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黒き因縁

 辰也は未来が話してくれた事を全て優衣に話した。

「じゃあ……みくりんが夜中うなされてたのって……」

「そのトラウマだろうな。

 それに今回はもう訊くのは止めたけど……まだ未来の紅いアナライズについては何も分かってない」

「紅い……アナライズ……」

 優衣はベッドの上ですやすや眠っている未来の手首を見た。

 その手首には紅いアナライズが着いている。

「また今度訊くよ。 今日はもう疲れただろ?」

「うん。 また明日、優衣からも訊いてみるね」

「あんまり無理強いしたらダメだぞ?」

「分かってるよ、お兄ちゃん」

 この日はこれ以上未来に負担をかけないために、深く追求はしなかった。




「何か大会でもあるのか?」

 辰也は瞬にそう訊ねた。

 翌日、学園から支給された携帯電話にメールが入った。

 メールには1週間後の日にちと、参加希望者用の項目を埋める欄があった。

 しかし辰也はその1週間後に開催されるものに参加したことがない。なので朝御飯を食べがてら瞬に訊ねたのである。

「あぁ、学園内の生徒全員でな」

「全員?」

「そうだ。 一応希望者って話だけどほぼ皆エントリーすると思うぜ」

「へぇ……賞品でも出るのか?」

「勿論。 だから皆熱くなるんだろ?」

 瞬は楽しそうに笑った。

「どういった形式の大会なんだ?」

「ランキングの下の生徒から始める、言うならサバイバルだな」

「サバイバル……?」

「勝ち残った生徒達が自分達よりランキング上位の生徒達と戦って、勝ち残った生徒達が更に上位と戦うって寸法だ」

 辰也は納得したように頷いたが、同時にあることに気づいた。

「じゃあ瞬が出てくるのはかなり後じゃないのか?」

「ご名答だな。 辰也の言う通り「七人の白き暗殺者(おれたち)」は最後に出てくるぜ」

「典型的なラスボスだな……」

「まぁそもそも辰也がそこまで勝ち残れるかどうかだけどな」

「意地でも残ってるやるさ」

 辰也は笑いながら言うと、瞬も笑いながら立ち上がった。

「じゃあな、辰也。 大会で戦えるのを楽しみにしてるぜ?」

「俺も楽しみにしとくよ」

 そう言って、辰也は瞬と別れて部屋に戻った。




「お兄さん、外いこうよ」

「買い物か?」

 未来がベッドで寝転んだまま提案した。

「でもこの辺で1番大きいショッピングモールは今入れないんだよね?」

 優衣の言う通り、黒き暗殺者(シェイド)に襲われたショッピングモールはまだ閉鎖されていた。 例え再開店されても客が集まるかは微妙だろう。

「じゃあ違うところ行こ?」

「別に良いけど……先に外出許可を貰わないとな」

 辰也は携帯電話を取り出して、申請書を出した。

「ゆいゆい、どこかオススメの所ある?」

「うーん……行こうと思えばいっぱいあるけど……」

 優衣は未来の横に寝転がって呟いた。

「どーこーなーのー」

 未来は寝返りをうって優衣に抱きついた。

「わっ、みくりん?」

「えへへ、ゆいゆい抱っこして?」

 未来はそう言って優衣に体を押し付けた。

「やんっ、みくりんちょっとくすぐったい!」

 2人は笑いながらベッドの上でくっついている。

 辰也はそんな2人を見つめる……なんて事はせず、未来の手首に着いている紅いアナライズを見つめた。

(瞬達すらも凌ぐ紅きアナライズの力か……)

「お兄さん? どうしたの?」

「あ、いや、何でもない」

 未来に話しかけられて、辰也は我に返った。

「お兄ちゃんも混ざりたいの?」

「あ、そうなの? えへへ、お兄さんのエッチ」

「勝手に変な扱いするなってば」

 2人に突っ込みを入れ、その後講義を受けているうちに外出許可が出た。



「2人とも迷子になるなよ?」

「大丈夫だよ、お兄さん」

 来たのは大きなショッピングモール。 先日襲われた場所よりは小さいものの、十分な大きさである。

「そんなこと言ってみくりんが1番迷子になりそう……」

「そ、そんなことないもん!」

 未来はそう言って頬を膨らました。 しかし確かに先程から落ち着きがない。 どうやら久しぶりに来てテンションが上がっている様だ。

「どこ行く? お兄ちゃん」

「2人が行きたい店で良いよ」

「じゃあ服見に行きたい!」

 そう言うと未来は辰也の右手を引っ張りながら走り出した。

「ちょっ、未来走るなって!」

 未来に連れられて目的の店の前にたどり着いた。 辰也にはたどり着くまでに多くの人の話し声が聞こえてきた。

 先日のショッピングモールの話や最近は黒き暗殺者(シェイド)の行動が起こっていない話。 また優衣と未来がかわいいだの、2人の間に挟まれている男は誰だの、羨ましがられる声まで聞こえた。

