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白き学園

読んでいただけるとありがたいです。

「じゃあ今日はここに泊まって」

 男性の部屋を後にして、女性に案内されて辰也達は三階に下りた。

 そして今はある部屋の前にいる。

「二人部屋で良いかな?」

「あ、はい。 大丈夫です」

 女性が扉を開けるとそこはビジネスホテルの一室の様な部屋だった。

 ベッドが二つあり、部屋の角にテレビが置いてあった。

「じゃあまた明日迎えに来るわね」

「ありがとうございます。えっと……」

東条(とうじょう)椿(つばき)よ。 よろしくね。

 嵩霧辰也(かざぎりたつや)君。 嵩霧優衣(かざぎりゆい)ちゃん」

 辰也は頭を下げ、優衣も少しだけ頭を下げた。

 椿は辰也の耳元に口を近づけ、小さな声で

「いつもの事は知らないけれど……いつも以上に優しくしてあげて」

 と言った。

「分かりました」

 辰也がそう言うと椿は辰也に鍵を渡して部屋から出ていった。

「なあ優衣……」

 そう言いながら辰也が振り返ると優衣は辰也に抱きついた。

「優衣……?」

 優衣は黙って辰也に抱きつき、顔を胸元に押し付けている。

 辰也は少し移動し、テレビに近い方のベッドに腰を下ろした。

「優衣……」

 優衣は辰也の膝の上に乗り、辰也は優しく優衣の頭を撫でた。

「お兄ちゃんは……戦うの?」

「そのつもりだよ」

「何で!?」

 優衣は叫ぶように言った。

「死んじゃうかも……知れないじゃん……」

 優衣は涙目になりながら辰也を上目遣いで見つめた。

「じゃあ優衣はどうする?」

「どうするって……言われても……」

 優衣は落ち込む様に俯いた。

「別に優衣は戦闘員にならなくても良いんだぞ?」

「それは……そうだけど……」

「……俺の近くに居たい?」

 辰也がそう聞くと優衣は頬を赤らめた。

「だって……お兄ちゃん大好きだもん」

 優衣は辰也の服を握った。

「まあ明日どうするか椿さんに伝えな。 自分はこれからどうするのかを」

「うん。 分かった」

 優衣は辰也にゆっくりと抱きつき、そのまま辰也をベッドに押し倒した。

「お兄ちゃん……」

 優衣は辰也に自分の体を押し付ける様にして辰也に覆い被さった。

「ちょ……優衣! 胸当たってる!」

「え?」

 優衣は気づいていない様で更に体を押し付けてくる。

「お兄ちゃんあったかい……」

「変なこと言ってないでどいてくれ……!」

「やだ」

「胸が当たるから!」

 辰也がそう言うと優衣は自分の胸元を見た。

「照れ屋さんだなぁ」

 そう言って優衣は辰也の横に転がった。 優衣は辰也に寄り添うようにして辰也の腕を自分の胸に押し付けた。

「優衣……!」

「お兄ちゃんの近くに居たいの」

「……分かったよ」

 辰也はため息混じりにそう言うと、右手でテレビのリモコンを取り、テレビをつけた。

 ニュースでは最近と変わらず大量殺人の事をやっていたが辰也達は息を呑んだ。

 ニュースでやっているのは辰也達の学校が襲われたという話だった。

「優衣……やっぱりお風呂入ってくる」

 優衣は逃げる様にして浴室に入っていった。

「本当に殺られたのか……」

 辰也はそう呟いてテレビを見つめた。

「本日午後三時頃。 東京都にある私立高校が例の大量殺人犯に襲われました。

 目撃者はおらず、生存者も見つかっておりません。

 現在警察は遺体の身元の確認を急いでおり……」

 辰也はテレビの電源を消した。

(また目撃者無しか……)

 辰也はため息をつくともう一つのベッドに寝転んだ。

(そう言えば学校は比較的監視カメラは少ない施設なのかもな。 だから狙われやすいという可能性もある。

 それにしても正門とかには誰かが立っているはずだ。 なら犯人は正面突破で全員殺したのか……?

 流石に誰かが外と連絡を取れても可笑しくはないと思うが……)

 辰也がそんな事を考えている間に優衣が浴室から出てきた。

「……おい」

 辰也はタオルを体に巻いただけの格好の優衣に半分は驚き、もう半分は呆れた様な反応をした。

「だって着替えなんて持ってきてないもん……」

「着てきた服を着たら良いだろ」

「え~」

 優衣は不満げな声を漏らしながら浴室に戻っていった。

「やれやれ……」

 辰也はため息混じりに呟いた。


《この子を……幸せにしてやってくれ》


 不意に辰也はその言葉を思い出した。

(幸せに……か……)

 辰也は小さくため息をついた。

「お待たせ。 お兄ちゃん」

 優衣が浴室から制服を来て出てきたので、辰也も風呂に入る事にした。

 扉を開けると洗面所とトイレ。 その横にバスタブがある。

 辰也は服を脱ぎトイレの上に置き、カーテンを閉めた。

(そう言えばあの腕輪が犯行に使われるって……。 一体どうやって使うんだ?)

