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白き訪問者

読んでいただけるとありがたいです。

「う……」

 辰也はゆっくりと目を開けた。

(ここは……?)

 辰也は周りを見た。 横では辰也の服を握って優衣が寝ていた。

(家……?)

 そこは見慣れた部屋だった。 帰ってきたら座るソファー。 優衣とご飯を食べるテーブル。 自分の家であることは間違いなかった。

「何で……家に……」

 辰也は記憶の糸を手繰り寄せる様に自分の身に何が起きたのかを思い出した。

(確か保健室に行って……。 優衣がいて……。 優衣と一緒にベッドに倒れて……。

 ……そこまでは覚えてる。 問題は何で家にいるのかという事だ)

 辰也は優衣をゆっくりと自分から離すとそのままソファーに寝かせた。 辰也は立ち上がろうとしたが足がふらつき、床に膝をついた。

(ふらふら するな……)

 辰也は壁にもたれ掛かる様にして自分の部屋に向かった。

 向かう途中にトイレや洗面所を覗いて見たが特に怪しい物は無い。 辰也は自分の部屋のドアを開けた。 ここも特に変わった様子は無い。

(仮に俺達が誰かにここに連れ去られたと考えると荒らされてると思ったんだけどな……)

 辰也はリビングに戻る途中に玄関の鍵が開いている事に気づいた。

 辰也は鍵を閉めてリビングに戻った。 先程は気づかなかったがテーブルの上には鍵が置いてあった。

「むにゃ……」

「優衣?」

 辰也がソファーの方を見ると、優衣が目を覚ましたところだった。

「お兄ちゃん……。 あれ? ここ家?」

 優衣は不思議そうに周りを見ている。

(優衣も覚えてないか)

 辰也はそう思ってカーペットの上に座り、テレビの電源を入れた。

 ここ最近は毎日の様に「例の事件」について放送している。

(そう言えば他の奴等は何か知ってるかもな)

 辰也はそう思ってSNSのアプリを開いた。

(あれ……? おかしいな)

 辰也は時計を見た。 時刻は夜八時を指している。

(この位の時間ならクラスの皆が明日の宿題とかについて話してるはずだけど……。

 しょうがない。 京介に直接電話してみるか)

 辰也は電話帳から京介の携帯電話に発信した。

 《プルルルルルル プルルルルルル プルルルルルル》

(……出ない? 風呂か?)

 辰也は電話を切った。 いつの間にか優衣は辰也の横でテレビを見ていた。

「お兄ちゃん。 何で優衣達はもう家にいるの?」

「俺も覚えないんだ。 どうやって家に来たんだっけ……?」

「優衣もお兄ちゃんに頭ナデナデされながら寝ちゃった事位しか覚えてないよ」

「そうか……」

「ねえお兄ちゃん」

 優衣はにやにやと笑いながら辰也の膝の上に乗った。

「もう一回ナデナデして欲しいなぁ……」

「今はそんな事してる場合じゃ無いだろ……」

 辰也はため息混じりそう言って優衣の頭を優しく撫でた。

「でもしてくれるなんて優しいなぁ」

 優衣は辰也に密着して幸せそうに言った。 辰也は優衣の頭を撫でながらテレビのチャンネルを変えた。

「正に犯人は悪魔でしょう!」

「ええ。 許す事は出来ませんね!」

 バラエティー番組で芸能人が力強く語っているのを見て辰也はため息をついた。

(捕まえる事が出来ない以上何を言っても空しいだけだろ。

 殺り方も建物内の人を皆殺しにする殺り方だから誰も通報出来ない。 しようとしてもやる前に殺されて監視カメラも破壊される。

 正直殺られる前に何とかしないと防ぐのは無理だ。 殺られた事を知った時には既に手遅れなんだから)

