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白き宝物

長期に渡り更新が出来ずに申し訳ないです。


読んでいただけるとありがたいです。

「はっ!」

 辰也は目を覚ますと辺りを見渡した。 するととても近くに未来の顔があり、未来はまだすやすやと眠っていた。

「確か……昨日は……」

 辰也はゆっくりと記憶を辿っていく。

(優衣が帰ってきたと思ってドアを開けて、そしたら未来がいて、その後色々と優衣が知ったら嫉妬されそうな事をされ……)

 そして辰也はあることを思いだし、ベッドの上に置いてあるスプレー缶を手に取った。

(んでこれで眠らされたと)

 辰也はため息をついた。 スプレー缶をベッドの上に戻し、未来に布団を掛けて洗面所に向かった。



 椿はゆっくりと目を覚ました。 いつも通りゆっくりと伸びをして時計を見ようと横を向いた。

 そこには優衣がすやすやと眠っている。

「優衣ちゃん? 何で……」

 椿はそう呟き、優衣が服を着ていない事に気づき、全てを思い出した。 一瞬の内に椿の顔は真っ赤になる。

(うわあああああああああああああ!!

 やってしまったあああああああああ!)

 椿は頭を抱えて悶絶するように丸まった。

「どうしよう……辰也君にどう説明すれば……」

 椿はゆっくりと後ろを向いた。 優衣はまだ眠っている。

(とりあえず服を着せないと)

 椿はソファーの上に畳んで置いてあった服を優衣を起こさないように気を付けながら着させていく。

(ヤバイ……ムラムラしてくる……)

 椿はブンブンと頭を横に振って優衣に服を着せていく。 後はシャツだけだが一番の難関である。

「どうやって手と頭を通すかが問題よね……」

 椿は優衣の手を握って万歳をさせると先にシャツに手を通した。 そして優衣の体を少しだけ抱き上げ、頭を通すと後はゆっくりとシャツをお腹まで伸ばした。

「意外と優衣ちゃん起きないね」

 椿はそう呟いて優衣の横に寝転がると、優衣の体を抱き寄せた。 まだ優衣は眠っている。

(かわいいなぁ)

 椿は優衣の頭を優しく撫でた。 すると優衣はゆっくりと目を開けた。

「おはよう……優衣ちゃん……」

「おはようございます。 椿……さ……」

 おはようございますと言うまでは普通だったが記憶が戻っていったのかどんどん優衣の頬が赤くなり、林檎の様に真っ赤になった。

「あの……優衣ちゃん……? ご、ごめんね?」

「椿さんは悪くないです。 優衣が……その……」

「優衣ちゃん……怒ってない?」

「はい。 椿さんは……怒ってないですか?」

「私は勿論怒ってないけど」

 椿がそう言うと優衣は安心した様に笑い、椿も優衣を抱きしめた。

「優衣ちゃんどうだった?」

 椿が小悪魔の様な笑顔でそう言うと優衣の頬が再び赤くなる。

「気持ち……良かったです……」

「いっぱい気持ちよ~くなってくれたもんね」

 椿はそう言うと優衣と唇を重ね合わせた。 優衣は驚いたがすぐに椿のテクニックにより椿のキスを受け入れている。

(ヤバイ……椿さんのキスらめぇ……)

