第1章:生き返りと異世界転生
─────ここはどこだろう。あぁそうか俺死んだんだったわ...。つまんねぇ人生だった...のか
何も見えない中、意識だけがあった。
─────死んだら意識もない、何もない『無』って聞いたことがあるな...。うん、確かに『無』だ。しかし、意識はあるのか
『おーい』
誰かを呼ぶ声。渋いおっさんな感じの声だった。
────こんなところに誰を呼んでるんだっつーの。でも俺しかいないな....
だけど足が動く。走る。走る。走る........
どこかその声のある場所に行こうとしているのか。意識とは真反対で走る。走る。走る.....
「俺を助けてくれ....」。そんな思いが心の奥底に抱えながら無我夢中で走る。
「「「「「「「「助けてくれぇぇぇぇっぇえぇっぇぇぇっぇぇぇぇぇ」」」」」」」
『無』の世界でその声が響きわたる。
人間が一人...いや意識が覚醒する───────
────────────意識が戻る。視界には目が痛くなるほど輝いている太陽。そしてトカゲの着ぐるみを着た
おっさん。ん?
「ふぇっ!?」
「だからぁ、大丈夫かい姉ちゃん」
「はぁ ?え、なんで俺.....」
「路地裏にゴミ捨てに行ったらお前さんが倒れててな。それで────」
沈黙だけが何が起きたかわからない状況をわかりやすく説明し、死んだはずの人間が生きているというありえない事に
頭が痛くなる。
「いやだって、俺は学校の屋上で死んだんだよ!? 生きてるわけねぇよ!?」
「んなアホなこと言ってんじゃねぇよ。学校何それ? 美味しいのぉ?」
ウザい。その一言しか出ない。
「それは置いといて、なんでおっさんトカゲなの?」
この状況から今に至るまでの一番の疑問を振った。
トカゲのおっさんは目を丸くした。
「トカゲって俺は最初からトカゲだぞ?」
慌てて路地裏から出た。地球の世界とは違ういかにもRPGにありそうな世界。
翔はその状況を悟り落ち着く。
「......異世界転生したの。俺.....」
翔は生き返ったわけではなかった。
原因不明の異世界転生と遺体のない元の世界の現場はそれで一致した。