 辰也はそう思って自分に体を押し付けてくる優衣を離そうとした時、ある事が頭を過った。

「お兄ちゃん……?」

 優衣が呼び掛けも気にせずに辰也は思考を巡らせた。

(誰も殺られた事に気づかない。 そして犯人はどこを狙うか分からない)

 辰也は一気に怖くなり、携帯電話を手に取った。 優衣は不思議そうな顔で辰也の行動を至近距離で見ている。

「どうしたのお兄ちゃん?」

「優衣。 この時間ってまだ先生達学校にいるよな?」

「え? あ……多分。 全員はいないだろうけど……」

 辰也は修学旅行の時に登録した学校の電話番号に電話をかけた。

 《プルルルルルル プルルルルルル プルルルルルル》

「……出ない」

「じゃあ……先生達みんな帰っちゃったのかな?」

「いや……」

 辰也は自分の「最悪の仮説」が信憑性を帯びてきた事に恐怖を感じた。

(嘘だろ……!? まさか本当に……!?)

「優衣どいてくれ!」

「ふにゃっ!」

 辰也は強引に優衣を突き放すと玄関に向かった。

(何でだよ……!)

 辰也は靴を履いてドアノブに手をかけた。

「お兄ちゃん!? どこに行くの!?」

「学校だ」

「学校? 何で? 行くんだったら私も……」

 優衣は首をかしげた。辰也は話すべきか迷ったが優衣が何も知らないまま自分が一人で学校に行くのを認めないと思い、話すことにした。

「今ニュースでやってる事件。 どんなニュースかは優衣も知ってるよな」

「あの怖い連続大量殺人のニュースでしょ? 何か関係あるの?」

「その殺人鬼がもし俺達の学校に来たとしたら?」

「え……?」

 辰也は優衣の手を優しく握った。

「落ち着いて聞いてくれ。 現状確かな事は俺達は家にどうやって帰ってきたかを覚えていない。 もう一つは京介とクラスの皆。 そして学校に連絡がつかないという事だ」

 辰也がそう言うと優衣の顔は真っ青になった。

「え……? じゃあ……」

「あくまで可能性の話だ。 だから今から確かめに行ってくる。 優衣は家で……」

「嫌だ!」

 優衣は辰也の言葉を遮る様に叫んだ。 優衣は辰也の袖を引っ張った。

「優衣も一緒に行く」

「何言ってんだ。 今の話で危ない事は分かっただろう?」

「お兄ちゃんに一人で死なれるなんて嫌だ!」

 優衣がそう言うと辰也は言葉を失った。

(確かに俺が生きて戻れない可能性が無いわけじゃない。 犯人はもう学校にはいないと思う。 でもそれは俺の思い込みだっていう可能性もある)

「優衣……」

 辰也の袖を掴んだまま優衣は泣いていた。

「もう……一人になるのは……嫌だよ……」

 辰也は優衣のその一言である男の言葉を思い出した。


 《この子を……幸せにしてやってくれ》


「ごめん優衣。 俺が間違ってた」

 辰也はそう言って優衣を優しく抱きしめた。

「……お兄ちゃんのバカ」

 優衣はそう小さく呟いて辰也に抱きついた。

(確かに優衣を一人で置いて行くのも危険だ。 奴等は俺達を家まで連れてきた。 つまり俺達の家を知っている。

 俺達を人質にでもする気なのか……? それにしては随分と逃げやすいが……)

 辰也は優衣からゆっくりと離れると優衣と共にリビングに戻った。

(どうする……優衣から離れない方が良いのは確かだ。 でも殺人鬼がここに来ない可能性が無い訳じゃない)

 辰也は色々と考えながらソファーに座った。 優衣も横に座りテレビを見始めた。 テレビでは先程と同じ様に「例の事件」についてだった。

(本当に学校が襲われたなら早くてそろそろやるか?)

