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第三話 使えるモノは何でも使う

「は……?」

「てめぇ! ラットを!」


 ラットとかいう盗賊Aは、上半身と下半身が分断されて、目の前に転がった。

 いい気味だ。少しは俺の痛みがわかっただろう。


 次はこいつかな。

 盗賊B。さっき、俺の腕を切り落としてくれた奴だ。


「ふざけやがって!」


 仲間を殺された事に激昂し、俺に弓を構える。

 最初にやってくれたのはお前だったのか。


「じゃあな」

「――――」


 矢が放たれる前に懐に入り、そいつの腹を引き裂いて殺した後、ついでに腕を切り落とす。順番が逆だったかな。


 何でこんな速さで動けるのか理解できない。

 傷が治っていく理屈も理解できない。

 でも、さっきの盗賊Aの言い分からすると、多分聖剣のせいなんだろう。

 なるほど。一思いに死なせてもくれないのか。


 そして盗賊Cに目をやると、青い顔をしてへたり込んでいた。

 小便までもらしている。汚いなぁ。

 こいつが何をしたかちょっと覚えてないけど、ついでだから殺すか。


「ま、待て! やめてくれ! 俺は見てただけだ! 何もしてねぇ!」

「そうなの? でも。止めなかったよね?」

「ヒィ! 頼む、何でもするから、命だけは!」


 何もしてないらしいけど、それはそれでダメだよな。

 いじめられてる奴を、ただ見てただけの奴だって同罪だって言うし。


 あ、でも。

 殺しちゃ情報が手に入らないんだよな。

 盗賊なら色々知ってそう。


 何でもするって言ったっけ。

 何でもするって言うなら、何でもしてもらおう。


「お前、名前は?」

「カルバンです!」

「そっか、カルバン。じゃあせっかくだから、色々話してもらおうかな。

 俺は何にも知らないんだ。

 教えてくれるなら殺さないよ」

「はい! はい、喋ります! 喋りますから!」


 俺はカルバンの首元に剣先を当てたまま、質問を始めた。



---



 こいつらはシャルマーニのでかい盗賊団の一員らしい。

 シャルマーニは、ユーストフィア最大の国家だ。


 世界を代表して、魔王や魔族、魔物と戦うために、軍を配備し、物資を調達し、そして、教会に召喚された勇者の支援をした。


 遥の事だ。


 遥は国に任命された勇者として、

 仲間を集め、村や町を救い、

 感謝と信頼を引き受けながら、最終的に魔王を倒し、人々を救った。

 と、ここまでなら実に使い古されたRPGだったんだが。


 その後、シャルマーニの王命として勇者に指名手配が出された。

 何でも、祝賀パーティの晩に仲間を毒殺し、さらには王様にも剣を向けたとか。


 だがシャルマーニは必死の抵抗をし、

 からくも勇者の脅威を退ける。そして遥は逃亡。


 世界中に手配し、あいつの拘束を命じた。

 場合によっては生死を問わないと。

 その報奨金は百枚。聖剣だけでも七十枚。死んでいたら五十枚。


 ちなみにこの世界の金の単位は、銅貨一枚=100円で、

 銅貨十枚で銀貨一枚=1,000円、

 銀貨十枚で金貨一枚=10,000円である。

 単純明快で涙が出るな。


 つまり遥の賞金は1,000,000円。

 大層な事だが、世界を救った勇者にしては随分安い。


 そういうわけで、やはり俺が狙われたのは剣を持っていたからだと。

 クソみたいな世界だな。滅べばいい。


「で、その後の話は?」

「い、いえ、勇者が捕らえられたという情報は無く……」


 なるほど。

 多分、俺が遥に会ったあの場所がシャルマーニの城で、ブチ切れたあいつが文字通り全部洗い流したってところだろうが。

 まだその辺の情報は流れていないらしい。


「そっかぁ。じゃあ次なんだけど、君らのアジトに案内してくれない?」

「は、はい!」


 遥を探すにしても、何にしても。

 手が必要だ。金が必要だ。情報が必要だ。


 国単位で逃亡生活を送っているであろう遥を、俺一人で見つけ出そうとするのは無謀だろう。かといって、聖剣を持っている以上は隠し切れるものではないから、表立ってシャルマーニのような大きな都市を拠点にするのは難しそうだ。


 忌々しい。何でこんな無駄な苦労をしなければならない。


 仕方ない、こいつの盗賊団でも利用させてもらうか。

 協力してくれるなら戦力として役に立ってやらんでも無い。

 それなりの人数がいるだろうから、情報収集という面で、俺が一人で暗躍するより遥かに早いだろうしな。


 最悪脅せばどうとでもなる。

 このレベルの雑魚が何人集まったところで敵ではない。


 ふむ。少し希望が湧いてきたな。



---



 一撃必殺という言葉は好きだ。

 数分間にもわたる華麗な殺陣も好きだったが、圧倒的強者が敵を瞬殺するのは見てて爽快な気分になれる。だから時代劇はよく見ていた。どちらも派手な映像美の下に見れたからな。


