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白き確率

更新が大変遅くなってしまい申し訳ございません。

読んでいただけるとありがたいです。

「相変わらず厳しいなぁ…」

 瞬はため息混じりにそう呟いた。

「怖かったよ……」

 優衣は少しだけ目に涙を浮かべて辰也に抱きついている。

「まぁあの子の言うことも分かるけどな……。 俺達はまだ入ったばっかりなのに俺は瞬に特訓してもらって、優衣は椿さんに見てもらってる」

 辰也が慰める様に優衣の頭を撫でながらそう言うと瞬は笑い始めた。

「確かに優遇されてるよな。 でもそれは辰也があの不良とやり合ったのと、金倉英里奈相手に生還したからだろ。

 学園の奴等もその位実績あれば文句もないだろうさ」

「実績って……そんなに大した事なのか? それに俺よりもっと強い奴だったら瞬と連携でもして勝てたんじゃ……」

「残念ながらあいつはそんなに簡単には殺れないな」

 瞬はそう言って辰也と優衣を連れて美歌達の部屋に向かった。

 瞬は扉の前に立つとベルを鳴らした。

「瞬から見ても……金倉英里奈は強いのか?」

「まぁ相性の問題もあるけど……本気でやったら分からない。 まだ本気で殺り合ったことねえしな」

「えっ……?」

 辰也が疑問の声を漏らした時に部屋の扉が開き、中から小さな女の子が顔を出した。

「お兄ちゃん! おはよ!」

「おはよう。 凛。 もうお昼過ぎたけどな」

 瞬は優しく微笑みながら凛の頭を優しく撫でた。

「優衣お姉ちゃんも。 辰也お兄ちゃんも、こんにちは」

「こんにちは。 凛ちゃん」

「こんにちは」

 2人とも優しく微笑みながらそう言うと凛は優衣の手を嬉しそうに握った。

「優衣お姉ちゃん。 今日も沢山バトルしようね」

「えへへ……お手柔らかにね」

 優衣は優しく凛の頭を撫でた。 瞬は部屋の中に入っていき、寝室の部屋をノックした。

「美歌さーん」

「…………ん」

 部屋の中から何やら声が聞こえ、瞬は小さくため息をついた。

「美歌さん。 凛を少し借りてきますよ。 優衣ちゃんの特訓相手として」

「…………うん」

 美歌の返答を聞いてから瞬は辰也達が待っている玄関に戻った。

「凛。 美歌さんは昨日遅かったのか? 凛は椿さんの部屋で寝たのは知ってるけど……」

「う~ん……分かんない」

「まぁ良いけど」

 瞬は靴棚の上に置いてある紐のついた鍵を取り、扉を閉めて鍵をかけると、鍵を凛の首にぶら下げた。

「ありがとう。 お兄ちゃん」

「なくすなよ。 よし、じゃあ行くか」

 凛は優衣と手を繋ぎ、辰也と瞬は2人の先を歩いてエレベーターに向かった。

「そう言えば章平と武は部屋にいるのか?」

「いや、2人ともデカイ方の訓練室にいるはずだな。 何か対戦申し込まれてたみたいだし」

「へぇ……」

「どうせなら寄り道していくか」

 4人はエレベーターに乗り、瞬は目的地の階のボタンを押した。

「それに……多分相当盛り上がってるぜ」

「盛り上がってる? 何がだよ?」

「着いたら分かるよ」

 瞬は楽しそうに笑うと、エレベーターの扉が開いた。 そこは辰也達が入学した時に自己紹介をしたスタジアムの様な場所だった。

「なっ!?」

 エレベーターの扉が開いた瞬間。 目に飛び込んで来たのは凄まじい数の人だった。 全員興奮しているのか席から立ち上がっている。

「凄い人数だね」

 優衣も観客の熱気に圧倒されている。

「えっと……あぁ、あの2人がやってんのか」

 観客達と同じ方向を見ていた瞬がそう言って辰也の方を見て下を指差した。

 辰也は瞬の横に立つと、野球場やサッカー場よりも遥かに広いステージを見つめた。

 中にはビルやら家やらが立っており、まるで市街地の様だった。 その中を縦横無尽に走り回る身を白い鎧で纏った大柄な青年と、杖を持った眼鏡をかけた少年が戦っていた。

「あれって武と章平か?」

「だな。 そりゃあ盛り上がるだろうな」

 そう言う瞬の顔も楽しそうな笑顔である。

 章平はビルの間をバウンドを使って上空に飛び上がりながらミラージュを乱射する。

 武は腕を顔の前で組むとミラージュが着弾し、武は少しだけ後退したが怯むことなく前進する。

 章平はビルの屋上に着地し、下の道路で走っている武に向けてミラージュを放つ。 ミラージュは全てそれることなく武に着弾する。 しかし武も怯むことなく前進し、ビルの中に入った。

