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白き刺客

読んでいただけるとありがたいです!

 椿は学園長室のドアを開けた。

「辰也君と優衣ちゃんは自宅に向かったのかい?」

「ええ。 それとちゃんと午後六時までには帰ってくる様にも言いましたよ」

「そうか……。 しかしやはり君とまでは言わないがせめてあの子達を同行させた方が良かったかな」

 椿は学園長の言葉に小さくため息をついた。

「相変わらず心配性ですね。 まあ少しは改善された方ですが」

 椿はそう言いながらソファーに座り、学園長は椿にコーヒーを差し出した。

「君達姉妹には僕は頭が上がらないのでね。 お節介が過ぎるのかも知れないね」

「私達に限らず生徒達に対してですよ」

 椿はコーヒーを口に運んだ。



「着いたな」

 辰也はそう言ってマンションの前で自転車を止めた。 駐輪場に向かい自転車を停め、自分達の部屋に向かった。

 懐から鍵を取りだし、中に入った。 特に出ていった時とほぼ変わらない状態であった。

 違う点を上げるなら窓が直っている事だろうか。 学園長が誰かを手配して直してくれたのだと辰也は解釈した。

「じゃあとりあえず服を持っていこう」

「分かった」

 辰也と優衣はそれぞれ自室に向かった。

 辰也はエナメルバッグに服を詰めていく。

(少し本も持っていくか)

