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黒き斬撃

読んでいただけるとありがたいです。

「俺と一緒に来るか?」

 そう差し伸べられた手に掴まり、僕は白き暗殺者(シャイン)の一員となった。

 最初の測定で異常なまでの数値。 常人の4倍から6倍のオリジン量を持っていた。

 けれども僕は期待を裏切った。

 余りにも弱すぎたのだ。

 もちろん運動が苦手だったのも大きく影響している。 鈍臭く相手の攻撃は避けられないし、こちらの攻撃は簡単に避けられる。

 これならオリジンの才能があっても意味がない。 例えるなら相手は剣を持った大人で、僕は重たい銃を持った赤ん坊の様な者だった。

「あいつオリジンだけは凄いのにな」

「本当に勿体無いよな」

 口々に批判を浴び、たった1週間で僕の心は痛んでしまった。

 その時だった。 また手を差し伸べてくれたのは、同じ人だった。

「なぁ、ちょっと戦い方変えてみるのはどうだ?」

 僕は再びこの人の手を掴んだ。


 次の日から世界が変わった。 勝てるようになったのだ。 それも圧倒的に。

 彼の考えてくれた戦い方は簡単だった。

 僕の膨大なオリジン量を生かし、運動音痴をカバーするために空中へバウンドを使って飛ぶ。

 後は苦手な標準を合わせることも追尾弾(ミラージュ)に任せる。

 僕がやることは空中へ飛んで、相手をロックして弾を連続で放ち、狙撃を警戒するだけだった。

 下から剣士(ソルジャー)武人(ウォーリア)の攻撃が届く事はほぼ無いし、銃手(ガンナー)魔術士(ウィザード)の攻撃も圧倒的な弾数で無理矢理相殺する事も可能だった。

 その日から僕はずっと彼についている。 2回も手を差し伸べてくれた恩人に……少しでも恩返しが出来るように。



 斬撃が章平の体を斬り裂いた。

《ダメージ超過(オーバー)。 装備が消失します》

 章平の装備はアナライズの声の後に消えて、普通の服に戻ったところで章平は床に転がった。

「章平!!」

 辰也はすぐさま章平の元へ向かう。 装備が消えてしまった今、体は無防備な生身の状態である。 アナライズを使用している者の攻撃は全て致命傷となりうる。

 しかし黒き大剣使いが辰也の足を止める。 元々隙を見せた辰也を襲う為ではなく、章平と辰也の間に入るために移動したのだ。

「退けっ!」

 辰也は斬りかかるが、黒き大剣使いは辰也と真正面から退くことなく斬り合う。

 辰也は小さく舌打ちをした。 これが当然。 辰也とまともに斬り合う事など黒き大剣使いには何の造作も無いことなのだと実感する。

 しかし斬り合っている間にも、英里奈が次の攻撃態勢を整え、章平は床に横たわっていた。

(しまった……! 装備が……消えた!)

 英里奈は嬉しそうに微笑んだ。

「あらあら、ここで戦力を削げるなんて幸運(ラッキー)ね!」

 英里奈が放った通常弾(イレイザー)が章平に襲いかかった。

「章平!!」

 辰也は援護に向かうが、すぐに黒き大剣使いに阻まれてしまう。

(ヤバイ!!)

