白き情報
少し短めです。
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歓声が起こる中、優衣が続いてステージに立った。 周りに市街地を想定した建物が形成される。
試合開始の合図と同時に剣士の対戦相手がバウンドを足元に発動させた。 しかし優衣は落ち着いて杖を構える。
「イレイザー」
優衣が呟くと同時に対戦相手が凄まじいスピードで突っ込んできたが、優衣の放ったイレイザーはまるで盾のように優衣の前で停止し、対戦相手はイレイザーに自らぶつかり元の服装に戻った。
「弾幕!?」
「下位が扱える難易度じゃないはずでしょ……?」
再び観客はざわつき始め、優衣は嬉しそうに辰也の近くに行くと辰也は優しく優衣の頭を撫でた。
「お疲れ」
「えへへ」
優衣は嬉しそうに微笑んだ。 辰也も優しく微笑むと1試合おいてから再びステージに入った。
試合開始の合図と同時に対戦相手は杖を構えてイレイザーを辰也に向かって放った。
(魔術士は剣士の天敵。 接近しにくい上に接近しても杖で応戦される。
距離を詰めようとしても弾幕をやられたら自滅する)
辰也は剣を構えてイレイザーを防ぎながらビルの間に走り込んだ。
(……だけど辰也の相手が戦う相手で優衣以外で杖で戦える奴も弾幕を使える奴はいない。
そうだよな瞬!!)
辰也はニヤリと笑うと対戦相手がいる方向へ剣を振り抜いた。 辰也が放った風斬はビルを真っ二つにするとそのまま対戦相手に襲いかかった。
相手が攻撃に対処している間に辰也は土煙にも紛れるようにして違うビルの陰に再び隠れると連続で風斬を放つ。 再び風斬はビルを真っ二つにし、対戦相手に襲いかかった。
対戦相手はもう一度斬撃が来るとは予想していなかった様で、咄嗟に杖で防ぐと勢いを殺しきれず、ビルに激突した。
次の瞬間凄まじいスピードで前方から突っ込んできた辰也の突きを受けて元の服装に戻った。
「ビルごと切り裂くなんて……」
「何て豪快な攻撃なの……」
観客なんて気にする素振りすら見せずに辰也は再び席に戻った。
(一気に駆け上がってやる……)
辰也は楽しそうに微笑んだ。
個人での昇格戦が終わり、辰也と優衣は食堂に向かった。
「全勝だね!」
「まぁ瞬と凛ちゃんに鍛えてもらった成果が出たって感じだな」
辰也はそう言って笑うとパンを口に運んだ。 すると背後から肩に手を置かれ、辰也が振り返るとそこには瞬とツインテールの女の子が立っていた。
「よう辰也。 順調そうだな」
「あぁ。 誰かさんに煽られたからな」
辰也が笑いながらそう言うと瞬も笑いながら辰也の横に座り、瞬の横に女の子も座った。
女の子は瞬と辰也よりは幼い感じで初対面の辰也と優衣に少しだけおどおどしている。
「その女の子は?」
辰也がそう言うと女の子は立ち上がるとペコリと頭を下げた。
「私は山本心美って言います。
辰也さん! 優衣ちゃん! 明日お時間宜しいでしょうか!?」
「え?」
「ぜひともインタビューを!!」
「イ、インタビュー!?」
瞬は心美の肩を掴んで座らせると自分の携帯電話を辰也と優衣に見せた。 画面には新聞の特集の様な物が写っている。
「心美が書いてる記事だ。 学園内で人気でな。 読んでいない生徒はいないと言われてる」
「人気ってレベルじゃないな……。 大人気じゃないか」
辰也がそう言うと心美は嬉しそうに微笑んだ。
「だから今日全勝デビューの辰也と優衣にインタビューしたいんだと。 それにしてもついさっきまでおどおどしてたのにインタビューの事になると生き生きしだすな」
瞬が少しからかうように言うと心美は少し恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
「インタビューは俺でよれけば受けるよ。 優衣は?」
「優衣もお兄ちゃんが受けるなら受けるよ」
「決まりだな。 予約できて良かったな心美」
瞬がそう言うと心美は頷いて辰也達に頭を下げるとどこかへ去っていった。
「それはそうと辰也。 次は乱闘になるが次の相手にお前が戦ったことのない奴が出てくるぞ」
「戦ったことのない奴?」
「あぁ。 優衣ちゃんも戦ったことがないはずだ。 そもそも武人の説明を椿さんから聞いたか?」
瞬の問いに辰也と優衣は首を横に振った。
「武人は全身に鎧を纏って戦うスタイルの奴だ。 武が鎧を来ていたのは見たことあるだろ?」
「あぁ……そう言えば……」
「武人が使う鎧は1種類だけだ。 だから細かい事を考える必要はない。
そして鎧はアナライズにセット出来る5個ある容量の内の2つを消費する上にかなり重いんだ。 他の武器も多く組み込めなくなるから人気が低くてな。
効果はもちろん防御力の上昇だ。 受けるダメージを10分の1に抑える事が出来る」
「そんなの勝ち目が無いじゃん!!」
優衣は頭を押さえた。
「そんなことないよ優衣ちゃん。 いつもより10倍イレイザーを叩き込めばいいだけだ。
さっきも言ったけど鎧は重い。 機動力は無いと思っても良い。 バウンドには注意が必要だけどな。
それと遅くなったが武人には風斬と似た様に衝撃波を飛ばせる。 それにも注意だな」
瞬はそう言うとゆっくりと立ち上がった。
「アドバイスありがとな」
「さすがに何も知らずに負けるのは可哀想だと思ってな。 引き続き頑張れよ」
瞬はそう言うと手を振って去っていった。
「瞬さん心配してくれてたんだね」
「何気に心配性だな」
辰也と優衣は微笑みながら席から立つとスタジアムに向かった。
スタジアムの観客席に座って待っているとステージ上に看板の様な物が現れ、次々と名前が映し出されていく。 その中には辰也の名前もあった。
「頑張ってね。 お兄ちゃん」
「あぁ。 行ってくる」
辰也は優しく優衣の頭を撫でてステージに向かった。
ステージに立つと最初にアナライズを起動させることを指示され、その後に市街地を想定した建物が形成された。
(あれが武人か)
辰也は1人鎧を纏っている人物をチラリと見た。 観客も武人の人物に注目している様だ。
《ここにいる10人をランダムにステージ上に散らします。
ワープ後に戦闘開始です》
そう音声が流れた後にカウントダウンがスタートした。
《5、4、3、2、1、戦闘開始!!》
辰也は次の瞬間ビルの屋上に転送されていた。
(確か俺を入れて剣士が3人。 銃手が3人。
魔術士が2人。 そして狙撃手と武人が1人ずつ。
ってあれ?)
辰也はピタリとビルの屋上で止まった。
(俺……狙撃手の戦い方知らないんだけど……)
「ただいま」
瞬が部屋に戻ると章平がソファーの上で小説を読んでいた。 武はテレビを見ていたのか章平の横で眠っている。
「おかえりなさい。 辰也さんへアドバイスですか?」
「ちょっとだけな。 武人について少し教えただけだ」
瞬はそう言うと冷蔵庫にあるお茶を飲みながらテーブルの上にあるお饅頭を手に取った。
「それでは狙撃手についても説明したんですか?」
「…………あっ!!」
瞬の動きがピタリと止まった。 章平は驚き、思わず瞬に駆け寄った。
「どうしました!?」
「……忘れてた」
「え?」
「狙撃手の説明を辰也にしてない!」
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