 辰也は五冊程小説をバッグに入れ、優衣の部屋に向かった。

 ノックをしてドアを開けると優衣はクローゼットの前で四つん這いになって探し物をしている様だった。

「何を探しているんだ?」

「この辺に読んでる途中だった本があるはずなんだけど……」

 優衣はごそごそと物をかき分けて本を探している。 優衣の周りには教科書や絵の具が散乱している。

「お兄ちゃん知らない?」

「知らないよ」

 辰也は優衣の近くに筆が落ちている事に気がついた。

 辰也は筆を手に取ると優衣の近くにしゃがみ、優衣の太股も筆でなぞった。

「ひゃん!」

 優衣はビクンと体を震わせた。

「もう……お兄ちゃんも手伝ってよ!」

「ちなみにどんな本なんだ?」

 辰也はそんな事を聞きながら、優衣の太股に絵でも描くかの様に筆で優しくくすぐっていく。

「お兄ちゃん……! 筆でこちょこちょしたらだめ……!!」

 優衣は体をくねくねと動かしている。 その動きに合わせて優衣のスカートからはかわいいイチゴ柄のパンツが見えたり隠れたりしている。

「優衣早く探して」

 辰也は優衣の太股の内側を中心にくすぐっていく。 手で優しく撫でられる感覚とはまたひと味違うのか、優衣はくすぐったそうに身を捩らせている。

「お兄ちゃん……! じゃましたらだめ……!」

 優衣は太股を隠す様に正座で座った。

「お兄ちゃんのエッチ」

 優衣はちょっと怒る様に少し頬を膨らませてそう言った。

「筆が落ちてたから」

 辰也はそう言って筆で優衣の首筋を優しく撫でると優衣は体を震わせた。

「お兄ちゃんだめだってば!」

 優衣は自分の手で首筋を隠した。 少し怒ったのか頬を先程から膨らませている。

「ちなみに上の方に置いてある青い本は違うのか?」

「え?」

 優衣は立ち上がって辰也が言った青い本を手に取った。

「あ! これだ!」

「それじゃ戻るとするか」

 辰也は優衣に筆を渡すと自分の部屋に戻り、荷物を持った。

「また戻ってこれるのかな」

「許可を貰えば行けると思うけどな」

 辰也と優衣は鍵をかけ、自分達のマンションをあとにした。



「えっと……」

 辰也は自分のアナライズをビルの入口近くにあるパネルにかざした。

《嵩霧辰也。 適正ユーザーです》

 そう機械的音声が流れ、入口の扉が開いた。 辰也は優衣と自分の荷物を持って中に入った。

「一緒には入れないんだね」

 優衣はそう言いながらアナライズを辰也と同じ様にかざした。

《嵩霧優衣。 適正ユーザーです》

 優衣も同じ様に中に入り、辰也から荷物を受け取った。

「一旦部屋に戻るか」

 辰也と優衣はエレベーターに乗り、自分達の部屋に向かった。 鍵をあけて扉を開けた。 特に変わった様子は無い。

「疲れたよ~」

 優衣はベッドに倒れ込んだ。

「とりあえず服を着替えようかな」

 辰也はバッグから服を取りだして洗面所に向かった。 ドアを閉めてトイレを済ませて普段着に着替えた。

 辰也が洗面所から出てくると優衣は着替えている最中だった。

「お兄ちゃんのエッチ」

 優衣はそう言いながら特に恥ずかしがる様子は無く、普段着に着替えた。

「じゃあ椿さんの所に行くか。 一応帰ってきたっていう報告にさ」

「でもどこにいるか分かんないよ?」

「……確かに学園長室に居るとは限らないよな。 さっきの訓練室みたいな所にいるかも知れないし」

 辰也がそう呟いているとベルが鳴った。 辰也がドアを開けると前には椿が立っていた。

「おかえり二人とも。 服とかは取ってきた?」

「はい。 それより何で帰ってきたと分かったんですか?」

「下でアナライズを使って扉を開けたでしょう? 誰が扉を開けたか学園長室で確認が出来るのよ」

「なるほど……」

 辰也がそう呟くと優衣が後ろで声を上げた。

「どうした?」

「椿さんに貰ったケータイ……食堂に置いて来ちゃったかも……」

「あらら。 まあみんな同じものを持っているから欲しがる人はいないと思うけど。 食堂に取りに行った方が良いわね」

 椿がそう言うと優衣は頷いた。

「お兄ちゃん、取りにいこ」

「分かったよ」

「じゃあ私は学園長室に戻るわね。 今ちょっと忙しいから。

 携帯電話を見つけたらさっき行った訓練室に行って。 私も後で行くから」

 そう言って椿は上に向かい、辰也と優衣は食堂に向かった。



 辰也と優衣は先程座っていた席に向かうと、机の上に携帯電話が置いてあった。 誰かが分かりやすい様に机の上に置いてくれたのだろう。

「見つかって良かった。 心配したよ」

「次は忘れるなよ」

 辰也と優衣は訓練室に向かおうとした時に小さな女の子が食堂の人と何かを言い合っているのを見つけた。

「クレープ~」

「凛ちゃんでもお金持ってないなら駄目です」

「だってもうお金無いも~ん!」

 どうやら少しもめている様だ。 優衣は女の子の元に駆け寄った。

 女の子は優衣よりも背が低く、それに幼い感じだった。

(小学生か……? 随分と幼く見えるけど)