 辰也は何とか黒き大剣使いを振り切ろうとするがそんな簡単に行かせてくれる相手ではなかった。

「くっ!」

 章平は生身のまま何とか横へ飛んだ。 しかし避けきれるはずもなく、通常弾(イレイザー)が足を貫いた。

「うっ、ぐうぅ……」

 足から血が流れ、章平は苦痛に呻く。

「まだそんな力があったのね。まぁ無駄なんだけど」

 再び英里奈の周りに通常弾(イレイザー)が浮かび上がる。

「死ね」

 英里奈は杖を章平に向けた。

 しかし次の瞬間章平の前に何かが現れ、一瞬のうちに通常弾(イレイザー)が弾かれた。

 英里奈は一瞬驚きで固まったが、すぐに苛立った表情を見せた。

「あら、また貴方?」

 章平は思わず瞑ってしまった目をゆっくりと開けた。 するとそこに立っていたのは章平の恩人であった。

「瞬さん……!?」

「遅くなったな、章平」

 瞬はいつもの様に白い戦闘服に、身体強化の為のマントを身に纏っている。 手には剣の柄が握られ、その瞬の後から武も横に立った。

 武もいつもの様に身を白い鎧で纏っていた。

「武、黒き大剣使い(あいつ)は俺に任せろ。 お前は章平を守ってやってくれ」

「了解っす」

 武がそう答えると、瞬はすぐさま後ろの黒き大剣使いに斬りかかった。

 その動きに合わせる様に辰也は黒き大剣使いから距離を取る。

 大剣使いは瞬を一刀両断する様に大剣を水平に振り抜くが、瞬は身を低くして掻い潜り、黒き大剣使いを蹴り飛ばした。

「辰也!」

 瞬は辰也の手を引っ張り、自分の方へ引き寄せた。

「瞬! 優衣と未来が!」

「分かってる。 でもちょっと待ってくれ」

 瞬は黒き大剣使いを受け止めた黒服を睨みつけた。

(この嫌な感じ……まさか……)

「あら、どうしたの?浮かない顔だけど?」

 英里奈が挑発する様に言うと瞬は黙って睨みつける。

「もしかして黒服(あいつ)が気になる? 簡単よ、貴方が感じた通りの事を想像すれば良いわ」

 瞬は黙ってアナライズに指を乗せた。

《瞬君?》

《椿さん、着きました。 武も一緒です。 死傷者は無し。

 しかし2人捕まってます》

《捕まった!? 誰!?》

《優衣ちゃんと未来ちゃんです。

 相手は金倉英里奈と黒き大剣使い。 そして確証はありませんが、もう1人が恐らく真紅の(レッド)アナライズです》

 アナライズから椿の驚きが漏れる。

《そんな……》

《とりあえずは耐えます。 出来たら増援を》

《分かった! すぐに私が行く!》

 瞬はアナライズから指を離した。

「さて、お前らにはその2人を返して貰おうか」

「返すと思う? 大体私達はもう撤退する予定だったんだけど?」

「そんなほいほいと何回も逃すと思うのか?」

「あらあら、後ろにいる2人がどういうアナライズを使っているか分かっているでしょう?」

 英里奈はそう言って笑みを浮かべる。 瞬は小さく舌打ちをした。

(こちらの戦力は3人。 相手も3人。

 ただ問題はこっちは章平を庇いながらの戦いになるということと、相手の2人が真紅の(レッド)アナライズだという事。

 どうする……? 俺が真紅のアナライズ使い(あいつら)2人を相手するか?

 ……()れるか? レッド相手に……!)

「瞬」

 辰也が小さく呟いた。

「なんだ?」

「俺に黒き大剣使いとやらせてくれ。 無茶なのは分かってる」

「ダメだ。 まだお前じゃ勝てない」

「分かってる。 ただ俺は黒服の方が手が出せない。

 あいつの力は物を弾く様々な形に変化するシールド使いだ」

 瞬は辰也の情報を聞き、小さくため息をついた。

「了解。 ただ出来るだけ俺の近くにいろ。 危なかったらすぐ助ける」

 辰也が頷くと瞬は一瞬だけ武と目を合わせ、次の瞬間には2人に襲いかかった。

 辰也も後に続いて2人に向かっていく。 既に瞬は2人と斬り合っている。

風斬(かざぎり)!」

 辰也は走りながら斬撃を放ち、黒き大剣使いは大剣を振って相殺する。

 しかしその隙を突いて瞬が突きを繰り出した。

 黒き大剣使いは当然の様に回避するが、瞬は一瞬のうちに短剣(ソード)の形を変え、黒き大剣使いのフードを斬り裂いた。

(ちっ、浅い!)

 瞬は黒服の攻撃を受け、一旦距離を取る。

 しかし黒き大剣使いのフードが地面に落ちた。

「え……?」

 辰也の口から思わず声が漏れた。

「辰也……?」

 瞬は不思議そうに首を傾げた。 しかし辰也は表情には驚きの色がありありと浮かんでいる。

「なんで……お前が……」

 大剣を持った男の正体は辰也の親友・黒木京介だった。

4月から大学が始まり、中々更新する事が出来ませんでした。

申し訳ありません。

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