第2章:異世界と旅立ち
突如、異世界転生を遂げた翔。
自殺で何もかも失ったはずだった....。
「異世界で人生をやり直せるのか....」
いや我に帰ろう。
────そうだ!!これは夢だ。こんなことはありえない。
翔は元の世界での生前、ライトノベルをとても愛読していた。異世界漂流物の小説はいくつも読んだことがある。
しかし、自分が漂流してしまうとは思ってもいないだろう。
「なぁ、おっちゃん」
「...ん? なんだい、“姉ちゃん”」
「は? 」
「へ? 」
驚いた。翔を女と意識する奴がいた....。口がД(こんなふうな)の形になる。
「い、いやいやいや。俺は男だけど.....」
「何ぬかしてんだよ“姉ちゃん”」
「いやいやいやいや」
「いやいやいやいや、姉ちゃん声が男より少し甲高いじゃねぇか」
「いやでも......」
翔は恐る恐る股間へと手を伸ばす。
─────ある。確信できる...
「俺は男だぁぁっぁっぁぁっぁぁ、良かったぁっっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ホイ、鏡。顔を見てみろ」
翔の叫びをスルーし、赤い縁の丸鏡を差し出す。
鏡を手に取り顔を映す。
「え、女ぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!!!!!!!???????」
男だと確信していた翔には、ショックというよりはありえない現実を突きつける。
今の翔の姿は、大きく見開いた深黒の瞳に後ろ髪が妙に長く、右耳より左耳に長く髪がかかっている。
服装は死んだ時と同じ学校のブレザー。
目を丸くして“例”のトカゲのおっちゃんを見る。
「魔法で何かしたの? 」
「いいや、魔法使ってないし。そもそも魔法はこの世界に存在しない」
トカゲは首を横に振る。
「魔術はあるけどな」
─────とりあえず他を見て歩こうか.....
「ありがとなおっちゃん。じゃぁな」
「おう」
「あと...........」
「俺は男だ。バーカ」
「・・・・・・」
一息をつく。
「さて、とりあえず宿を探すか!!!!」
俺の冒険はここから始まる────
「あ、お金持ってねぇや。てへっ♡」
「『てへっ♡』じゃねぇぇっぇぇぇぇぇっぇ!!!!?????」
翔の旅は長い。そして、大きな災いが迫っていることすら誰も気づいてはいない。