第1話 ある日の雨の中で①
夏場の明るい庭園の片隅に、私は一人で水魔法の『ウォータ』を使い、お花に水を円上に回すと自由に水を滴り散らしていると、虹色の橋が空いっぱいに架かり、とても綺麗な光景が広がった。
けれど次の瞬間┄私を叱りつけるような怒鳴り声がした。
「┄なにをしているユリアナ‼」
ビクッと身体が跳ねて、後方の屋敷同志を繋ぐ廊下に、家の主で私のお父様が腕組みをして立ち、青い髪色を長く伸ばし肩辺りまで結んで、仕事着を身に付けた姿で目を細めて見られていました。
「┄庭にお水をあげていたのです」
「┄ユリアナ、前にも言ったはずだ、お前はまだ未熟な5歳児だ。余計な魔力を使うな、いくら魔力が増幅し、安定な、ためといえど前みたいに倒れては、私が心配だと言ったはずだぞ」
「┄ごめんなさい」
お父様の言葉は正しい、私ことユリアナ・サンファリスは1週間前に倒れたのです
子供がよくかかる病気、魔力循環不定症という病だ。
小さい頃は未熟故に、魔力回路が不安定になり発熱や吐き気で倒れることがあるため
治療院や協会で予防のための薬を貰うのだけど、私は┄ちょうど5歳の誕生日の日に発症してしまい予防もくそもなかったのです。
それから1週間の間に私は生死の狭間を流離い目が覚めた瞬間、違和感を感じたのです。
私ともう1つ違う記憶。そう前世の自分の記憶を思い出し、転生という驚きと、ともに再びの熱に侵されたのでした。
次に目が覚めた私は私であるままに、ベッドに横になり手を見て、小さな手をグー、パーと開閉を繰り返し己れの身体を確認し、頭を抱え叫びたくなった。
なんじゃこれはーーー!!
と心の中で叫んでやりましたよ。ガッテム‼
今と昔の記憶が安定した私は前世の村沢あかねとユリアナ・サンファリスの記憶が融合し新しい生命体になったのです。
ラノベでいう転生者を私は実体験することになったのですよ。
ー回想終了ー
私がお父様に謝ると、つかつかと私に近づき抱き上げるなり片手に乗せて歩き出しました。
「あの┄お父様┄いったい何処に行くんです」
「私の仕事場だ」
「えっと、何故私も┄ですか?」
「ほっとくと、また魔法を使うから捕獲しておく、今日は私といなさい」
え? 何故ホワイ? イミワカリマセン!
この人はユリアナの父君でワイセイド・サンファリスと言い、侯爵家の爵位を持ち騎士団の隊長をしています。
とても優秀な実力者で双剣使いのワイセイドと通り名があるのです。
そんなお父様は外では厳しいけれど、内では娘や妻を溺愛している一面を持っていたりします。お父様は目付きが少々、悪く普段から睨んでいるような感じになるものの
結構なイケメンさんなので近くによると眼福だったりします。
私はそうですね、はっきり言ってお父様似で目付きが悪いです。つり上がってますよ
まるで悪役のようにね。
さて、ここで問題です。記憶持ちで転生で令嬢と言えばなんでしょう?
チッチッチ、時間切れです。
正解はバラバラバラ(太鼓を叩く音)
はい、ごきたいの乙女ゲー! 悪役令嬢でした。チッ
いけない、本音の舌打ちが、ゴホン
さあ乙女ゲームとは、何か説明しておきます。
現代(前世)社会ではゲーム会社により女性用向けに開発された、疑似恋愛を楽しむゲームを乙女ゲームというのです。
私は前世、村沢あかねと言う名前のときに『虹の花を僕達は願う』の乙女ゲームをやっていて、とても楽しく男性キャラ達とヒロインの恋愛は胸をキュンキュンさせてもらいました。
特に王太子ルートはヒロインの幸せが美しい虹の橋を歩くシーンに憧れをいだきました。
そして悪役令嬢は男性キャラルートにはかかすことは出来ない存在で
私のキャラは学園に入る頃には、親の溺愛のせいでワガママで高飛車な女性になり
ヒロインの恋愛を邪魔したり、殺そうとしたりと悪事を染めていくのですよ。
他にやることないのかね? と突っ込み入れたくなりましたよ。ゲームしてるくせに
そして最後は婚約者と王太子に断罪される破滅ルートが出来上がり、死か国外追放が決められるという結末が待っているのです。
嫌ですね~(このときの私は他人事でした)
ですがいま┄この状況になったのならば、死にたくないので、攻略対象者やヒロインなど、関わらないと心に決めている
「何を一人で、握り拳を作っているユリアナ」
「ほえ?」
急にお父様から声をかけられて思考の中から今の状況に戻される
いまだにお父様に抱え上げられたままの恥ずかしい状況に、私の現実逃避は無念に終わりをつげ、驚いてしまい変な返事を返すと、お父様はクスッと笑い私の頭を撫でた。
「部屋に着いたぞ、降りるか?」
と聞かれ私は頷くと下ろしてくれて、服の皺をのばしてくれます。
私はお礼をつげるとお父様は近くのソファーに座っていろと言われ
ソファーに座るなり一冊の絵本を渡された
「今日は、この前の絵本の続編だ。私が仕事に集中する間に読んでいるといい」
「はい、ありがとうお父様」
私がお父様から絵本を受けとると、お父様は仕事机の書類に集中し始めたのを見てから、絵本を開きます。
絵本のタイトルは『ピエルナの冒険2巻』で、物語はピエルナが誰からにも優しくて人に騙されやすいものの、意志は強く格好良い少年で。
1巻目は、ピエルナが困難な道に決意を決めてつき進む所で終わっていた。
2巻目は、どんな話しかと思い目を通し読み始めると、ピエルナが雨の降る森の中で一人の可愛い少女と出会い、少女の言葉に勇気をもらい前を進む目標を決める所で終わっていた。
夢中になってワクワクしながら、読み終わる頃には、いつも冒険に憧れてしまう
私も、あんな楽しくも自由な冒険をしてみたいなぁ~
ぎゅっと絵本を抱き締めながら、そう思うものの、空想と現実は違う
憧れるくらいは、自由だもの┄
そんな事を思っていたら、背筋をのばすお父様の声がして、私は労いの言葉をかけるとお父様は笑顔で礼を言われて、そして
「続きを、また買ってこよう」
と言ってくれた。