 地べたに転がっている生首に、そんな事を思い出す。


「お、お頭が……」

「カルバン。俺の国には辞世の句ってもんがあるんだ。死ぬ前に考えてみなよ」

「ヒィィィィ!」


 カルバンに連れてこられた盗賊のアジト。

 頭領に話を通すからちょっと待ってくれと言うカルバン。

 大人しく待っていると、何処からか飛んできた矢が俺の頭蓋骨を貫き。


 そして、再生復活。

 脳天を吹き飛ばされても死なないらしい。

 俺はいつ人間をやめたのだろう。


 面倒になったので、聖剣で扉を破り、襲いかかってくるモブ盗賊を殺さない程度に痛めつけて、一番上の部屋へ。

 落とし穴や針山のトラップに引っ掛かりながらも無理矢理に突破する。


 そして、頭領らしき奴を惨殺して、

 今は俺とカルバンの二人だけだ。


「あれだけやって、騙されるとは思ってなかったなぁ。

 平和ボケした日本人の思考が憎い。

 でも仕方ないよね。もういい?」

「い、嫌だ! 嫌です! すいません、もうしませ――」


 首を飛ばして絶命させる。


 聖剣って凄いな。

 ただの大学生だった俺が、盗賊団相手に大立ち回り出来ちゃうんだ。

 全然俺の力じゃないって点が悲しいけど、便利だからいいか。


「さーてと……やっぱり結構金持ってる」


 最上階の部屋には、金銀財宝ザックザク。

 本当は交渉しようと思っていた。

 何だったら配下になったって別に良かったんだ。遥さえ見つけてくれたら。


 でもこうなっちゃったからには仕方ない。


 この盗賊団は俺が貰い受けよう。

 そのために雑魚を殺さないでおいたんだし。


 で、部屋の入り口を守っていた、そこそこ格が高そうな雑魚を叩き起こす。


「起きた?」

「あ、あんたは……」

「俺は佐々木 豊っていうんだ。

 この盗賊団は俺が貰ったからさ。

 頼みがあるんだけど、勇者を探してくれない?」


 盗賊家業はそのまま続けても良い。

 金になる。

 人身売買とかレイプとかは胸糞悪いからさすがに止めようかなぁ。

 ……まぁいいか。俺も殺人しちゃったし。


 と思いきや、話を聞いて見るとこいつらは強盗専門で、胸糞な悪行はやっていなかったらしい。

 場合によっては人殺しはしていたみたいだけど。


 都合がいい。


「多分もう、シャルマーニは滅んだと思うんだよね」

「え……!?」

「遥……勇者が滅ぼしたと思う。

 その辺の真偽も確かめて欲しいから、宜しく」


 そんな感じで二週間。


 予想通りシャルマーニは滅んでいた。

 厳密に言えば、王族貴族皆殺し、城も崩壊していたが、城下町は放置らしい。

 一般人に恨みはないってか? それとも面倒だったのか?


 わからないが、とにかく遥は依然として行方不明。


 王都陥落の報に、他国がこぞって支援を始めた。

 話に聞く限りは土地も多く、人も多い国だ。

 植民地化出来れば有益な資源になるだろうからな。


 今のところわかったのはそのぐらいだ。

 どうしたもんだろ。


 地図を広げて悩んでいると、誰かが俺の部屋をノックした。


「お頭。次の狙いですが」

「んー? 何処?」


 あの時叩き起こした格の高そうな盗賊の名前は、ガンラートと言った。


 長身で髭が似合うイケメン、でも左目がなく眼帯。俺が殺した頭領の右腕をやっていたらしく、確かに腕は立つ。ここ最近加入して、瞬く間にのし上がったとか。


 バラバラになってしまいそうだった盗賊団を纏め上げ、上手く操ってくれている。もはや俺の右腕でもある。


「ここから東に行ったところに、カルターニャという街があります。

 そこの貴族どもは高い税で私腹を肥やしていて、狙いどころかと」

「わかった。じゃあ行こうか」


 さて。この、いや、俺の盗賊団の狙いは貴族が中心である。

 または商人だ。何故なら金を持っているからだ。


 前頭領の頃、ガンラートが加入し直後は町村を襲って、民家から金品を奪っていたのだが、手間がかかる割には稼ぎが悪く、効率に欠けた。

 

 そこでガンラートが提案したのが、貴族や商人を襲うという事。

 奴らは非合法な手段で儲けた分も多々ある手前、泣き寝入りせざるを得ない事が多いのだとか。

 ……頭が切れる奴だ。実質的にこいつが頭領だったんだろうな。


 そう考えるとわからん事がある。


「ねぇガンラート。君は何で俺に従うの?」

「死にたくねぇんで」

「逃げればいいじゃん」

「お頭から逃げられるとは思えません」


 そんなもんか。

 他のモブ盗賊どもも、俺を見たらビクついて目を逸らすもんな。


 おかげでみんな従順だ。

 最初は何度か寝込みを襲われる事もあったが、その度に撃退していると、次第になくなっていった。一応、殺してはいない。殺しては。

 

 駒が減ったら不便だからな。



---



 数時間後。深夜である。

 俺は鎖帷子を着込み、いつでも聖剣を取り出せるように準備しながら、町を見渡した。


 そういうわけで辿り着いたカルターニャ。

 海に面し、食と観光と海運業で儲けた港町だ。

 有名な宗教の総本山でもあるらしい。


 密かに海の幸に期待していた部分もある。


 でもそれどころじゃない。

 何故なら、街が火の海になっていたからだ。

 仕方ないな。港町だからな。

 街が海に飲み込まれる事もあるだろう。


 そんなわけあるか。


「……勝手な真似した奴は?」

「い、いえ、そんなはずは。全員後に着いてきてますぜ」


 全部で十人ぐらい。

 戦力としては俺がいれば充分だから、少数で良いのだ。

 出発時との面子の確認をするが、確かに全員いる。


「どういう事だ?」

「さぁ……」


 ガンラートも首をかしげる。そりゃわかるはずがないよな。

 とにかく。乗りかかった船だ。


「生きている奴がいたら連れて来い。

 事情を聞きたいし、あとで金になるかもしれない」

「わかりました!」


 俺たちは何故か人命救助に駆け出した。


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