白き嫉妬
読んでいただけるとありがたいです。
辰也と優衣が心美の20個程の質問に全て答えると、心美は軽く頭を下げて、満足そうに去っていった。
「お兄ちゃん!」
「お兄さん!」
心美が部屋から居なくなるのと同時に2人が再び辰也にべたべたとくっつき始めた。
「2人ともせめて着替えてから抱きついてくれ……」
優衣と未来が身に付けているのはパンツと薄いシャツ1枚だけなのでどうしても優衣の中学生とは思えない豊満な胸の形や、まだあどけなさの残る未来の体のラインがはっきりと分かってしまう。
(まぁ2人とも妹だと思えば変な気分にならないんだろうけど……。
とても今の状況で何も感じるなと言われても無理だ……!)
「ほら着替えて、着替えて」
辰也は2人にそう言うが、未来は変わらず辰也に抱きついている。
「未来……まさかさ……」
「未来着替えなんて持ってないもん♪」
「やっぱり……」
未来は何も持たず(催眠スプレー缶は除く)に部屋に来たのだ。 着替えなんて持ってきていないのは考えれば分かることだった。
辰也はちらりと未来を見た。
(かと言ってこんな格好で外に出るのもなぁ……)
下着を着けていないのではっきりと分かる少しだけ膨らんだ胸にスラリと伸びた綺麗な足。 そして少しでも前屈みになれば見れてしまうパンツ。 そして同時に胸元も危うくなる。
しかし何よりも危ないのは未来の意識が非常に無防備だと言うことである。
(こんな格好でここまで来たんだ。 明らかに周りからの目は気にしてない。
だから余計に危ないわけで……)
辰也が悩んでいる間に優衣は仏頂面で着替え終わり、辰也への抱きつきを再開する。
「お兄ちゃん、朝ごはん食べに行こ」
少し仏頂面の優衣はそう言って辰也の腕を軽く引っ張る。
(着替え中ずっと未来に俺を取られてた事が気にくわなかったみたいだな……)
辰也の事になると割りと嫉妬深くなる優衣がかわいく思え、辰也は微笑んだ。
「お兄ちゃん、早く」
優衣は辰也の腕を自分の胸に押し付けるように引っ張っている。 辰也は自分の腕に柔らかい感触が伝わるのと同時に違和感に気づく。
「優衣……お前ブラは?」
「着けてないよ?」
「着けろよ……」
まるで何を当然の事を言っているのだといわんばかりの優衣の返答スピードに辰也の口から思わずため息が漏れる。
「だってお兄ちゃんこっちの方が良いでしょ?」
優衣は小悪魔の様に微笑むと辰也の腕を胸で挟み込んだ。 そのまま辰也の腕を掴んだまま、優衣は自分の腕を使って辰也の腕を胸で圧迫する。
圧迫すると言っても優衣の胸なのでとても柔らかくてあたたかい。
(堪能してる場合じゃないな)
辰也は自分に突っ込みを入れて優衣を優しく抱き寄せるとそのまま優衣の体を抱きしめた。
「お兄ちゃん……?」
優衣は頬を赤く染めて辰也を見つめる。
「優衣、手離して」
「その代わり……このままぎゅーってしててね」
「ちょっとだけな」
辰也がそう答えると優衣は辰也の手を離し、辰也は約束通り優衣を抱きしめる。
(自分から体押し付けたりするわりに俺から抱きしめたりしたら照れるんだよな)
実際に辰也に抱きしめられている優衣の頬は赤くなっている。
(さて何か良い方法は無いかね……)
辰也を優衣に取られて不機嫌そうな未来をちらりと見て辰也は再び考え込む。
(俺達が服を買ってくるか、椿さんに頼むか、優衣の服を着てもらうか……。
売店で俺が女の子の服を選ぶのも変か。 それにそろそろ銀行に行かないと金が無くなる……)
「優衣、未来に服を貸してやってくれ」
「優衣の……?」
優衣は辰也に抱きしめられながら頭を優しく撫でられて幸せそうな顔をしていたが、少しだけ先程の仏頂面になる。
「着る服がないからしょうがないだろ?」
「未来はこのままでも良いよ?」
「その格好で外に出るのは流石にヤバイから着替えた方が良いって。 優衣、借りても良いか?」
「お兄ちゃんがそう言うなら……」
そう言いながら優衣は荷物の中からかわいい洋服とスカートを取り出すと未来に手渡した。
未来は服を受け取ると普通にそのまま着替え出したので辰也は慌てて未来がいる方向とは逆方向を向いた。
(未来の方がちょっと小さいけどまぁ大丈夫だろう)
「お兄ちゃん、こっちは流石に合わないと思うよ」
優衣はそう言って辰也の前で自分の胸を抱きしめる様なポーズをとった。