 章平はミラージュを放つのを止め、上空に飛び上がった。 次の瞬間に章平が立っていた屋上の床に穴が開き、下からジャンプしたのであろう武が姿を現し、屋上に着地した。

 それを待っていたかの様にバウンドで上空に飛び上がった章平が武に向かってミラージュを放つ。

 武は自分で開けた穴に戻り、その武を追おうとミラージュが屋上の床を蜂の巣の様に無数の穴を開けていく。

「でもそろそろだな」

 瞬がそう言うとピーっという音がなり、ステージ内の市街地を模倣した建物は全て無くなり、武と章平も普段着に戻った。

「試合終了ってことか?」

「まぁあの2人はスタイルが違うから勝負がつかないんだよな」

 瞬はそう言うと真ん中の階段を降りていく。 観客達の眼差しが全て瞬に移動するが瞬は気にすることなくステージの近くに行き、章平と武に向かって手を振った。

 2人も瞬に気づき、観客席に上がってきた。

「瞬さん来てたんですか」

「今着いたところだよ。 まさか2人がやってるとはな」

「まぁ久しぶりにやろうって話になっただけっす」

 武は笑いながらそう言った。

「よし、じゃあ行きますか」

 瞬は章平と武を連れて辰也達の元に戻った。 観客達の視線は凛と瞬。 そして章平と武に集中していた。

(凄い人気だな……)

 辰也は横目で瞬を見ながらそう思った。



風斬(かざぎり)!」

 辰也が剣を振り下ろすと斬撃が瞬に向かって放たれる。 瞬は何の苦もない様に辰也の攻撃を回避し、そのまま辰也に向かって行く。

 瞬の手に握られた剣の形が変わり、辰也の長剣(ブレード)と同じ様な形になった。

 瞬は剣を振り下ろし、辰也は剣を水平にして瞬の攻撃を防いだが次の瞬間には瞬は辰也の背後に回り込んでいた。

「バウンド」

 辰也の足元に白い円が出来上がり、辰也がそれを踏むと辰也は上空に飛び上がった。

 しかし瞬はただのジャンプだけで辰也に追い付くと次々と剣で辰也に攻撃を繰り出していく。

「バウンド」

 辰也は床にあった白い円を消して、再び自分の足元に出すと更に上空に飛び上がり、瞬に向けて斬撃を飛ばした。

 流石の瞬も空中では身動きが取れないので剣で防いだ。 しかし剣にはヒビが入り、斬撃の勢いで床に叩きつけられた。

風斬(かざぎり)!」

 辰也はもう一度斬撃を放ち、瞬は剣でいなしながら立ち上がった。

 辰也はもう一度バウンドを発動させ、凄まじい勢いで下に立っている瞬に斬りかかった。

 瞬は後ろに飛んで辰也の攻撃を回避した。 辰也は更に床にバウンドを発動させ、瞬を追撃する。

 バウンドの勢いで瞬に突きを繰り出し、瞬は間一髪剣で防ぐが再び剣にはヒビが入る。 そして瞬は突きの威力で体勢を崩していた。

(いける!!)

 辰也は突きで腕を伸ばしたまま手首だけを曲げた。 辰也の長剣(ブレード)は床と水平に構えられる。

(瞬は体勢を崩して剣の再生の時間は無い!)

