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白き部屋替え

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「お兄さん!ゆいゆい!凄かった!」

 エレベーターに乗って学園長室に向かっている最中に未来はピョンピョン跳び跳ねながら言った。

 かなり興奮しているのか未来は超ハイテンションである。

 アナライズを使った戦闘を見せるのは危険かと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

「未来、喜んでくれるのは嬉しいけどエレベーター内で跳び跳ねないでくれ」

「あ、ごめんなさい……。でも本当に凄かったよ!

 ゆいゆいも白いので全員倒しちゃうし、お兄さんもスパスパ~って全部斬っちゃうし!」

「えへへ、みくりん上機嫌だね」

「うん!あ、着いたよ。 お兄さん」

 未来の言う通り、エレベーターは学園長室のある部屋に着いた。 扉が開き、学園長室が見えたと思ったら、そこには1人の女の子が立っていた。

 髪は綺麗な黒髪で、服は優衣達が戦うときに身に纏う制服と同じ。 かわいいと言うよりは綺麗という表現が合う。

 優衣と未来よりは歳上だが、椿や美歌よりは幼く見える。

(椿さん……に似てる気が)

 辰也と同じ事を感じたのか、横で優衣も不思議そうな顔をしている。

「こんな所で何をしているんですか?」

 いきなり用件を聞かれ、少し戸惑ったが、別に嘘をつく必要はない。

「学園長に呼ばれたからだけど……」

「学園長に……? 本当ですか?」

 疑っているらしく、女の子はすぐには信じてくれない。

「ほ、ほんとだもん」

 意外と人見知りをするのか未来は辰也の袖を握って、辰也の体に少し隠れながらそう言った。

「3人ともですか?」

「えっと……俺とこの子は学園長に呼ばれて、この子は椿さんに呼ばれたんだ」

 自分と優衣を指さし、次に未来を指さしで説明すると、女の子は少し表情を歪めた。

 明らかに機嫌が悪くなった。 何か気分を損ねてしまったのかと辰也は黙って携帯電話を取り出した。

「証拠はこれだ」

 辰也が学園長から送られてきたメールを女の子に見せると、女の子は小さく頭を下げた。

「疑ってしまい、申し訳ありません」

「あ、気にしなくていいよ」

 辰也がそう言うと、もう一度女の子は頭を下げ、エレベーターの方に向かっていった。

「ちょっと怖かった……」

 そう言って抱きついてくる未来の頭を優しく撫でながら、優衣に視線を移す。

「椿さんに……似てなかったか?」

「うん……似てた」

「姉妹だったりするのかな」

 疑問を残したまま、辰也達は学園長室に向かった。

 扉をノックし、中から返事があった後に扉を開ける。

 いつも通り奥の椅子に学園長が座り、椿は横でお茶を淹れていた。

「辰也君、優衣ちゃん。 昇格(ランク)戦後だというのにすまないね」

「いえ、それでお話とは?」

「辰也君達に良い話が合ってね。 あ、座って座って」

 学園長に言われ、辰也達はソファーに座った。 椿からは紅茶が渡される。

「生徒達の部屋がランキングによって分かれているのは知ってるかな?」

「はい、それは聞いています。 ランキングが上になればなるほど豪華になると」

 それを聞いて学園長は笑いながら、辰也達の正面に座った。

「豪華と言うほどではないよ。 でも辰也君の言う通り、ランキングが上がれば部屋が広くなったりする。 でも基本は2人部屋だからね」

 それを聞くと未来は心配そうな顔をして、辰也の手を握った。辰也と優衣から離れるのは嫌らしい。

 それを察したのか、学園長も「基本的には、だからね」とフォローを入れた。

「それで部屋を入れ替える時の条件なんだけど、その条件がある一定のランキングを2週間保つことなんだ。

 例えば現在300位から200位までの部屋にいるとしよう。 その子はその週の昇格(ランク)戦で100位以内になった。 次の週のランク戦ではほとんど変わらなかった。

 けれども3週目で150位になってしまった。

 けれどその子は100位以内は2週間保つことは出来なかったけど、200位から100位は2週間保つことが出来てるよね。 だから200位から100位までの部屋に移動できる」

