
「なにしてる┄クソ┄邪魔だ‼」
「死ぬな、サリー‼」
「┄サリアナ‼」
近くで戦闘をする四人の声に
┄私は┄攻撃を受けて死にかけてんのかな?
と場違いな事を考えていた。
右手や左手を動かそうとするけれど動くことはない、身体が自分のものではないような┄┄変な気分ね
「グオォォォォ‼」
ギシッ、ギシッと土を踏みしめ┄私に近づいてくるベルフォルトウォルグを目線だけで見る
私の剣を半分ぐらい飲み込まれてるのに┄
なにこの顔┄人をバカにしているようでムカツクわね
身体は動かずとも精神面は強い私は、意地でも┄そのつらを叩きのめしてやりたくなり、力を込めようとすれば、酷い激痛が走るが、今の私には知ったことではない
起き上がり、膝をつくと口に血が集まり、私は地面に血を吐き捨て立ち上がる
「私は┄こんな所で死ぬわけには┄いかないのよ┄‼」
叫び声をあげ気合いで走り出し、スキルでスピードを上げると手に力を入れてベルフォルトウォルグの胸にある
私は空いた左手に火炎弾を発動させ
次に打ち込み┄止めを刺すつもりだったが
ガシッと身体を捕まれてしまう
「┄ぐっ、離せ‼」
はぁ、はぁと息が切れる、ヤバイ目が霞んできた。視界が歪んだ┄そのときだった
「┄┄姉様ーーー!!!」
聞き覚えのある声に、私は後方を見れば┄涙を流し走ってくる妹、ユリアナがいた。
「┄┄なに┄来てんのよ。じっと待機って言ったのに┄┄誰に似てんだか?」
ポツリと呟いたあと、何故かベルフォルトウォルグが私を離した
何? なんで手を離した┄の?
不可解な疑問が私に過り、ベルフォルトウォルグを見れば、腕が切り落とされていた。
ああ┄だからか┄
と納得しかかったが、それは違ったとすぐに思えた
何故ならば空中に水の円盤型が高速に動き、無数に出現し、妹の瞳の色は涙で潤みながらも怒っていた。
青い髪色の属性をそのまま『水』としているように、ユリアナの髪はユラユラと揺れ
可愛い妹なのに魔力を限界まで発動させる力に、私はビクッと身体が跳ねて
敵ではないのに┄少し怖い
と感じていた
そのあとはユリアナが青い雨のように水刃をベルフォルトウォルグだけを狙い切り刻み始める
そしてプツンと『私の大事な物を奪う奴らなんか┄しね‼』と言って倒れた
まるで魔力枯渇を起こしたように┄
◆◇◆◇
私やシクス、ブライアン、レオルドは何も出来ず┄ぼんやりと青い雨に打たれ苦笑をもらす
「妹に┄助けられちゃった┄うっ!┄」
妙に安心したら、急に身体が激痛を放ち顔を歪めていたら、レオルドが自分の服を脱ぎ肩にかけてくれた
次にシクスがハイポーションを渡してくれ飲むと身体の傷が治る
そして他の二人は顔をそらし、赤くなっていた。
「なんで二人とも┄顔が赤いのかしら? あれレオルドとシクスまで┄どうしたの?」
「「┄服を前で隠せ、アホ」」
シクスとレオルドに言われ┄前を見れば┄戦ったときに服が破けて肌が┄┄┄┄っ‼
私は┄冷静にそこまで思って┄すぐに顔を赤くなりながらも、レオルドの服で前のボタンをとめた。
「┄見たでしょ┄?」
「「「「┄┄みた┄」」」」
正直に話す四人に私はワナワナして怒りたくなったが、安息な休憩は終わっていなかった
ガサガサと周囲の物音が響く
「┄まだ┄いるみたいだね」
「┄一難去ってまた一難かよ!」
「ふざけてんな」
「いや┄待て┄この音は獣の音ではない┄人だ」
ジルクが冷静な判断で呟くと、音がした場所から兵士や冒険者の数人が出てきた。
そして私達は、この状況を話すようにと、大人達に連れていかされて
妹のユリアナは、家へと送られていくのだった