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黒き遭遇

読んでいただけるとありがたいです。

「お前……は……」

 辰也は言葉を失った。 変わりに怒りが思考を支配する。

 クラスの皆を殺され、親友を殺された。

 殺した本人が、犯人が目の前に立っている。

 辰也は怒りのままに襲いかかろうとしたが、小さく息を吐いて長剣(ブレード)を握りしめる。

「あら? 結構冷静なのね」

 英里奈は意外そうに呟いた。

 辰也は隙を見せないようにしながら優衣に小さな声で語りかける。

「優衣、学園長に連絡を取って援軍を呼んでくれ。

 もちろん未来を連れて逃げながらだ」

「お兄ちゃんは……?」

 そう問いかけてくる優衣はとても不安そうだった。

 学校が襲われた日に辰也が真相を確かめに行こうとしたときに、優衣が辰也を止めたときと同じ表情だった。

「大丈夫だ、民間人と優衣たちに注意が行かない程度に戦いながら瞬達を待つ」

「お兄ちゃん……」

 優衣は泣きそうな顔で辰也の服を握ってくる。

 辰也は優衣の手を握って優しく微笑んだ。

「必ず後から会えるから。 だから優衣は未来を頼む」

「……わかった」

 そう言うと優衣は出口に向かって未来と共に走り出した。

「あら、相談が終わるまで待ってたのにどこ行くのかしら?」

 英里奈の周りに白い弾が浮かび上がり、全てが優衣に向かって放たれる。

 辰也はバウンドを使って優衣と英里奈の間に移動し、放たれた通常弾(イレイザー)を全て長剣(ブレード)で防いだ。

 しかし次の瞬間には黒き大剣使いが斬りかかってきた。

 クラスメイト達を1人残らず切り捨てた大剣を目の前に体が固くなるが、辰也は大剣をくぐり抜けて相手の足を斬りつける。

 黒き大剣使いは休むことなく斬りかかってくるが、辰也は長剣(ブレード)で受けるのでは無く、受け流す様にしながら回避する。

 章平から聞いた話が本当なのであれば長剣(ブレード)で大剣とまともにやりあえば長剣(ブレード)が折れる可能性がある。

(また新しく作り直せば良いけど……その分オリジンが消費されるのは避けたい)

 辰也は無理せずに回避に徹底する。 周りから英里奈からの攻撃が放たれるが、辰也は極力隙を見せないようにしながら回避した。

(目の前に自分の日常を全て破壊した人間がいるってのに随分と冷静ね)

 英里奈も思わずそう思ってしまうほど、辰也は回避に徹底している。

 わざとらしく黒き大剣使いと自分が隙を見せても一切斬り込んでくる気配がない。

「用があるのはさっき逃げてった女の子なんだけどね」

「未来の……真紅の(レッド)アナライズの事か?」

「っ!?」

 辰也の口から飛び出すとは思ってもいなかった単語に英里奈は驚きを隠せなかった。

 その反応を見て辰也は確信する。

「まだ手にした経緯は聞いてないが……あのアナライズは俺達が使っているアナライズとは性能が段違いなんだろう?」

 そう言って辰也は黒き大剣使いを指さした。

「そいつが使ってるアナライズの様に、大剣(専用)の武器を使う。

 つまりお前らは未来からあのアナライズを奪いに来た。

 違うか?」

「……良く頭が回る子ね」

「考えることは割りと好きでね。 今回の様に自分の考えが当たると嬉しかったり、満足感が得られるもんだ」

「あぁそう。 ちなみにさっきの質問の答えは正解(イエス)よ。

 だから貴方と遊んでいる場合じゃないって訳よ」

「だったら俺を倒してから行けよ。 優衣と未来には手は出させない」

 辰也はそう言って剣を構える。 しかし英里奈は微笑んだ。まるでその必要は無いとでも言うように。

 次の瞬間に辰也の背後から何かが崩れる音が響いた。

 誰かが戦っているのは明白である。

(優衣……!?まさかまだ敵が居たのか?)

 背後から聞こえた音に辰也は優衣の安否が気になってしまう。

「あら、やっと焦った表情を見せてくれたわね」

「別に……焦ってなんかいねえよ」

「そう? そのわりにはさっきより余裕がないみたいだけど」

「余裕がないのはそっちだ。 直に俺の仲間が来るぞ」

「ふふっ、それは私達も同じよ」

 そう言って余裕そうに杖を構える。 その動きに呼応するように黒き大剣使いも剣を構えた。

 再び突っ込んで来た大剣使いの剣を回避し、英里奈の攻撃を防ぐ。

(さっきから感じてたが…………黒き大剣使い(こいつ)……どこかで会ったか……?)