「ちょっとなら……落ちても大丈夫なの?」

 未来がそう質問すると、学園長が頷いた。

「決められた範囲内ならね」

 学園長がそう答えた後、辰也は首をかしげた。

「でも俺達来てから今日がまだ2週目の昇格(ランク)戦なんですけど……だったら俺達は1番最初の順位をキープ出来たって話になるから部屋は関係ないんじゃ……」

「その通りだね、そこで良い話が……」

 学園長は机に戻ってパソコンを手に取ると、辰也達に画面を見せた。 画面には部屋の間取り図が表示されている。

「昨日1人の生徒が退学するって言ってきてね。 もう1人の生徒も1人部屋で良いって言ったから部屋が余ってるんだ。 どうかな?」

「退学って……」

「3日前から報道されてるニュースの影響みたいだね。 政治家すらも狙われたってことで怖じ気づいたって本人が言ってたよ」

「そんなことも……あるんですね……」

「僕には君達に戦いを強要する権利は無いよ。 だから止めれなかった。 いや、止める権利がないんだ」

 学園長は悲しそうにそう呟いた。 辰也は少し間を置いて、話を再開した。

「この部屋はランキング的にはどの位置なんですか?」

「ランキング200位から100位の部屋だね。 辰也君と優衣ちゃんは本来ならこのまま行って1週間後に住めるであろう部屋だよ」

「なんか……反発とかないんですか?」

「一応部屋入れ替えなりそうな子達にはアンケートを取ったんだけど、大半が1人部屋だからあんまり興味がないみたいだよ」

 学園長はそう言って間取り図を拡大させた。

「辰也君達が今いる部屋と比べると、部屋は広くなって、お風呂も広くなるね。 それにトイレとお風呂が一緒の部屋じゃなくなるね」

 辰也は2人に視線を移した。 未来も優衣もすっかり乗り気なのか、いまいち落ち着きがない。

「じゃあ……お言葉に甘えて」

「オッケー。 じゃあ辰也君、優衣ちゃん、未来ちゃん。 お引っ越しだ」

 椿から鍵を渡され、辰也達は部屋に戻った。

「広いかな!? 広いかな!?」

「未来、落ち着けってば」

 辰也ははしゃぐ未来に笑って言いながら荷物を纏める。 と言っても服と入浴後に使うタオル位なのですぐ終わり、優衣もすぐに荷物を纏めた。

 3人はエレベーターで1つ上の階に上がり、鍵をもらった部屋の前に移動した。

 廊下に人はおらずあまり騒がしい声は聞こえない。

 ドアを開けるとそこには見知った風景が広がっていた。

 窓と机、テレビとベッド。 しかし違う点が1つ。

「広いな……」

 今まで泊まっていた部屋よりも5割増しと言ったところだろうか。 ベッドも広くなっている。

「お兄ちゃん! お風呂も広いよ!」

 浴室に向かうと優衣が浴室の扉を開けて手招きをしている。 中を覗くと一般家庭と同じ様な浴室だった。 石鹸等は買い替えたのか、全て新品の状態である。

(まぁこれでバスタブの中で体を洗う必要はなくなる訳だな)

「これでお兄ちゃんと一緒に入っても狭くないよね?」

「いや入らないから」

「お兄ちゃん却下するのが早いよ!」

「却下するだろ」

「早すぎるよ!」

 優衣は辰也の体に後ろから抱きついた。

「ちょっ、優衣!」

 背中に柔らかい感触が伝わってドキドキしてしまう。

「一緒に入ろ?」

「なんでそんなに一緒に入りたがる!?」

「理由なんて……ないもん」

 優衣は辰也の正面に回り込むと、再び辰也の体に抱きついた。 次はお腹の上の方に柔らかい感触が伝わる。

「お兄さん……? あ! 2人でイチャイチャしてる!」

「み、未来!?」

「未来も混ぜて!」

「ちょ、ちょっとストップ!」

 辰也の制止を無視して未来は辰也の背中に抱きついた。 優衣程の胸の柔らかさはないものの、2人の体温と甘い香りに頭が回らなくなる。

「2人とも離れてくれ……」

「お兄ちゃんが一緒にお風呂に入ってくれるならいいよ?」

「え、ゆいゆいだけずるい……未来も一緒に入りたい!」

「いや、入らないからな?」

 辰也は冷静に突っ込みを入れ、優衣の頭を優しく撫でた。

「お兄ちゃん……?」

「優衣、なんでそんなに一緒に入りたいんだ?」

「だって……最近一緒に入れてないもん」

 優衣は頬を赤く染めながらそう答えた。

「一緒に入ってた頃って……あったか?」

「…………ないよ」

「じゃあその昔みたいに一緒に入ろう的なノリは止めてくれ……」

 辰也がため息混じりに呟くと、優衣は更に密着して上目遣いでこちらを見つめてくる。

「お兄ちゃんは……優衣と一緒に入りたくないの?」

「えっ……それは……」

 今自分に抱きついている優衣。 この角度からはよく見えないが、寝るときにいつも見せつけられている白くて綺麗なふともも。 そして今押しつけられているとても中学生とは思えない豊満なバスト。 こんなわがままボディの優衣が裸になって一緒のバスタブに入る。

(だめだ!ダメだ!駄目だ!だめだ!ダメだ!駄目だ!)