 辰也は恐怖と希望が入り交じった様な気持ちでテレビを見つめた。



「間違いないのか?」

「はい。 ここに金髪の女が入って行きました」

金倉英里奈(かなくらえりな)か……」

「恐らく。 しかし数時間前に出ていきました」

「しかし奴等のアジトか仲間がいる可能性は捨てきれない……か」

 そんな会話をしながら一人の男性と女性は立ち上がった。

 男性は見た目は二十代といったところで白のブレザーを見に纏っていた。 ズボンも白い物を穿いている。

 女性は白い高校の制服の様な服を着ており、膝位の丈の白いスカートを穿いていた。 手には魔法使いが使うような杖を持っている。

「行くか。 直ぐには殺すなよ」

「了解です」

 そう言って女性が杖を胸の前で構えると、目の前に手のひらサイズの白い球体が複数現れた。

「イレイザー」

 女性が呟くと白い球体は真っ直ぐにマンションの一室の窓に向かって行った。



「なっ……!?」

 突如リビングの窓ガラスが石でも投げられたかの様に割れた。

「きゃっ!」

 優衣は反射的に辰也にしがみついた。

(来やがったのか!?)

 辰也は立ち上がるとリビングの窓に対して自分を前にして、優衣を後ろに下げた。

「動かないで下さい」

 そう声が聞こえ、暗闇の中から一人の女性が現れた。

「あんたがこの殺人鬼か?」

 辰也はテレビを指差しながら言った。

「いいえ。 寧ろそいつを追ってる方よ。 貴方達こそ その殺人鬼の仲間じゃないの?」

「馬鹿か。 そんな訳無いだろ」

 辰也は優衣を体の後ろに隠す様にしてそう言った。

「なら勘違いだったかな?」

 その言葉と共に男性が女性の横に現れた。

「勘違い……?」

「我々がマークしていた女がここに入ったという目撃証言を得たものでね」

「……ただの推測だが。 そいつが俺達をここに拉致した犯人だ」

「拉致……?」

 男性は首をかしげた。

「ああ。 俺達二人は学校から家に帰ってきた記憶が無い。 そいつが俺達を家に連行したと考えても良いだろ」

「なるほどな。 つまり君達二人は何故かあいつに家まで連れ去られた訳だ」

 男性はそう言って納得した様な表情をして近づいてくる。

「学園長?」

「大丈夫だ。 彼らは敵では無いだろう。 それに運良く適合者の様だ」

 そう言って男性は辰也の目の前で足を止めた。 優衣は辰也の服の腰当たりを握って震えていた。

「優衣から離れろ」

「む。 その子は優衣と言うのかな?」

「離れろ」

 辰也が男性を睨みながらもう一度言うと男性は二歩後ろに下がった。

「窓の事やいきなりこんな事をしてすまなかった。 しかし君達があの殺人鬼の仲間である可能性があると勘違いしていた」

「俺達が仲間じゃないと何故断言出来る?」

「今は答えられない」

 男性はそう言ってゆっくりと辰也に手を差しのべた。

「来てくれれば答えよう」

 男性がそう言うと女性は携帯電話を取りだし通話を始めた。

「来る? どこに?」

「我々の元にだ」

「行けば何か得するのか?」

「少なくともここよりは君達の安全を保証出来る」

 その返答を聞いて辰也は一旦黙った。

(こいつらは殺人鬼の仲間じゃない。 そうだとしたらこいつらの言う通りにした方が良いか?)

 辰也が迷っていると優衣が小さな声で提案した

「お兄ちゃん。 ついて行こうよ」

「優衣? 本気か?」

「だって家にいても危ないんでしょ? だったらこの人達について行った方が……」

 優衣は辰也の袖を握りながらそう言った。

(確かに優衣の言う通りか……)

 辰也はそう考えて男性に手を伸ばし、男性の手を握った。

「ついていくよ。 貴方達に」

更新が遅くなってしまい申し訳ございません。


加えて二週間後に学年末テストがあるので二週間程更新が出来ないかもしれません……



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