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白き苦悩

読んでいただけるとありがたいです。

(今回も……優衣とは当たらないみたいだな)

 辰也は対戦相手を確認し、学園から支給された携帯電話を机の上に置いた。

 まだ未来と優衣はベッドの上ですやすやと眠っている。

 辰也は2人が使っていない方のベッドに座り、テレビの電源をつけた。 2人を起こさないように極力音は小さくする。

「3日前に起きた爆発事故。 犯人は爆発時に死亡が確認されておりますが、警察は協力者がいると……」

 辰也はニュースを見ながらため息をついた。 3日前からニュースはこの話題ばかりである。

 しかし今までとは違い、随分と派手に殺った事件である。

 まず政治家を狙ったこと。

 そして人がとても多いショッピングモールを狙ったこと。

(最後に……白き暗殺者(シャイン)が狙われたこと)

 辰也はテレビの電源を切り、洗面所に向かった。

(まぁ白き暗殺者(シャイン)が狙われたのは推測だけど)

 辰也がそう思った理由は2つ。

 1つは黒き大剣使いらしき人物が目撃されているということ。

 もう1つは午前中に瞬と連絡が取れなかったこと。

 前者は暗殺方法が合わない。 自分達の学校を襲った時のように、人間の外との出入りが少ない学校で、教室という狭い場所に人間が固まっているなら1ヶ所ずつ潰していけば良い。

 しかしショッピングモールとなるとそうはいかないだろう。 外にも逃げれるし、中も広い。

 明らかに剣で大量殺人を暗殺として殺り遂げるには無理がある。

(だったら金倉英里奈が出てくるはずだ)

 金倉英里奈は魔術士(ウィザード)。 弾を自由に操れる魔術士(ウィザード)なら難易度は下がるだろう。

 実際に金髪の女性らしき人がショッピングモール屋上にヘリコプターから着地したとの目撃情報もあるので来ていた可能性もあるのだが、ここで後者の理由が出来る。

 学園長の話によると金倉英里奈は相手の組織の中でもかなり高い地位にいる。 そんな奴と黒き大剣使いが来ているのであれば、もっと被害が出ているはずである。

 しかし、それを瞬達が食い止めており、それで連絡が取れなかったとなると辻褄が合う。

(今度瞬に聞こうかな)

 顔を洗って部屋に戻ると、まだ2人はお互いの体を抱き寄せ合って眠っていた。

 辰也は再びベッドに座り、未来の寝顔を見つめた。

 このニュースが報道されて以来、未来は真夜中に目を覚ます様になった。 正確には悪夢を見て、うなされ、目が覚めてしまう感じだった。

 未来がそんな状態なので、辰也と優衣も真夜中に起きて未来をなだめながら寝る生活が続いている。

 お陰で3日前は顔を真っ赤にして、あまり優衣とは話さなくなってしまっていた未来が普通に優衣と会話を交わす様になったのだが、熟睡出来ないのは問題である。

(何とかしないとな……)

 辰也が着替えを済ませ、ベッドの上に座って悩んでいると、ゆっくりと優衣が目を覚ました。

「あ、お兄ちゃん起きてたの?」

「あぁ、おはよう。優衣」

 優衣は密着している未来から未来を起こさないようにして離れ、辰也の横に座った。

 相変わらず着ているものは下着と薄いシャツ1枚という無防備な格好である。

「昨日もみくりん苦しそうだったね……」

「あの日の事が関係してるなら……学園長と椿さんに相談した方が良いな」

「あの日……?」

 優衣が首をかしげると、辰也は頷いた。

「未来と会った日。 つまり金倉英里奈とマンションの前で戦った日だ」

「トラウマになってるってこと?」

「その可能性もあるな」

 そんなことを話していると未来が目を覚ました。

「おはよう……お兄さん、ゆいゆい」

 まだ眠いのか、目を擦りながら未来は辰也の横に座った。

「おはよう、未来」

「みくりんまだ眠いの?」

「……2人が起きるなら起きる」

 そう言って未来は洗面所の方へ向かっていった。 後を追うように、優衣も洗面所に向かった。

 辰也はバッグの中から自分の携帯電話を取り出した。 最近は電源も切ったままである。

 理由は1つ。 絶対に面倒な事が起こるからである。

(学園から支給されて、本当に助かった)