 椿がゆっくりと唇を離すと優衣は椿にもたれ掛かる様に抱きついた。

「優衣ちゃんはかわいいなぁ」

 椿は優しく微笑みながら優衣の体を抱きしめた。

「椿しゃん……」

 優衣は椿の胸に顔を押し付けて幸せそうに微笑んでいる。

「とりあえず辰也君の部屋に戻ろっか」

 椿は着替えた後に優衣と手を繋いで辰也がいる部屋に向かった。



「お兄さん♪」

 未来は辰也に後ろから抱きつき、辰也は黙ってテレビを見ている。

「お兄さん構ってよ~」

「だって構ったら余計に甘えて来そうだし。 だから無視するのが一番かなって」

「ひどいよ、お兄さん」

 未来は前に回り込むと辰也をベッドに押し倒した。

「お兄さん♪」

「抱きつくなってば……」

 辰也はため息をつき、優しく未来の頭を撫でた。

「えへへ~。 お兄さんのなでなで」

「やれやれ……」

 辰也は未来の頭を撫でているとベルが鳴り、未来を体の上からどかしてからドアを開けた。

 そこには椿と優衣が立っていた。

「お兄ちゃん!」

「おかえり、優衣」

 辰也は抱きついてきた優衣を優しく抱きしめた。

「それで椿さん……。 何でこの子がここに来たんですか?」

 辰也は後ろに立っている未来を指差してそう言った。

「あれ? その子は美歌に預けたはずなんだけど……」

 次の瞬間、椿は何かを思い付いた様に固まり、暫く黙り込んだ。

「誰なの?」

 優衣は半ば睨み付けるような目で未来を見ながら辰也に訊ねた。

「俺達が助けた女の子だよ」

「……一緒に寝たの?」

「まぁ流れ的にそうなって、って痛い痛い!」

 優衣の爪が辰也の背中にくい込んでいる。

「お兄ちゃん……」

「いや……その……」

「今日優衣と一緒に寝てくれなかったら結婚しないもん」

「わ、分かったよ」

 辰也はそう言って小さくため息をついた。

「なるほどね……」

 椿がそう呟くと辰也達は首をかしげた。

「とりあえずその子は預けて良いかしら? 私はちょっと美歌の所へ行ってくるから」

「あ……はい……」

 有無を言わさない様な雰囲気の椿に辰也は曖昧に答えると椿はエレベーターのある方へ歩いていった。

 辰也は一旦優衣と離れてドアを閉めた。 そして至極当然振り返る。 そこでは優衣と未来が睨み合っていった。

(すごく怖いんだが……)

「お兄ちゃんに何したの……」

「何もしてないよ?」

(嘘つけ! 催眠スプレーかけただろ!)

「お兄ちゃんは優衣の旦那様なんだからね!」

(さっき結婚してくれないかもしれない発言したよな?)

「未来だってお兄さんのこと好きだもん!」

(普通好きな人にスプレーかけます?)

「好きとか関係ないもん! 優衣とお兄ちゃんが結婚するのは決まってるもん!」

(好きとか関係ない計略結婚は流石に嫌だけどな)

「そんなの関係ないもん! 人生何が起こるか分からないもん!」

(そこはおっしゃる通りだな)

「結婚するのは絶対なの!!」

(お前さっきの発言本当に憶えてるか?)

「じゃあお兄さんを奪ってみせるもん」

(流石にそれはダメだろ)

 辰也はため息をつくと優しく優衣の頭を撫でた。

「お兄ちゃん?」

「2人とも喧嘩するなってば。 一旦落ち着け。

 それに未来は優衣にもお礼を言いたかったんじゃなかったのか?」

 辰也がそう言うと未来は少し照れながら優衣に近づいた。

「あの……助けてくれて……ありがとう」

「どう……いたしまして」

 2人は少し照れながら言葉を交わし、未来は照れ隠しに辰也に抱きついた。

「こらーー!!」

 優衣は未来に後ろから掴みかかると後ろに引っ張り始めた。

「優衣ストップストップ!! 怪我するだろ!」

 辰也は優衣を未来ごと抱きしめた。 そして一旦優衣の手を未来の服から離させ、辰也も未来から離れた。

「2人とも喧嘩するなってば……」

「だってお兄ちゃんとられるのいやだもん!」

 優衣はそう言って辰也に抱きつき、それを見た未来も辰也に抱きついた。

「ちょっ!」

 辰也はベッドに押し倒され、左から優衣、右から未来に体を押し付けられる。 2人とも体を半分ほど辰也の体に乗せる感じで、辰也の胸の上でお互いの体を手で押し合っている。

「もっとそっち行って!」

「やーだ!」

 2人が体を押し合っている間にも辰也の体には優衣と未来の体が押し付けられ、特に優衣の胸が辰也の横腹に当たっている。

(やっぱり優衣ってめっちゃ胸大きいな……。 でも喧嘩は早く止めないとな)

 辰也は2人の横腹を撫でるとくすぐったいのか2人とも声を上げて体をビクンと震わせた。

 辰也はその隙に2人とも抱きしめ、頭を優しく撫でた。

「お兄ちゃん、いきなりくすぐったいところ触るのはダメだよ」

「お兄さんはエッチだね」

 2人は微笑みながら再び辰也に体を押し付け始める。

(果たしてこの2人は仲良くなるのか……?)

