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白き日常

読んでいただけるとありがたいです。

「お兄さんこんなに買ってくれるの!?」

「別にこんなにってわけでもないだろ」

 辰也が料金を払うと未来は店員から紙袋を受け取った。 中には未来が選んだ服が5着入っている。

 ここはビルの10階。 このフロアには色々な服や靴、バッグやアクセサリー等も売っていた。

(ショッピングモールを小さくした様なものだな。 別に外に出なくても暮らせるって事か)

「お兄さんありがとう!」

「ほいほい。 じゃあ部屋に戻るか」

 既に新しい服を購入した優衣と嬉しそうな笑顔の未来を連れて辰也は部屋に戻った。

「お兄ちゃん、今から勉強するの?」

「そうだな。 一応テストとかもあるみたいだし」

 辰也はテレビの下の棚をあけ、中からパソコンを取り出した。

「お兄さん勉強するの?」

「うん、だけど俺は後で良いよ。 優衣、先にやりな」

「お兄ちゃん助けてね」

「分からないところがあったら呼んでくれ」

 辰也はそう言って荷物の中から小説を取り出すと、ベッドの上に座ってそれを読み始める。

「お兄さんあそぼーよー」

「優衣の邪魔になるだろ」

「じゃあ静かにするからあそぼ♪」

 未来はそう小声で言いながら本を持っている両手の間をすり抜けて辰也に抱きついた。

「未来も本でも読んだら?」

「お兄さんとあそぶの」

 未来はそう言って更に辰也と体を密着させる。 正直辰也と本との間に未来が入り込んでいるのでもう殆ど本は見えない。

(未来は相当の甘えん坊だな……。 優衣よりも更に甘えん坊だ……)

 辰也は本を置いて優しく未来の頭を撫でた。 未来は嬉しそうに微笑んで辰也の体を抱きしめる力を強くする。

「未来、ちょっと痛い」

「お兄さんが未来のことぎゅーってしてくれたら……弱めてあげる」

(もう完璧に未来のペースだな……)

 辰也は小さくため息をつくと、未来の体を優しく抱きしめた。

「お兄さんもっと強くぎゅーってして♪」

「大丈夫か?」

 辰也がそう言うと未来は嬉しそうに頷いた。 辰也は少しずつ抱きしめる力を強くしていく。

「ん……お兄さん……」

「大丈夫か?」

「もっと……もっと強くして……」

 未来の要望通り辰也は更に少しずつ抱きしめる力を強くしていく。

(苦しくないのか? 優衣だったら苦しいって言いそうだけど)

「未来、本当に苦しくないか?」

「はぁ、苦しい位が……ちょうど良いの……♪」

 未来は少し吐息混じりにそう答えた。

(なんか……声がエロくなったな……)

 強く抱きしめられ少し苦しそうに呼吸をするのでそれが喘いでいる様に、艶かしい吐息混じりの声に聞こえるのである。

「未来、手が疲れてきたんだけど」

「だめぇ……ちゃんと強くぎゅーってしてて」

 耳元で色っぽく未来にそう言われ、思わず辰也はドキリとする。

「お兄ちゃん!ヘルプミー!」

 優衣に呼ばれて辰也は未来を抱きしめる力を弱め、優衣の近くへ寄った。

「えっと……ここはだな」

 辰也が解き方を教え、優衣が納得すると辰也は再びベッドに戻った。 ベッドの上では未来が物欲しげな顔で辰也を見つめている。

「足りなかった?」

「うん……もっとして……♪」

 未来はもう一度辰也に抱きつき、辰也ももう一度未来を強く抱きしめる。

「この苦しいの……癖になりそう」

「手が疲れる……」

 そうこうしている間に未来は辰也に抱きついたまま寝てしまい、優衣が講義を聞き終わった。 辰也は未来をベッドの上に寝かせ、パソコンの前に座った。

 しかしその辰也の膝の上に辰也と向き合う形で優衣が乗ってくる。

「優衣……画面が見えないんだけど」

「お兄ちゃん、この講義は優衣の事をぎゅーってしながら見て」

「何を言ってるんだ……?」

「さっきまで未来って子といちゃいちゃしてたでしょ……。

 だから次はちゃんと優衣といちゃいちゃして!」

「わ、分かったよ」

 結局、辰也は優衣を抱きしめ、頭を撫で、たまに胸を触らされ、反撃にくすぐったりしながら講義を終えた。

(全く頭に入って来なかったな……)

「お兄ちゃん集中出来た?」

「どの口が言うのかな?」

 辰也は優衣の横腹を撫で回す。

「ひゃうん!お兄ちゃんだめぇ!」

「しばらくくすぐってやる」

「あははははははは!お兄ちゃんだめだめだめ!」

「まぁ未来の事は悪かったと思うけどさ」

 辰也は優衣の横腹を撫で回すのを止め、未来の元へ向かった。 未来はまだベッドの上で眠っている。

「でもあの放心状態を見た後で……冷たくしすぎるのは可哀想かなって思ってな」

「優衣も……お兄ちゃんを奪われなければ友達になりたいけど……」

 辰也はその言葉を聞いて微笑みながら優しく未来を起こした。

「むにゃ……お兄さん?」

「おはよう未来。 晩御飯食べに行こう」



「さてさて……どうします?」

 時刻は夜10時。 武、章平、瞬は部屋でソファーに座って3人ともアイスバーを舐めている。

「一応現場では俺に指揮権が命じられてるからな……。

 とりあえず俺の考えでは最初は散るべきだと思ってる」

「全員バラバラですか? それとも2人ずつですか?」

「章平と武は1人ずつ。 凛は俺と一緒だ。 美歌さんに怒られるからな」

「確かにそうっすね」

 武は笑いながらそう言うと章平も笑いながら頷いた。

「後は本当に来るかどうかだな……」

 瞬はそう小さな声で呟いた。



 辰也は小さくため息をついた。 お風呂にも入って後は寝るだけだがため息をついた。

(まあ……予想はしてたけどさ)

「お兄ちゃん♪」

「お兄さん♪」

 優衣が左側から、未来が右側から抱きついている。

 優衣はいつもの如くそのスタイル抜群の体を密着させ、辰也の腕は優衣の体の下敷きになっている。 未来は辰也の腕に抱きつき、そのお陰で辰也の手に未来の綺麗でいつまでも触っていたくなるようなすべすべの太ももが擦り付けられる。

 そして当然両腕を押さえられているので寝返り等が出来ない状態であった。

(寝れねぇ……!!)

 昨日は違ったが今日は未来も優衣もお風呂に置いてあるシャンプーとトリートメントを使った。

 それによりいつもの2倍甘いシャンプーの匂いが辰也の鼻を刺激する。

(いつもよりいい匂いするし……2人とも今日の朝と同じく無防備だし……)

 辰也はまた小さくため息をついた。 両側では既に2人がすやすやとかわいい寝顔で眠っている。

 2人の寝顔を見て辰也は優しく微笑み、自分もゆっくりと目を閉じた。

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