 辰也はバッグに携帯電話をしまい、学園から支給された携帯電話を手に取った。

 そして受信メールの欄を開くと、1番上には新着のメールがあった。

《元気にしてる? こちらはまだ何も問題はありません。

 何か困った事があったらすぐに連絡してね》

 文章に目を通し、そのメールに返事を返す。

「お兄ちゃん?」

 洗面所から戻ってきた優衣が首をかしげている。

「誰かにメールしたの?」

「あぁ、ちょっと母さんにな」

「お母さんに……?」

 優衣は少し悲しそうな顔になり、再び不思議そうに首をかしげた。

「優衣、今日は昇格(ランク)戦なんだから早く着替えてご飯食べに行くぞ」

「う、うん……分かった」

 優衣は少し躊躇いながらも、バッグの中から服を取り出した。 辰也は逃げるようにトイレに向かい、2人の着替えが終わった後に、3人で食堂に向かった。



「兄貴、どっか行くんすか?」

 瞬は玄関でそう武に呼び止められ、振り返った。

「ちょっと昇格(ランク)戦を見に行くだけだ」

「辰也の旦那を見に行くなら自分も行くっす」

「分かった、待っててやるから早く支度しな」

 瞬がそう言うと、武は部屋に戻っていった。

 時刻はお昼過ぎ。 もうすぐ辰也と優衣の昇格(ランク)戦が始まる時間である。

「お待たせしたっす」

「じゃあ行くぞ」

 瞬は部屋に鍵を閉め、2人でエレベーターに乗った。

「旦那は勝てるっすかね? 今回は結構上位と当たるみたいっすけど」

「今回は40位~50位と当たるからな。 でも今回全勝したら本物だな」

「そうっすね。 少なくとも凡人ではないっすね」

「まぁ少なくとも雑魚では無いのは会ったときから分かってたけどな」

 エレベーターが地下のスタジアムの様な場所に到着し、扉が開いた。

 観客席にはかなりの人数が集まっており、全員がスタジアム内に注目している。

 現在戦っているのは銃手(ガンナー)の男子と優衣だった。

 優衣は建物で相手の射線を切りながら、追尾弾(ミラージュ)を使って姿を見せないまま反撃している。

(優衣ちゃんは結構なオリジンの量だな……。 常人の2倍弱ってとこか)

 瞬はそんな風に感じながら試合を見守る。 横では武が腕を組んで試合をじっと見つめている。

「どっちが勝つと思う?」

「優衣さんっすかね。 真正面からだったら分かんないっすけど、このままの状態で撃ち合えば相手のオリジンが先に尽きるっす」

「まぁでも優衣ちゃんはこの状態を崩さないだろうな。 隠れながら削っていった方が確実だ」

 瞬の言う通り、優衣は接近されたら相手の攻撃を相殺し、爆発弾(ゴリアス)で目眩ましをしながら再び距離を取って攻撃を再開する。

(でも本来なら魔術士(ウィザード)より銃手(ガンナー)の方が遠距離戦は得意なはずだ。

 それでも有利な状況に持ち込めてるって事は単純に優衣ちゃんが強いってことだ)

 結局優衣が終始相手を圧倒し、次の試合が始まった。

 次の試合は辰也と剣士(ソルジャー)の男子との試合。

「さて……旦那は強くなったっすかね」

 武が楽しそうに呟いた。 辰也はスタジアム内で既に剣を構えている。

 瞬も楽しそうに笑いながらスタジアム内を見つめた。

剣士(ソルジャー)対決か。 これは辰也の地力が分か……」

 次の瞬間、勝負はついていた。

「え……?」

「なに……今の……?」

 観客席にいた生徒達も何が起こったのか理解できていなかった。

「兄貴……」

「試合開始と同時にバウンドで一気に相手との距離を詰め、超至近距離で風斬(かざぎり)。 相手は短剣(ソード)だから風斬(かざぎり)は防げない」

 瞬は武に聞こえるように呟いた。

(と言っても長剣(ブレード)細剣(レイピア)でも防げたかと言われると怪しいけどな)

 瞬はゆっくり席から立ち上がった。

「帰るんすか?」

「あぁ、見なくても分かる。 辰也と優衣ちゃんの全勝で終わりだ。 乱戦の方も同じ組にならないなら2人とも1位になるだろ」

 エレベーターに向かう瞬に後ろから武もついてくる。

「今回全勝した場合……旦那達は何位になるんすかね」

昇格(ランク)戦開始前がランキング48位と45位だったな……。

 まぁ……20位前後だろうな」

「自分達もそろそろ自由昇格(ランク)戦申し込まれてもおかしくないっすね」

「まぁ申し込んで来たらボコボコにしてやるけど」

 瞬は笑いながらエレベーターに乗り、武も瞬に続いてエレベーターに乗る。

「兄貴、油断したら足下を掬われるっすよ?」

「ははっ、確かに今の辰也と優衣ちゃんを舐めてかかったら痛い目にあうな」

 エレベーターが自分達の部屋のある階に到着し、瞬達は自分の部屋に向かう。

「あと話は変わるっすけど、そろそろ桜さんが帰ってくるんじゃないっすか?」

「…………また少し面倒な事が起こりそうだな」

「面倒な事っすか?」

「桜ちゃんって責任感が強いから任務とか1人でやろうとするんだよな……。

 そりゃ桜ちゃんが強いのは十分わかってる。 でもあまりにも周りを頼らなさすぎる」

「確かにそういうところあるっすね。 今回も学園長の意見あんまり聞いてなかったっす」

「学園長も大変だな」

 瞬と武が部屋に戻ると、リビングで放人が章平に数学を教えていた。

「ただいま、放人戻ってたのか」

「小腹が空いたからさ。 章平への講義はそのついでだ」

「助かりました。 放人さん」

 章平が素直にお礼を言うと放人は嬉しそうに微笑み、章平の頭を撫でた後、部屋から出ていった。

「新しいアナライズの開発……。 上手くいくっすかね?」

「それは……あいつ次第だろ」

 瞬は静かに去っていった放人を黙って見守った。

志望動機書作成

面接

定期テスト

模試

等々の理由があって中々更新できませんでした。

申し訳ありません。m(._.)m

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