(確かに2人ともかわいいもんな)

 2人は店内に入って試着をして鏡を見たり、サイズを確認したりしている。

「とってもかわいい彼女さんですね!」

「え?」

 いきなり店員に話しかけられ、辰也は少し驚いた。

「かわいい服着てみて下さいね」

 店員は辰也の後ろにいる女の子にそう言って立ち去った。 もっとも辰也は店員がその子に話しかけるまで後ろに女の子が居るなど気づかなかった。 確かに2人で来たように見えてしまう位、2人の距離は近かった。

(いきなり恋人扱いされたら気まずいって……)

 辰也はそっと女の子から離れたが、ピタリと足を止めた。

「ティア……?」

「ん?」

 女の子は振り返った。 肩まで伸ばした金色の髪に白い肌。 瞳は青色で、幼い顔立ちの女の子。 身長は辰也の肩くらいである。

「あれ……?」

 女の子は無表情のまま首をかしげた。

「ティア……じゃないのか?」

「もしかして……タツヤ?」

「あぁ! やっぱりティアか!」

 辰也は笑いながらそう言った。

「随分と久しぶりね……もう会えないと思ってたけど」

 女の子は無表情のままそう言った。

「優衣も一緒なんだ。 呼んでくるよ」

 辰也が優衣と未来を呼んでくると、優衣はすっかりハイテンションで女の子と手を繋いでいる。 ただし未来は面識が無いので辰也の隣に立っている。

「お兄さん、誰なの?」

 未来が背伸びをして、小声で辰也に訊ねた。

「俺達が小さいときによく遊んだ子だよ。 かなり前にヨーロッパの方に帰ったんだが……また会えるとは思わなかった」

「じゃあゆいゆいにとっても友達なんだね……」

「未来もすぐ仲良くなれるさ」

 辰也は優しく未来の頭を撫でた。

「ティア、今はどこに住んでるんだ? それとシャロも日本に来てるのか?」

「うん、2人で来たのよ。 家は……えっと……ここからは遠いわ」

「そうなの? でもこれからは会えるね!」

 優衣が嬉しそうに言うと、ティアは頷いた。

「うん、会おうと思えば」

 ティアは落ち着いてそう言った。

「ティア、一緒に買い物しよ?」

「ごめんね、ユイ。 そろそろ帰らないと」

「あ、そうなんだ……」

 優衣はがっくりと肩を落とす。 最後に優衣がティアと連絡先を交換し、ティアは帰っていった。

「何と言うか……ティアは相変わらず無表情だったね」

「ははっ、確かに」

 辰也は笑いながらそう言った。




 時間をかけて2人の服を選んだ後、辰也達は1階に降りて帰るため出口に向かった。 その瞬間辰也は体が凍りついた。

 出口に1人の女性が立っていた。 辰也のよく知った女性が立っていたのだ。

「金倉……英里奈……」

「嘘……でしょ……?」

 優衣も驚愕の声を漏らす。 しかし2人以上に動揺していたのは未来だった。

「未来!?」

 右に立っていた未来の呼吸が荒くなる。 顔色もみるみる間に悪くなっていく。

「あら、偶然にも全員知った顔ね」

 金倉英里奈はゆっくりとこちらに近づいてくる。 既に手には杖が握られている。

(人目を気にしてる場合じゃない!!)

剣士(ソルジャー)装備(エクエメント)を展開! 戦闘を開始する!」

 辰也の服装が変わり始め、手には長剣(ブレード)が現れる。 隣で優衣も変身を終えた。

 周りの客が騒ぎ始めるが、辰也は大きな声で呼び掛けた。

「こいつは例の大量殺人犯だ! 全員避難しろ!」

 辰也は叫んだが客は逃げようとしない。 呑気に写真を撮っている者もいる。

(そう簡単に信じてくれないか……!)

「あらあら、貴方が折角忠告してくれたのにね」

 すると金倉英里奈の周りに白い弾が浮かび上がった。

 次の瞬間1番近くにいた者の頭が貫かれた。 頭を失った人体は力なく床に崩れ落ちた。

 次の瞬間パニックが巻き起こった。 全員が我先にと逃げていく。

「優衣、未来を連れて逃げろ」

「お兄ちゃんはどうするの!?」

「逃げながら戦う。 瞬達が助けに来てくれるのを待つ」

「わ、分かった……無理しないでね!」

 優衣はそう言って未来と手を繋ぐと金倉英里奈とは逆方向に走り出そうとしたが、すぐに足を止めた。

「優衣? 早く逃げ……」

 辰也はそこで言葉を失った。 辰也達の後ろから近づいてきたのは……黒いフードを被った、身の丈程の大剣を持った者だった。

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