 辰也はレバーを捻った。 温かいシャワーを浴びながら辰也は考え事を続けた。

(まあ国家機密だから想像もつかない様な使い方をするのかもな)

 辰也は体を洗った後にシャワーを止め、壁にかかってあるタオルで体を拭いた。 そして制服を着て扉を開けると、優衣がテレビを見ていた。

「本当に……みんな死んじゃったのかな……」

 優衣は悲しそうにそう呟いた。 辰也は優しく優衣の頭を撫で、優衣とは違うベッドに寝転んだ。

「もう寝るの?」

「ああ。 優衣も早く寝た方が良いぞ」

「分かった。 おやすみお兄ちゃん」

 そう言って優衣はテレビを消し、部屋の電気も消した。

 辰也は目を閉じたがまたすぐに目を開けた。

(とは言ったものの寝れるわけ無いか……。

 学校で記憶が無くなったのが四時間目。 そして家で目覚めたのが夜の八時。

 大体七時間以上は寝たんだ。 すぐには寝付けないよな)

 辰也は小さくため息をついた。

「お兄ちゃん……」

 小さな声で呼ばれ、辰也が優衣の方を向くと優衣は制服を脱いでいる途中だった。

「何してるんだ……?」

「制服着てると上手く寝れなくて……」

 優衣は薄いシャツ一枚になると辰也のベッドに近づいた。

「一緒に寝たい……」

「わざわざ薄着になってから俺と寝るのか……」

 辰也はそうため息混じりに呟くとベッドの端に寄った。

「今日だけだぞ」

「うん!」

 優衣は嬉しそうに頷くと、辰也に抱きつくように横になった。

「くっつくなよ……」

 辰也の言葉に構うことなく優衣は辰也に体を押し付けている。

「お兄ちゃんあったかい……」

(聞いてないな……)

 お風呂上がりという事もあり、優衣の体は温かく、髪から香るシャンプーの甘く良い香りが辰也の鼻を刺激する。

 辰也は諦めて優衣の頭を優しく撫でると、優衣は嬉しそうに微笑んだ。

「おやすみ。 お兄ちゃん」

「おやすみ。 優衣」

 二人はゆっくりと目を閉じた。



 辰也はゆっくりと目を開けた。 カーテンの隙間から太陽の光が射し込んでいる。

「優衣はまだ寝てるか……」

 優衣は辰也に密着して気持ち良さそうに寝ており、優衣の小さな手は辰也の服をしっかりと握っている。

(甘えん坊だな……。 まあでも……)

 辰也は自分の腕を見た。しっかりと優衣の体を抱きしめている。

(なんだかんだで俺も優衣を抱き枕に使ってしまっていた訳だから文句は言えないな。

 この上ない抱き枕だから実際文句は無いけど)

 辰也は声を堪えて笑うと大きく伸びをした。 意外と熟睡出来ていたのか足を伸ばす感覚が心地よい。

(椿さんが迎えに来てくれるんだよな……)

 辰也はそんな事を思いながら優衣を起こさない様に手を伸ばしてテレビのリモコンを手に取った。

(あのニュースしかやってないだろうな……)

 辰也の思った通り、辰也達の学校が襲われたという話題ばかりだった。

(やれやれ……)

 辰也はテレビの電源を消すとリモコンを頭の上に置き、優衣の頭を優しく撫でた。

 優衣は辰也に肩辺りを枕にして、辰也に密着して寝ている。

「お……にい……ちゃん」

(何の夢を見ているんだか……)

 辰也は優しく微笑みながら優衣の頬をそっと撫でた。

 白く透き通る様に綺麗で、触り心地の良い事に辰也は少し驚きながらもある人の言葉を再び思い出した。

(幸せにしてみせますよ。 優也さん)

「ん……」

 辰也が優しく優衣の頬を撫でていると優衣はゆっくりと目を覚ました。

「おはよう。 優衣」

「おはようお兄ちゃん……」

 優衣は欠伸をした後に辰也と同じ様に大きく伸びをした。

 仰向けで伸びをするので大きな胸が余計に強調される。 同時にピンク色の下着が透けて見えた。

(相変わらず無防備だな……)