 辰也もそんな事を思いながら優衣の後を追った。

「どうしたの?」

 優衣が優しく話しかけると女の子はメニューを指差した。

「クレープ食べたい」

「じゃあ私が買ってあげる」

 そう言って優衣はお金をレジで立っている人に渡した。

「いいの!?」

 女の子は目を輝かせている。 優衣はクレープを受けとると女の子に渡した。

「ありがとうお姉ちゃん!」

「どういたしまして」

 優衣は微笑んで女の子の頭を撫でた。

「行くぞ優衣」

 辰也がそう言うと優衣は女の子に別れを告げ、辰也と共にエレベーターに乗ろうとした時に一人の男子生徒とぶつかった。

「あ! すまん! 大丈夫か!?」

 ぶつかった男子生徒は慌てて辰也に謝った。

「大丈夫だ。 こちらこそすまん」

 辰也が謝ると男子生徒は辰也と優衣の顔を交互に見た。

「あ、君ら新入生か。 確か辰也と優衣ちゃんだっけ?」

「あぁ。 君は?」

「俺は早川(はやかわ)(しゅん)。 君と同じ十七歳だ。 瞬で良いぜ」

 瞬はそう言って辰也に手を差し伸べた。

「あぁ。 よろしく」

 辰也は瞬と握手し、優衣は軽く頭を下げた。

「そう言えば凛って女の子見なかったか? 割りと小さい小学生の子なんだが」

「あ、なら今その辺でクレープ食べてるはずだぞ」

「そうか。 ありがとうな教えてくれて。 お礼と言うのはなんだが後でアナライズについてとか教えてやるよ」

「ちょうど今から訓練室に向かうところだ」

 辰也がそう言うと瞬は嬉しそうに笑った。

「なら俺も後で訓練室に行くよ。 また後でな」

 そう言って瞬は走り去って行った。 辰也と優衣は瞬に手を振るとエレベーターに乗った。

「クレープ買ってあげた女の子。 かわいい子だったね」

「かなり幼く見えたけど……。 あんな子も被害を受けたと思うと胸が痛いな」

 辰也はそう呟きエレベーターから降りた。 訓練室前の休憩場の様な所は少し混んでいた。

 エレベーターから降りてきた辰也と優衣に視線が集まり、生徒達がこちらに向かってくる。

「辰也君と優衣ちゃんだったよね? 今から腕試し?」

「え……まあまだアナライズをまともに使ってないから……」

「じゃあみんなで教えてあげようよ!」

 生徒達に引っ張られる様にして辰也と優衣は訓練室に入った。


 その様子を角でジュースを飲みながら見ていた男子生徒がいた。

「今日入学した奴か……」

 その男子生徒はにやりと笑うと辰也達が入った訓練室に向かった歩き出した。


「まずこの学園には序列があってね。 生徒達はポイントを取り合って上位を目指すんだ」

「上位になると良い部屋に泊まれるからね!」

 生徒達は口々に説明を続ける。 優衣は困った表情で辰也の手を握った。 辰也も少し戸惑っている。

「とりあえず俺には剣の使い方を教えてくれないか?

 椿さんにチップみたいなのを選んで貰ったんだけど」

「何を選んだのか聞いてないならロボに頼んだ方が早いね」

 一人の生徒がパネルに触れると辰也の目の前にロボットが現れた。

《失礼します》

 ロボットは優しく辰也の腕を掴み、アナライズに触れた。

《読み込み完了。 セットされている物は

 長剣(ブレード)。 マント。 シールド。 バウンド。 風斬(かざぎり)です》

「かざぎり?」

《はい。 長剣(ブレード)細剣(レイピア)の専用の物です。 オリジンを消費して剣を振り回した時に飛ぶ斬撃を放つ事が出来ます》

「へえ……」

 辰也がそう呟くとロボットは手を放した。 そしてロボットは優衣の前に移動した。

《失礼します》

 優衣の手を優しく握った。 辰也の時と同じ様にアナライズに触れる。

《読み込み完了。 セットされている物は

 (ケイン)。 マント。 イレイザー。 ゴリアス。 ミラージュです》

「お兄ちゃんも使ってたけど……マントって?」

《マントは使用者の身体能力を上昇させる事が可能です。 重ね合わせを可能です》

「重ね合わせ?」

 優衣が首をかしげるとロボットは優衣から手を放し、上を指差した。

《先程使われていなかったのならジャンプして貰えると違いが良く分かると思います。

 ちなみに重ね合わせと言うのは五つセット出来るチップの中で複数マントのチップを使うことです。

 武器のバリエーションが減少しますが身体能力が更にあがります》

「とりあえず飛んでみるか」

 辰也はアナライズに触れた。 しかし白い服に姿が変わらない。

《音声認識が必要です。 先程は椿様が設定したので起動しましたが……》

 ロボットがそう言ってやり方を教えようとした時に訓練室の扉が開いた。

 そこには一人の男子生徒が立っていた。

(見た目はあんまりよろしくないな)

 辰也は男子生徒にそんな印象を覚えた。 男子生徒は世に言う不良の様な格好をしていた。

「へえ……やっぱりかわいいじゃん」

 男子生徒はそう言って優衣の腕を掴んだ。

「ちょっと……やめてよ……!」

 優衣は手を振りほどくと辰也の後ろに隠れた。 辰也の前にも生徒達が立ち塞がった。

「あ? どけよ」

「随分と乱暴だな。 優衣に手を出すな」

「うるせえな。 お前彼氏かなにかか?」

 男子生徒はパネルの方に向かっていきパネルに触れた。

 ロボットは消え、変わりに少し訓練室の壁がぼんやりと光を放ち始めた。

剣士(ソルジャー)装備(エクエメント)を展開。 戦闘を開始する」

 男子生徒がそう呟くと男子生徒の服装が白いブレザーと白いズボンに変わっていく。 そして右手には長剣(ブレード)が姿を現した。

「その女寄越せ。 邪魔するなら潰す」

「ちょっと……! 二人はまだ入学したてなのよ!?」

「黙れ。 邪魔するなら潰すぞ」

 男子生徒に睨まれ、生徒は怯んだ。

「渡すわけ無いだろ」

 辰也はそう呟いてアナライズに触れた。

(俺も剣士(ソルジャー)なら同じことを言えば良いはずだ)

剣士(ソルジャー)装備(エクエメント)を展開。 戦闘を開始する!」

《指紋認証&音声認証クリア。 嵩霧辰也。 適正ユーザーです。 装備を転送します》

 アナライズから声が聞こえるのと同時に辰也の服装が変わっていく。 そして右手には長剣(ブレード)が現れた。

「鬱陶しいクソゴミが……!」

 男子生徒は辰也に襲い掛かった。

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