 辰也は小さくため息をついた。



 椿はエレベーターからおりると真っ直ぐに美歌の部屋に向かい、ドアの前のベルを鳴らした。

 少しの間待つとドアが開き、中から少し眠そうな顔をした凛が出てきた。

「おはよう……椿お姉ちゃん」

「おはよう、凛ちゃん。 まだ眠そうだけど」

 椿は微笑むと凛を優しく抱きしめた。 優しく頭も撫でると凛は椿の胸に顔を埋めた。

「椿お姉ちゃん、良い匂い」

「凛ちゃん、中に美歌居る?」

「うん。 まだ寝てるけど」

「ちょっと美歌に話が有るから入って良い?」

「うん」

 凛は椿と手を繋いで部屋の中に入り、凛はリビングのソファーに寝転がった。

「大切な話なら凛はここで待ってるね」

「ありがとう、凛ちゃん。 すぐ終わるから」

 椿はゆっくりと美歌と凛の寝室の扉を開けた。 ベッドの上で美歌が横になっている。

「美歌」

 椿は寝ている美歌にまたがると肩を優しく揺さぶって美歌を起こした。

「ん……椿?」

「貴女優衣ちゃんに媚薬飲ませたでしょー!!」

 椿は無防備だった美歌の横腹をくすぐり始めた。

「ちょっ! あはははははは!」

 美歌は大声で笑いだし、椿の手から逃れようともがくが椿は美歌にまたがって、しっかりと美歌の体をベッドに押さえつけている。

「それに預けた未来ちゃんも辰也君の所に行かせてるし」

「きゃはははははは! つ、椿ストップストップ!!」

「優衣ちゃん物凄く発情してたからエッチしないと収まらなかったし」

「つ、つばきストップストップ!!あっはははははははははははは!!」

 美歌は激しく暴れるが椿は全く手のスピードを緩めることなく美歌の横腹をくすぐり続ける。

「お仕置きとして昔から弱かったくすぐり刑」

「苦しい苦しい!! 息できにゃい!!」

「しなくて良い」

「そんなあっはははははははははは!! ひ、ひどいきゃはははははははははははは!!」

 美歌は大きな声で笑いながら暴れ続けていたが、体力が尽きたのか段々と暴れる力が弱まっていく。

 そして椿は10分程美歌をくすぐり続け、ようやく美歌の体から手を離した。

「ぜえ、ぜえ、ぜえ、しんどい……」

 美歌は疲労困憊状態でベッドの上でぐったりしている。

「反省した?」

 椿は美歌に横腹に再び手を添える。

「ちょっ! まだくすぐる気!?」

「返答次第よ」

「分かったわよ……もうしない」

 美歌がそう言うと椿は小さくため息をついた。

「もう……本当に大変だったんだから」

「そんなに優衣ちゃん発情してた?」

 美歌は笑いながら座っている椿の太股の上に頭を乗せて寝転がった。

「7回したらやっと寝てくれたけど」

「わお、随分としちゃったね」

「誰のせいだと思ってるの!」

 椿は再び美歌の横腹をくすぐり始める。

「ごめんなさいごめんなさい!! だからくすぐらないでぇ!」

 先程と違って椿が美歌を押さえつけていないので美歌は転がって椿の手が届かない所へ避難した。

「今度は私が凛ちゃんに薬飲ませてあげよう」

「止めて。 凛に手を出したら椿でも許さないから」

 美歌の顔から笑みが消え、椿は小さくため息をついた。

「相変わらず凛ちゃんには過保護ね」

「私の宝物だもの」

 美歌はそう答えると寝室から出ていった。

「宝物ね……」

 椿はそう小さく呟いた。 リビングから美歌と凛の話し声が聞こえてくる。

(じゃああの作戦にはやっぱり反対するのかな……)

 椿はまたすぐ苦労する事が有るとわかり、ため息をついた。

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