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白きお菓子

読んでいただけるとありがたいです。

放人(はなと)さんは暗殺者(アサシン)ランキング8位の実力者ですよ」


(忘れてた!!!!)

 章平の言葉を思い出しながら辰也の体は宙を舞う。

《人体危険高度! 衝撃を吸収した後に装備が消失します!》

 アナライズからそんな声が聞こえ、辰也の体が床に叩きつけられた後に辰也の服装が元に戻った。

 アナライズを通してオリジンで作られる装備に身を包んでいる状態では、オリジンを用いての攻撃しかダメージを受けず、大きな痛みを負う事もない。

(ある程度危険だとこうなるわけか)

 辰也は納得しながら起き上がった。

「ふっ、期待のルーキーもこんなものか」

「その悪役キャラやめろ」

 どや顔でこちらを見てくる放人に辰也はため息混じりにそう言った。

「まぁそう怒るなよ。 印弾(マーカー)瞬間移動(テレポート)を知らないのに十分戦えてたよ」

「教えてくれたら機嫌直すよ」

「上手いこと弱味を突くな……。 まぁいいや、とりあえず出よう。他の人も使うだろうしな」

 辰也は放人の後についていき、休憩所のソファーに腰をおろした。

 まだ訓練室はほとんど埋まっており、休憩所も賑わっている。

「俺の予想だが、印弾(マーカー)って言うのはあの青い弾の事で、その印弾(マーカー)をつけた場所に瞬間移動(テレポート)っていうので移動するのか?」

「うん、説明終わり」

「お前説明してないだろ!」

 辰也は思わず突っ込みを入れる。

「辰也の予想は正解だ。 というか満点だ。 よって俺が説明することは何もねえよ」

「他に付け加える事もないのか?」

 辰也がそう言うと放人は腕を組んで数秒考えると、何かを思い出した様に手を叩いた。

印弾(マーカー)は共有できるって特性があるな」

「共有?」

 辰也は首を傾げた。

「例えば俺が壁に印弾(マーカー)を撃つ。 それで俺が辰也に許可を出せば辰也は俺の撃った印弾(マーカー)の場所に移動できるってわけさ。

 まぁ辰也が瞬間移動(テレポート)を持っているのが条件だけどな」

「仲間を自分の任意の位置に移動をさせる事も出来るって事か」

 辰也の言葉を聞いて、放人は頷いた。

「だから支援(サポート)の役割が大きいアナライズだな。

 使うのは主に狙撃手(スナイパー)だな。 まぁ見つかったらほぼ負け確定だから当然だけど」

「あ、でも俺が大人数の昇格(ランク)戦に参加した時は魔術士(ウィザード)狙撃手(スナイパー)をミラージュで倒してたが……」

「ミラージュは自動追尾弾だからな。 目で見た対象、または自動でオリジンを感知してその対象を追尾する。

 だからミラージュを使う魔術士(ウィザード)狙撃手(スナイパー)の天敵って訳だ。

 オリジンを感知して追尾されたら距離とってもあんまり関係ないからな」

「何だか魔術士(ウィザード)が最強のように思えてきたな」

 辰也がため息混じりに呟くと、放人は笑いながら首を横に振った。

「そんなに都合の良いものじゃないさ。 杖を通して作り出した弾の軌道を決めるんだ。 そのイメージが出来なければ弾は対象に当たらない

 それに銃手(ガンナー)と比べて弾の威力が落ちてる」

「それは初耳だな」

「加えて射程も短くなる。 相当な腕が無いと遠距離には届かないし当たらない。

 その代わり銃手(ガンナー)はミラージュが使えないけど、真正面から撃ち合えば勝つのは銃手(ガンナー)だろうな」

魔術士(ウィザード)の天敵は銃手(ガンナー)って訳か」

「そうなるな。 ちなみに武人(ウォーリア)の天敵は剣士(ソルジャー)な。

 まぁ弾を撃ち込まれるより剣でズバズバ斬られる方が辛いってだけだな」

 そう言って放人はゆっくりと立ち上がった。

「帰るのか?」

「おう、ありがとな、辰也。 久しぶりに楽しかったぜ」

「あぁ、また今度もう1戦頼む」

 放人は笑いながら手を振ってエレベーターの方へ向かっていった。

(もう少し戦ってから帰るか)