 これ以上想像すると理性が吹き飛ぶ。 辰也は煩悩を追い払おうと後ろを向いた。

「お兄さん?」

 未来がこちらを見つめて首をかしげている。

 今自分に後ろから抱きついている未来。 優衣と同じかそれ以上にそそられる綺麗なふともも。 まだまだ発展途上だが、確かな柔らかさを感じさせる胸。 そして寝るときにいつも無防備過ぎる格好で見せつけられているあどけないボディライン。 そんな未来が裸になって一緒のバスタブに入る。

(落ち着け……大丈夫だ……無心になるんだ……)

 辰也は自分に言い聞かせる。 呪文かお経が分からないほどに心の中で詠唱する。

「お兄ちゃん?」

「お兄さん? どうしたの?」

 2人は不思議そうに首をかしげている。

「ふ、2人ともご飯食べに行こう」

「お兄ちゃん、先に一緒にお風呂に入るか答えを聞かせて!」

「お兄さん! 未来とも一緒に入ろ?」

 前後からのかわいい女の子のおねだりに辰也の心拍数は上昇する。

「お兄ちゃん……おねがい」

「未来からも……おねがい」

 2人とも辰也の体を抱きしめ、上目遣いで見つめて甘えるような声でおねだりしてくる。

「…………分かったよ」

 辰也は小さく呟いた。



「椿お姉ちゃん!」

 凛は勢いよく椿に抱きついた。

「いたっ! り、凛ちゃん……」

「椿お姉ちゃ~ん」

 凛はぎゅっと椿の体を抱きしめ、胸に顔を埋めた。

 ここは凛と美歌の部屋。 今日は1番上の階は少しうるさくなるようなので、椿は避難してきたのである。

「ちょっと椿、凛返してよ」

「え~、どうしよっかな」

「ちょっと! 本当に返してよ」

 美歌は後ろから凛を抱きしめると、椿から引き剥がそうと凛の体を引っ張った。

「わっ!」

 ほとんど無抵抗だった凛は椿から引き剥がされ、美歌に後ろから抱きしめられる。

「お姉ちゃん引っ張らないでよ……」

「だって凛とられたら嫌だし」

 そう言って凛を膝の上に乗せて凛の体を回して、次は凛を正面から抱きしめる。

「やっぱり凛は正面から抱きしめないとね♪」

「なんでそんなスムーズに抱きしめる体勢を変えれるのかしら」

「それは特訓の成果よ?」

「貴女努力する方向間違ってない?」

 椿はため息混じりに呟き、手を伸ばして凛の頭を優しく撫でた。

「お姉ちゃん……」

「あれ、眠くなっちゃった?」

 凛はうとうとしながら頷いた。

「じゃあもうお風呂入って寝よっか。 椿、ゆっくりしてて」

「うん、ありがとう」

 椿はもうすでにお風呂には入ったので、椿はソファーに寝転がった。



「本当に……入るのか?」

「お兄ちゃんがいいよって言ったもん」

「お兄さん早く~」

「分かった……入ろう」

 辰也は浴室の扉を開けた。 バスタブにはお湯が張ってあり、入浴剤を入れたのでお湯は乳白色になっている。

 そしてそのバスタブの中には優衣と未来が浸かっている。

 辰也は腰にタオルを巻いているが、優衣と未来はタオル等を体に巻いている様にはとても見えない。

 辰也は軽く湯を浴びた後にゆっくりとバスタブに浸かった。

「お兄ちゃ~ん」

 すぐに優衣が足の上に乗って、体を密着させてきた。

「ちょ、優衣!? くっつくのは……!」

「だめ……?」

 優衣は上目遣いで辰也を見つめる。 お風呂に浸かっているせいか、優衣の顔は少し赤い。

「…………ちょっとだけだぞ」

「えへへ」

 強く断れずに辰也がそう言うと、優衣は嬉しそうに笑うと更に体を密着させてくる。

 初めて直に押しつけられる優衣の大きな胸。 いつもとは違う感覚と間にあるものが何もないということを自覚すると頭の中が真っ白になっていく。

「ゆいゆいばっかりずるい……」

 優衣の後ろでは未来が頬を膨らませていた。 端に辰也、真ん中に優衣、そしてその隣に未来がいるので今は優衣が壁になって未来は辰也に抱きつくことが出来ない。

(逆に2人に同時に抱きつかれたら……いや、考えるのは止めよう。 無心だ……何も考えるな……)