 辰也は小さくため息をついた。

「お兄ちゃん」

 優衣は辰也に密着すると嬉しそうに微笑んだ。

「どうした?」

「お兄ちゃんと一緒だと良く寝れるんだな~と思って。

 今日も一緒に寝よ」

「ダメだ。 昨日は特別だっただけ」

「む~」

 優衣は拗ねるように頬を膨らました。

「優衣寒くないのか? 随分と薄着だけど」

「お兄ちゃんがぎゅーってしてくれたら寒くないよ。 お兄ちゃんの体あったかいもん」

 優衣はそう言って体を押し付けてくる。 薄いシャツ一枚なのでいつもよりも優衣の胸の柔らかさが伝わってくる。

「優衣離れて」

「離れたら寒いからやだ」

 優衣はそう言って辰也に密着して離れようとしないどころか仰向けで寝ている辰也の上に乗ってきた。

「これでお兄ちゃん動けないでしょ?」

「動けるよ。 優衣は軽いから」

 辰也は難なく上体を起こした。 優衣はひっくり返りそうになったが慌てて辰也にしがみついた。

「そろそろ起きるぞ」

 辰也が上体を起こした事によって掛け布団が優衣の体から離れ、優衣の白くて綺麗な生足が露になっている。

「見とれちゃう?」

 優衣は微笑みながら太股辺りを辰也に見せつける様に密着したまま、お姫様だっこをされている様なポーズをとった。 太過ぎず細過ぎない優衣の生足。 パンツが見えそうで見えないように優衣はわざとらしく足を組み直したりしている。

「お前そのうち襲われるぞ」

 辰也はそう言って片手で優衣を抱きしめ、もう片方の手で優衣の太股の裏側を優しく指でなぞるように触った。

 太股から膝裏へ。 膝裏から太股へと優しく往復させる。

「きゃっ! くすぐったい!」

 優衣は足をくねくねと動かして辰也の攻撃から逃れようとするが辰也は執拗に優衣のすべすべの太股を撫で回している。 少しだけ爪を立ててみたり円を描くように触ったりと色々な触り方で優衣の太股をくすぐっていく。

「ダメ……! くすぐったい……!」

 優衣は辰也のくすぐり攻撃に耐えられず体をのけ反らせている。 しかし辰也が片方の手で優衣の抱きしめているのでそう簡単には逃げられない。

 優衣の薄いシャツは捲れ上がり、上とお揃いのピンク色のパンツが丸見えになっていた。

「優衣はどこが弱いかな」

 辰也はそう言いながら太股の外側をくすぐり、前側もくすぐり、そしてもう一度裏側を撫で回したりと優衣の弱点を探る様にして優衣の太股をくすぐっていく。

 そして辰也が優衣の太股の内側を撫で回すと優衣は体をくねくねと動かした。

「お兄ちゃん内側はダメ……!」

 優衣は身悶えしながら難とか声を絞り出す様にして言ったが辰也は気にする事無く優衣が太股の中で一番くすぐったい太股の内側をくすぐり続ける。

「お兄ちゃん……! もう止めて……!」

 優衣が体をくねくねと動かしながらそう言うと辰也は優衣の太股から手を離した。

 優衣は辰也に抱きしめられながら息をきらしている。

 優衣は微笑みながら辰也に抱きついた。

「お兄ちゃんのエッチ」

「くすぐっただけだろ」

 辰也は優衣を抱きしめる力を弱め、優衣の頭を優しく撫でた。

「椿さんが来る前に準備しないと」

 辰也がそう言った矢先にピンポンと音が鳴った。

「もう来ちゃったか」

 辰也は玄関に向かうと扉を開けた。 前には予想通り椿が立っていた。

「おはよう。 良く寝れた?」

 椿はそう言うと辰也の後ろにいる優衣の姿に気づいた。 優衣は先程くすぐられたので少し顔が赤く、息をきらしている。

「あら? 大人のお楽しみ中だった?」

「断じて違います」

 辰也が即答すると椿は笑いながら辰也に小さな箱を渡した。

「この学園の情報が詰まった携帯電話よ。 常に身につけて貰うわ」

「学園……?」

「そう。 ここはホワイト学園と呼ばれる場所よ。 昨日は説明しなかったけど」

「じゃあ他にも生徒が?」

「ええ。 今から挨拶して貰うわ。 これから臨時の集会を開いたからそこに向かうの。 準備してくれる?」

 椿にそう言われ、優衣は制服を着て、辰也は顔を洗って歯を磨いた。

「お兄ちゃん髪の毛お願い!」

「また?」

 辰也は仕方なくくしを手に取り優衣の髪の毛を整えていく。

 優衣はその間に歯を磨き、顔も洗った。

「じゃあ行きましょうか」

 椿がそう言うと辰也と優衣は部屋から出て、鍵をかけた。

(ここが学園だったとはな……)

 辰也は少し驚きながらも優衣と一緒に椿の後を追った。

昨日学年末考査が終わりました。



今回の話。実はもう少し先に進む予定だったのですが凄く長くなったので二話に分ける事にしました。


分けた片割れは予定では日曜日に更新致します。


追記誤字に気づいたので直しました。

中々ノーミスで投稿出来ない……

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