 辰也は再び訓練室に向かった。



「とうっ!」

「きゃっ!?」

 いきなり未来に抱きつかれた優衣は変な声が出てしまい、頬を赤く染めた。

「ゆいゆい、お菓子食べよ」

「うん、食べよ食べよ」

 ベッドの上で優衣と未来は並んで座り、お菓子を食べ始めた。 最初は喧嘩していたが、随分と簡単に仲良くなってくれたので辰也も2人を部屋に残したのである。

「お兄さんいつ帰ってくるのかな?」

「うーん……あと30分位かな」

「じゃあトランプでもしよ!」

 そう言って未来は嬉しそうにトランプを取り出した。

「今度は負けないもん!」

 優衣も嬉しそうに未来と向かい合う。

 2人は暫くの間、トランプや他の遊びで時間を潰し、食べていたお菓子も残り少なくなってきた。

「あ、最後の1本だ」

 未来が最後に残った長細いお菓子を見て呟いた。

「みくりん食べていいよ」

「ううん、ゆいゆい食べてよ」

「……食べにくいよ」

 優衣に譲ったわりには未来はじーーっとお菓子を見つめている

「あ、じゃあこうしよう!」

 未来は何かを思い付いた様にそう言うと、長細いお菓子を少しだけ口にくわえた。

「一緒に食べよ?」

 未来はそう言って長細い白いチョコでコーティングされたお菓子を少しだけ口にくわえたまま、優衣の口元にお菓子を差し出した。

「ふええ!?」

 優衣はまた思わず変な声が出てしまった。 あまりにも未来の行動が予想外すぎた。

 優衣は未来の長細いお菓子をくわえた唇を見つめて頬が赤くなる。

 未来は首をかしげるとお菓子を更に優衣の口元に近づけた。

「早く食べよ?」

「いやいやいや!! みくりん今からする事を自覚してるの!?」

「え? お菓子を一緒に食べるだけでしょ?」

 未来は無自覚の様で優衣の肩を優しく掴むと長細いお菓子を口にくわえたまま優衣がもう片方から食べるのを待っている。

「はやく。 チョコ溶けちゃうよ?」

「だ、だだ、だって……! ポッキーゲームなんてしたら……」

 これから未来としてしまうであろう行為を想像して、優衣の顔がますます赤くなる。

「はやく! チョコ溶けちゃう!」

「も、もう! 分かったよ! 仕掛けたのはみくりんだからね!!」

 優衣はお菓子を口にくわえた。 未来は満足そうに微笑むとお菓子を食べ進めて行く。

(こ、これって……やっぱり最後はああなっちゃうよね!?

 椿さんとお兄ちゃんには最後にすることはしたことあるけど……やっぱり恥ずかしい!!)

 しかし猶予はない。 反対側からは未来が目を閉じたまま、お菓子を食べ進めている。

(とりあえず優衣も目を閉じよう……!!)

 優衣は目を閉じて、お菓子を食べ始めた。

(目が合って恥ずかしかったから目を閉じたけど……今どのくらいだろ?)

 未来はそんな事を思いながら少しずつ食べ進める。

(未来の方が食べてる気がするけど……でもゆいゆいも向こうから食べてるよね。

 ……あれ? これって最後はどうなるの?)

 未来は今更不思議に思い、ゆっくりと目を開けた。

 次の瞬間、唇が触れあった。 同時に優衣も目を開ける。

(…………!?!?!?)

 触れあった柔らかい唇。 超至近距離で見つめ合う2人。

 一瞬のうちに未来の顔が真っ赤になり、目にも止まらぬスピードでベッド寝転がって枕に顔を押し付けた。

(やっぱり……予想してなかったんだ)

 未来の反応を見て、優衣はそう思うしかなかった。 予想していたらここまで動揺はしないだろう。

「み、みくりん……?」

 オーバーヒートしてしまったのか、未来は全く返事をしない。

「キスしちゃうって……予想してなかった?」

 黙ったまま未来は枕に顔を埋めたまま頷いた。

(ざ、罪悪感が……)

 何か悪いことをしてしまった気になり、優衣は焦ってしまう。

 するとドアが開き、辰也が部屋に入ってきた。

「ただいまー……って未来は寝てるのか?」

「え、えっと……」

 説明に困る優衣に、辰也は首を傾げた。

「喧嘩……じゃなさそうだな」

「う、うん。喧嘩した訳じゃないんだけど……」

 その言葉を聞いて、辰也は未来の方に目を向ける。 顔は見えないが、耳まで真っ赤になっているのは確認できた。

「良く分からないけど……とりあえずご飯食べに行くか」

 結局、未来は終始辰也にべったりくっついて、真っ赤になった顔を優衣に見せないように過ごしてその日は終わった。



 そして特に大きな問題は起きず、再び昇格(ランク)戦の日がやって来た。

 現在の辰也と優衣のランキングは共に50位以内。 かなり学園内でも有名な存在となっていた。

(まぁ確かに異常なスピードよね。 普段自由にやってる時にたまにかなり格上を倒してるのも影響してるだろうけど)

 椿はパソコンを使って生徒達の対戦相手を決めながらそう思い、辰也と優衣のポイントを見た。

「2人とも1500ポイント越えね。 約2週間でこれは本当に異常ね……。 章平君以来かしら?」

 椿は愉快そうに呟くと、対戦相手を決めた物を記したものを学園長に転送する。

(優衣ちゃんは精密な弾のコントロールと基本に忠実な戦い方。

 辰也君は剣士(ソルジャー)トップクラスの剣の腕前と積極的に前に出る攻撃的な戦い方。

 2人とも初心者とは到底言えない位の実力者ね)

 椿はパソコンを閉じて、大きく伸びをした。昨日の後処理もあり、少し疲労が溜まっている。

(でも「七人の白き暗殺者(かれら)」に敵うかと言われると……厳しいかしら)

 椿は小さくため息をつき、ベッドに寝転がった。

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