「まぁそっちはしょうがないけど……優衣は着けろよ」
「わかったよ……」
優衣は少し頬を膨らましながらもう一度荷物の中から服を取りに行った。
(なんか朝から疲れた……)
辰也が小さくため息をつくと目の前にちょこんと未来が座り、首を傾げている。
「お兄さん疲れちゃった?」
「ちょっとな」
未来には優衣の服のサイズは少し大きかった様だが大丈夫そうだったので辰也は少し安心した。
優衣も下着を着けたらしく、未来と話している辰也を頬を膨らましながらじーーっと見つめている。
(睨まれてるな……)
辰也も着替え終わると、2人を連れて食堂に向かった。
食堂に着くとあまり人はおらず、空いていた。
「辰也さん、おはようございます」
後ろから声をかけられ、辰也が振り返るとそこには章平が立っていた。
「お、章平。 おはよう。 瞬達とも一緒か?」
「いえ。 瞬さんと武さんは部屋に戻ってます。 僕は放人さんにジュースでも届けようかと」
辰也は未来に財布を渡し、2人を先にレジに向かわせた。
「そう言えば放人とは最近会ってないな……」
「放人さんは今、新しいアナライズを作り出そうとしています」
「新しいアナライズ……?」
「今ある3種類の剣と3種類の銃。 そして杖と鎧。
更に補助機能の物が4種類あります。
そして放人さんは新しいアナライズを作ろうと奮闘しているということです」
「なるほどな……。 でもアナライズってそんな簡単に作れるものじゃ無さそうだけど」
「勿論凡人に作ることなどまず不可能ですよ。 でも放人さんはあぁ見えて頭が良いので……」
「へぇ……それで放人は自分が使いやすそうなアナライズを作るのか?」
辰也がそう訊くと章平は首を横に振った。
「そこまでは分かりません。 ですが瞬さんは逆に今までのスタイルを崩してしまわないか心配してました」
「今までのスタイル?」
「はい。 放人さんは暗殺者ランキング8位の実力者ですよ。 9位の人とは1000ポイント以上離しています」
「1000ポイントってかなりの差だな……」
約300ポイントで学園の一番下のランキングであり、そこから1000ポイント離れた順位となると大体70位前後となる。
辰也はそう呟くと後ろから声をかけられた。 優衣たちが席に座って手招きをしている。
「じゃあ辰也さん、僕はこれで」
「あぁ、またな。 章平」
辰也は章平と別れると優衣たちの元へ向かった。
優衣が選んでくれていた料理を食べ、3人は自分達の部屋に戻った。
辰也はベッドに寝転がり、学園から支給された携帯電話の画面を点けた。
(確か自分の暗殺者ランキングは見れるんだよな)
「お兄ちゃん何してるの?」
「気になる~」
両側から優衣と未来が寄り添ってきた。 優衣は体を密着させ、未来は辰也の腕をしっかりと抱きしめるようにくっついてくる。
「昨日やった昇格戦でどのくらいランキングが上がったか見ようと思ってさ」
そう言って辰也は自分のプロフィール画面を表示させ、ランキングの項目をタッチした。
嵩霧辰也 17歳 男
895ポイント ランキング128位
「半分よりはちょっと上って感じだな」
「瞬さんとか凛ちゃんはお兄ちゃんよりどれくらいポイントが上なのかな?」
「さぁ……大体3000ポイント前後じゃないのか?」
「本当に強いんだね……」
優衣は感心する様にそう呟いた。 しかし辰也の隣で未来は首を傾げている。
(まだこの学園について聞いてないのかもしれないな)
「未来はまだ聞いてないのか?」
辰也がそう訊ねると未来は頷いた。
「お兄さんはそのポイントって言うのをいっぱい集めるの?」
「まぁそんな感じだな」
国家機密級の話を自分があんまり説明するのは良くない気がしたので辰也はそう曖昧に答えるとゆっくりと上体を起こした。
「とりあえず未来の服でも買いにいくか」
「えっ! お兄さんが買ってくれるの!?」
「ちょっとだけな」
辰也がそう言うと未来は嬉しそうに笑い、辰也に抱きついた。
「お兄ちゃん、優衣も行く」
少し不機嫌そうな顔をしながら優衣も辰也の背中に抱きつき、そう言った。
「分かったよ。 じゃあ2人とも行くぞ」
辰也は再び2人を連れて、学園内にある洋服店に向かった。
ブックマーク登録&ポイント評価等をよろしくお願いいたします。
 




