プロローグ
「おい!なんだよあれ!」
湊が食事中のパンダを見ていると、1人の客が空を見て、叫んだ。
湊も同じように見上げると、空の色とは少し異なる青い霧がこちらに向かってきていた。
他の客も気が付きはじめ、騒ぐ人も次第にふえている。
「ちょっと、ヤバくない?」
放心状態だった湊は、カップルと思わしき、女の言葉で我に返ったが····その時にはもう、霧は目と鼻の先だった。
湊は霧を吸ってはいけないと思い、なるべく息を止めるが、それも長くは続かない。
思わず息をすると、青い霧が身体の中に入っていく感覚を覚える。
そして────。
──熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
喉が焼けるような痛み。
その痛みは、身体の下へ下へといき全身へと伝わる。
湊は今までに経験したことのない痛みを体験して涙や鼻水などを垂らしながら蹲り、声にならない悲鳴をあげた。
暫くすると、痛みは引き意識もはっきりとしてきた。
だが、いつもとは違う違和感に気が付く。
見えている景色が普段より低い。
さらに、さっきまで感じていた服の感触がなくなっていた。
───自分自身になにか起きている。
嫌な予感がする湊。そして、それは的中する。
自分の隣にある、仕切りガラスが反射し、自分の姿が映る。
そこには、1匹の青い猿がいた。
それが自分だと気づくのに1分はかかった。
「は?」
非現実的な現象に1歩、後ずさる。
当然、ガラスに映る猿も後ずさる。
「嘘だろ····俺が···俺がぁあああああ!」
「うるせぇよ、ガキ」
湊が発狂すると、横から低いハスキーな声が聞こえてきた。
湊は、声がする方を見るとそこには、青い猿がいた。
自分と同じ姿の青い猿。湊は、自分だけに起きている現象では無いと分かると少し安心できた。
「安心してんじゃねぇよ、周りを良く見ろ」
周りを見渡すと、そこには····。
死体死体死体死体死体。
さっきまで自分の周りにいた客が、楽しそうに動物を見ていた家族連れが、カップルが、死体になって転がっていた。
「うぁあああああああああ」
「だから、うるせぇよ」
再び、男の声がした。
湊は今にも、精神が崩壊しそうだが、湊の隣にいる猿の方は平然としている。
「ここには、お前一人か。ほら、ぼさっとすんな。奴らに見つかる前に行くぞ。」
奴ら?
行くって何処に?
そんな疑問が頭に残るが、湊もこの場からすぐさま逃げる方が良いので頷く。
しかし、進もうとしたが男の方が進まない。
暫くすると!コツコツと数人の足音が聞こえてきた。
「···ちっ、奴らか。おい、お前。目瞑ってろよ」
「え?」
刹那、膨大な光が瞬時に湊の視力を奪う。
そしてほぼ同時に、無数の乾いた音が動物園に響くのであった。