表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/42

白き裁定者

 章平は戦いながら違和感を感じていた。

(こんなに……やりやすい相手ではなかったはず……)

 違和感の原因は黒き大剣使いであった。

 黒き大剣使いは章平の追尾弾(ミラージュ)を防ぎながら、辰也と斬り合っている。

 辰也が強くなったとはいえ、まだ七人の白き暗殺者(じぶんたち)には遠く及ばない。

 その七人の白き暗殺者(じぶんたち)の中でもトップクラスである瞬が黒き暗殺者(シェイド)の幹部である金倉英里奈と互角に渡り合える状態……高速(セカンド)を超える超速(サード)ですら、黒き大剣使いには苦戦を強いられたのだ。

 当然真紅の(レッド)アナライズは通常のアナライズとは性能において天と地の差があるので、相手になるだけでも十分化け物と言えるのだが。

(本気を出さない理由でもあるんですかね……)

 章平は警戒を怠らないように自分に言い聞かせた。



風斬(かざぎり)

 辰也の放った斬撃が襲いかかるが、黒き大剣使いはいとも簡単に大剣で防いだ。

 章平の膨大な弾数の援護射撃があるので辰也は先程よりも随分とやりやすく感じていた。

 しかし辰也も章平と同じ事が気になっていた。

「どうした? 随分と大人しいな」

 その言葉に章平も反応した。

(辰也さんも気づいていましたか……)

 章平も黙って相手の返答に耳を傾ける。

 しかし黒き大剣使いは黙って剣を構えた。

「答える気は無いって事か?」

 辰也はそう言って剣を構えた。

(本気を出さない理由はなんだ……?

 周りを巻き込まないようにしている?いや、それじゃあ何故この場所を選んだって話になる。そしてそもそも黒き暗殺者(こいつら)市民への被害(そんなこと)は考えない。

 じゃあ時間稼ぎをしている? 何か目的があるのか……でも目的は未来のアナライズのはず。

 2人はもう逃がしたから時間稼ぎをする必要なんて無い。 寧ろ俺たちが時間稼ぎをしたいくらい。

 ならば……制限があるのか?)

 辰也は黒き大剣使いの攻撃をかいくぐりながら、決定的な隙を見せずに反撃を繰り返す。

 金倉英里奈も章平が無尽蔵に放ち続けている追尾弾(ミラージュ)によって随分と動きを制限されていた。

(はぁ……段々ムカついてきた)

 英里奈は心底そう思いながら章平の追尾弾(ミラージュ)を防ぎながら反撃する。

(大剣使い(あの子)が本気出せばパパッと終わるんだけど……まぁ仕方がないか。

 それにもう目的は達成してるから焦る必要もないんだけどね)

 英里奈はチラリと黒き大剣使いに目を向けた。

 黒き大剣使いは章平の追尾弾(ミラージュ)を防ぎながら、辰也と剣を交わしている。

(もう十分かな)

 英里奈は2階に飛び移ると、大きな声を出した

「さて、そろそろ帰りましょうか」

「なに……?」

 英里奈の一言に、辰也は首をかしげる。

「聞こえなかった? 帰るって言ったのよ」

「随分と簡単に帰るんですね」

 章平も辰也の横に立つと、英里奈に視線を向ける。

「だって目的は果たしたからね。 帰っても問題ないでしょう?」

「目的……? お前達の目的は未来のアナライズじゃないのか?」

「ええそうよ。 そして目的の物は回収した」

「なに……?」

「分からない? 貴方達と戦っている時に後ろから音が聞こえたでしょう?

 あの音で私は確信したわ。 彼女達は罠にかかったってね」

 英里奈はそう言って微笑むと後ろを指差した。

「優衣!? 未来!?」

 後ろに立っていたのは、両腕、両足を縛られ、口を塞がれて自由を奪われている優衣と未来だった。

 2人の隣には黒いコートに黒いフードを被った人が1人立っている。

「まさかもう既に捕まってるとは……!」

「返せ!!」

「辰也さん!」

 章平の制止も聞かずに辰也は飛び出した。 その時を待っていたと言わんばかりに黒き大剣使いと金倉英里奈は攻撃態勢に移行する。

「行かせない!」

 章平は上へ飛び上がり、空中から追尾弾(ミラージュ)を乱射する。

「あら、彼1人で大丈夫だと思ってるの?」

 英里奈は微笑んだ。

 辰也は黒服の人間に向かっていく。

風斬(かざぎり)!」

 辰也の放った斬撃が向かっていくが、黒服が手を前に出すと斬撃はいとも簡単に止められた。

(シールド!?)

 風斬は銃手(ガンナー)魔術士(ウィザード)が使う弾よりも威力が高く、シールドで防がれる事は少ない。

(簡単に止められた……?)

 辰也は再び距離を詰めながら風斬(かざぎり)を放つが結果は同じだった。

(だったらもっと距離を詰めて……!)

 そして辰也が更に距離を詰めようと足を踏み出した瞬間、辰也の体が後ろへ吹き飛んだ。

(なっ!?)

「辰也さん!?」

 辰也の体を吹き飛ばしたのは、辰也の胸の高さと膝の高さにある丸い物体だった。

(シールド!? なんでそんなもんで……!)

 辰也が困惑している間に黒服の周りにナイフ状のシールドが現れる。

 そのシールドがまるで魔術士(ウィザード)の弾の様に辰也に襲いかかる。

「くそっ!」

 辰也は黒服の攻撃を剣で防ぐが、1撃毎に大きく腕を後ろへ弾かれる。

(重い……! それほどスピードがある訳じゃないし、攻撃力が高い様にも見えない)

 辰也は相手のシールドが自分の体を吹き飛ばした事を思い出す。

(まさか、あいつのシールドは触れたものを弾くのか!?)

 遂に辰也の胸へ攻撃が届き、辰也は床を転がった。

「んんっ! んー!」

 辰也を助けようとして、優衣がもがくが装備が消えて縛られている状態では何も出来ることがない。

「辰也さん!!」

 章平の叫びが聞こえ、振り返ると黒き大剣使いが辰也に向かって来ていた。 手には当然振りかぶった身の丈程の大剣。

「挟み討ちかよ!」

 辰也は迎え撃とうと剣を構えるが、瞬時にその体勢は崩れさる。

(またシールド!?)

 次は肘と足をはねられ、辰也は床に倒れてしまう。

「辰也さん!」

「貴方の相手はわ・た・し!」

 英里奈が言葉と同時にイレイザーを身の周りに浮かばせる。

(くっ、回避を!)

 章平はいつも通り上へ飛んだ。

 飛んで……それで回避して終わりのはずだった。

「え……?」

 金倉英里奈が放った弾は「最初から分かっていた」かの様に飛び上がった章平に向かって放たれていた。

「ぐっ!」

 章平は何とか英里奈の攻撃を追尾弾(ミラージュ)で相殺した。

(あら、咄嗟に相殺するなんて流石ね。……でもね)

 章平は再び辰也の援護に向かおうと振り返った。

 その振り返った瞬間に章平の目の前にあったのは放たれた斬撃だった。

 放たれたばかりとかではなく、文字通り当たる直前。

 英里奈は冷たく上で今から斬撃を食らう少年を見つめる。

(貴方は避ける時に必ず上へ避ける。

 ただ単に癖なのか、あまり攻撃を避ける事が得意ではないのか。

 どちらにせよ貴方は上へ飛ぶ。 屋内では飛べる高さも限られてくる。 ならば後はタイミングを合わせるだけ)

 英里奈は笑みを浮かべた。

 黒き大剣使いの放った斬撃が章平の体を斬り裂いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