 辰也は申し訳ない気持ちを抱きながらも未来のことは放っておく。

「じゃあ……みくりんここ来る?」

 優衣はそう言うと、少しだけ横にずれた。 辰也の右半身の前に少しだけスペースが出来る。

「うん!」

「えっ、ちょっ!」

 少しは広くなったとはいっても人が2人横に並ぶととても狭い。

 しかし未来はその小さなスペースに上手く入り込み、辰也の体に抱きついた。

「やっとお兄さんにぎゅーって出来たよ」

 未来は嬉しそうに微笑んでそう言うが、辰也はそれどころではない。

 左半身には優衣の柔らかい胸が押しつけられ、右半身は未来の体が密着している。

「2人ともくっつきすぎだって!」

 辰也はなんとか離れようともがくが足は2人の下敷きになっているので立つことも出来ず、手は2人にしっかり握られている。

「あんっ、やっ、お兄ちゃん!足動かしちゃだめぇ!」

「あっ、お兄さん、お兄さんのふとももと……未来の体が……やんっ、擦れちゃう!」

 辰也がもがくと2人は熱い吐息混じりに抗議する。

 辰也の足に2人は乗っているが、乗り方はおそらく辰也の足にまたがる体勢。 つまり辰也の足の上下運動と優衣と未来の体が擦れあう体の部分は……。

(あばばばばばばばばばば)

 辰也はパニック状態になりながら足を止めた。

「お兄さん、いきなり未来のお股トントンしちゃだめだよ……」

「お兄ちゃんのエッチ」

 2人は少し不満げな声をあげながらもまだ辰也に抱きついている。

「2人とも……もう体洗ってあがろう……」

 思考回路が麻痺し、かなり逆上せている気がする。 辰也は2人に提案するが2人は了承こそしてくれたが、体を洗っている最中辰也はずっと目を瞑らなくてはならなかった。



「凛ちゃん気持ち良い?」

「うん……」

 お風呂上がり。凛は椿に膝枕をしてもらい、ソファーで耳掃除をしてもらっている最中である。

 椿は耳掻きを使って、傷をつけないように気を配りながら丁寧に凛の耳を掻いていく。

「凛ちゃん、痒いところはない?」

「ん……もうちょっと奥……」

「この辺?」

「んっ、もうちょっと右……」

「ここ?」

「えへへ……そこ気持ち良い……」

 今にも眠ってしまいそうな気持ち良さそうな声で言いながら、凛は椿の服の裾を握った。

「椿お姉ちゃん……凛寝ちゃいそう……」

「ふふっ、じゃあ今から左耳するけど……眠くなっちゃったら寝ちゃっていいよ」

「ありがとう。 椿お姉ちゃん」

 凛はそう言うと、椿の右側に移動して、椿の体の方を向いて椿のふとももの上に頭を乗せた。

(凛ちゃんはまだまだお子様だね。 白き天使(リトルエンジェル)は日常生活にも言えるわ)

 結局、凛は耳掃除が終わる頃には椿の膝枕で熟睡してしまった。

「耳掃除が気持ち良くて寝ちゃうなんて凛らしいわね」

「本当ね。 美歌が髪の毛を乾かしてる間だったからそんなに長い時間してないんだけどね」

 優しく微笑んでそう言って椿は凛の頭を優しく撫でた。 凛に起きる素振りは見えず、すやすやと眠っている。

「起こさないようにベッドに運びましょうか」

「その前に言っときたいんだけど……」

「ん?」

「いや、あの……瞬君の話」

 椿がそう切り出すと、美歌の表情がこわばったが、美歌はため息をついて優しく凛を抱き上げた。

「言い過ぎたとは……思ってるわよ」

「まぁ瞬君も立ち直ってるから良いけど……あんまりかっとならないでよ?」

「分かってるわよ……」

 美歌は口を尖らせてそう言うと、凛と一緒に寝室へ向かった。

祝日!

ということで本日2話目です。


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