 フードを深く被り、顔の前には黒子が着けるような布があって顔を隠している。

 しかし雰囲気が辰也にそう感じさせた。

(クラスの皆や京介を殺した大量殺人鬼が知り合いか……。 考えたくもないな)

 辰也は黒き大剣使いの詮索は止め、再び回避に専念した。




「瞬君!」

 椿に叫ぶように呼ばれ、瞬は振り返った。 後ろから駆けてくる椿は随分と取り乱している。

 ただ事ではないと瞬は確信する。 隣にいる武も同様だ。

「辰也君達が黒き暗殺者(シェイド)達と鉢合わせたって!」

 瞬は即座に階段の方へ走り出した。 すぐ後を武も追う。

「瞬君! 場所は貴方達があいつと会ったショッピングモールよ!」

「了解!!」

 瞬は階段への扉を勢い良く開けた。 扉としてはもっと丁寧に開けてもらいたいものである。

剣士(ソルジャー)装備(エクエメント)を展開! 戦闘を開始する!」

 瞬の服装が変わっていき、瞬は階段と階段の間に向かって飛び降りた。 階段と階段の間は狭いが飛び降りれば一番下まで真っ逆さまである。

 すぐ後から武も変身を終えて飛び込んでくる。 邪魔になると考えたのか鎧は着けていない。

(死ぬなよ……! 辰也……!)

 瞬は祈りながら落下して行った。




風斬(かざぎり)

 辰也が長剣(ブレード)を振り抜くと斬撃が英里奈に襲いかかる。

 英里奈は身を低くして斬撃を回避すると、すぐさまイレイザーで反撃する。

 辰也は大剣使いの攻撃を回避しつつ、英里奈の攻撃をシールドと長剣(ブレード)を使って防ぎ、少し2人と距離を取る。

 先程から同じ様な攻防が続いていた。

(全く踏み込んでこない……。 本当に時間稼ぎに徹底するつもり?)

 英里奈は苛立ちながら心の中で呟いた。

 辰也が攻撃をほとんど仕掛けてこないので殺られることはないものの、その分辰也にも決定的な隙が生まれない。

(まぁやりにくい理由はそれだけじゃないけどさ……)

 英里奈はチラリと黒き大剣使いに目を向けた。

 大剣使いはじっと動かずに、大剣を構えている。

(時間をかけている場合じゃない……。 ここは私1人でさっさと片付けた方が……)

 そう思った次の瞬間に、大剣使いと英里奈に向かって白い弾がまるで雨の様に降り注いだ。

「はぁ!?」

 英里奈は思わず苛立ちが口に出た。

「辰也さん!」

 そう言いながら辰也の隣に男子が降り立った。

「章平!」

「びっくりしましたよ。 僕がさっきまでいた所に黒き暗殺者(シェイド)が出てくるなんて」

「その言い方だと瞬達とは一緒じゃないのか?」

「えぇ、残念ながら。 でも僕でも時間稼ぎ程度なら出来ますので」

「分かった。 あとこいつらの狙いは未来だ。 既に優衣と2人で逃げてもらってる」

「分かりました、詳しいことは後で訊きます!」

 章平の周りに白い弾が浮かび上がる。 弾の数は英里奈の倍と言ったところである。

追尾弾(ミラージュ)!」

 白い弾が再び2人に襲いかかり、英里奈はシールドで防ぎ、大剣使いは大剣で防ぎながらこちらに向かってきた。

 辰也は章平の前に立ち、黒き大剣使いの攻撃を受け流す。

「バウンド」

 章平の足の下に白い円が現れ、章平は上へ跳び上がった。

 そして再びミラージュを放ち、大剣使いを後退させる。

風斬(かざぎり)

 辰也は長剣(ブレード)を振り回し、英里奈と大剣使いに斬撃の乱舞をおみまいする。

「あんの弾バカが!」

 英里奈はイレイザーを放つが章平のミラージュによって全て相殺されてしまう。

(あの弾数……追尾弾(ミラージュ)を2つ使ってるわね……!

 それにこんだけ乱射するってどんなオリジン量してんのよ!?)




《瞬君!? 聞こえる!?》

「はい、聞こえますよ」

 アナライズを通して椿の声が聞こえてくる。

「もうちょっとかかりますよ!」

《分かった。 いま章平君が着いたみたい!》

「了解です。 俺達も全速力で向かいます」

 そう言って瞬はアナライズの通信を切った。

「大丈夫っすかね? 章平の奴……」

「簡単には殺られねえよ。

 あいつは暗殺者(アサシン)ランキング5位

白き裁定者(スカイジャッチメント)」だからな」

「そうっすけど……」

 武も決して信じていない訳ではない。 しかし不安は拭いきれない。

 瞬もそれは重々承知していた。

(2人とも無事でいてくれ……!)

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