風斬(かざぎり)!!」

 辰也は瞬に向けて斬撃を放った。

「入った!」

「いや……」

 思わず声をあげた章平の横で武はニヤリと笑った。

 次の瞬間辰也は瞬に胸部を突き飛ばされ、宙を舞っていた。

「……え?」

 辰也の服装は私服に戻り、辰也は床に倒れた。

「惜しかったな。 辰也」

 瞬は笑いながらそう言うと少し安心した様に小さく息を吐いた。

「今……何したんだ……?」

「高速で動いて辰也の胸に剣を突き刺しただけだ」

 瞬は辰也の手を取ると辰也を立ち上がらせた。 そして訓練室の出口に向かって行き、章平と武も2階から降りてきた。

「突きの時に風斬(かざぎり)使っとけばいけたかもしれないっすね」

「突きの時にか……」

 武のアドバイスを聞いて辰也はそう呟いた。

「でも今回のバウンドの使い方はとても良かったですよ」

「ありがとう章平。 一応章平と凛ちゃんの動きをイメージしたんだ」

 そんな会話をしている間に瞬が自動販売機でジュースを買ってくると、それを辰也に渡した。

「頑張った賞でジュースな」

「そいつはどうも」

 辰也は笑いながらジュースを受け取ると空いていたソファーに座った。

「瞬さん割りと剣にヒビ入れられてましたね」

「確かに。 旦那が剣を壊すことに集中したらオリジン切れが狙えるかもしれないっすね」

 章平と武がそう言うと辰也はジュースを机に置いた。

「悪いんだがそのオリジンっていうのについて教えてくれないか? あんまり学園長から説明をして貰えてなくてさ」

 辰也がそう言うと瞬と武は章平に視線を移し、章平は眼鏡をクイッと上げてから説明を始めた。

「オリジンとは稀に人間に宿るエネルギーの様な物です。 確率は約300人に1人程度です」

「よくゲームとかである確率よりかはいるみたいだな」

「その通りです。 しかし問題なのは年代です。

 オリジンは10歳から20歳の間に一回でも使わなければ消滅します。

 つまり選ばれし人間が全員20歳を越えており、オリジンを使った事が無ければその人達はオリジンに目覚めた人「だった」と言うことになります」

「一回でも使えばオリジンは消えないのか?」

 辰也がそう言うと章平は頷いた。

「約500人の中から選ばれし若い人を見つけ出し、その少ない人の中から共に戦ってくれる人を探す。

 特に最後の共に戦ってくれるかと言うのが難題です。

 ただでさえ現実的ではない話の上に相手は今話題の殺人鬼。 ほとんどの人が首を横に振ります」

「なるほどな……。 それでさっき武が言ってたオリジン切れって言うのは?」

 章平はチラリと武の方を見たが武が目をそらしたので章平は自分で説明を続けた。

「オリジンもエネルギーの様な物なので使えば無くなります。 そして体力などと同じ様に時間と共に回復します。

 武さんが言っていたのは瞬さんが剣を直す度にオリジンを消費するのでその内剣を再生出来なくなると言うことです」

「そう言うことっす」

 章平の説明の終わりに武は頷いてそう言った。

「なるほどな」

「まぁとりあえず明日から始まる昇格戦に向けての実践経験は十分だろ。 それにそれぞれのスタイルに対する戦い方も覚えてるだろ?

 明日の辰也達の昇格戦は午前中から始まるはずだ。 今日は優衣ちゃんとのお楽しみの時間は取っといて早めに寝ろよ」

「何がお楽しみの時間だよ」

「そりゃあ夜に男女が2人でベッドの上ですることと言ったら……」

 辰也は瞬に手刀を振り下ろした。 見事に瞬の脳天を捉える。

「いってぇな!!」

「自業自得だ」

 辰也がそう言うと武と章平は楽しそうに笑った。



 優衣と凛とも合流し、辰也と優衣はエレベーター内で4人と別れた。

「いや~久しぶりに見たっすよ。 兄貴の超速(サード)

「本当ですね。 金倉英里奈に使ってたのが高速(セカンド)だったのに」

 章平と武がそう言うと凛は驚きの声をあげた。

「えっ!? じゃあお兄ちゃんは金倉英里奈と戦った時は本気じゃなかったの!?」

「まぁ辰也達の救出が最優先だったしな」

 瞬はそう言って扉の開いたエレベーターから降りると美歌の部屋に凛を送り届けてから章平と武と共に部屋に戻った。



 いつも通り辰也達は部屋に戻ると優衣が先にお風呂に入り、その後に辰也がお風呂に入った。

「お兄ちゃん!」

 優衣はベッドに座った辰也の膝の上に座ると辰也の体を抱きしめた。

「どした?」

 辰也は優しく微笑みながら優衣の頬に優しく触れた。

「今日は瞬さんに勝てた?」

「あとちょっとだったんだけどな……」

 辰也はそう答えて少し肩を落とした。

「優衣も中々凛ちゃんに勝てないよ……。 攻撃は当たるようになってきたんだけど」

「お互い発展途上だな」

 辰也はベッドに寝転ぶと優衣も辰也に合わせて辰也に覆い被さる様にうつ伏せになった。

「お兄ちゃん……」

「今日も一緒に寝よ? か?」

「えへへ。 流石お兄ちゃん」

 優衣は嬉しそうに笑うとぎゅうぎゅうと体を辰也に押し付ける。

「優衣……お前今日も下着……」

「寝るときは着けないことにしたの」

 優衣はそう言って辰也の腕を胸の間に挟むと辰也に寄り添って頭を辰也の胸の上に乗せた。

「挟むなってば」

「う~ん。 確かにお兄ちゃんにぎゅーってしてもらってた方が寝れるかな」

 優衣は辰也の腕から手を離すと自分の体の後ろに辰也の腕を移動させ、手を腰辺りに乗せた。 辰也は仰向けに寝て寄り添う優衣を更に抱き寄せる様な感じになった。

「満足?」

「ちょっとくすぐったいかも……」

「撫でられると?」

 辰也が優しく優衣の腰回りをなで回すと優衣は堪らず体をくねくねと動かした。

「お兄ちゃんくすぐったい!」

「そう言えば優衣とは明日戦うことになるのかね」

「どう……きゃっ、なんだろ……ひゃん、うね……」

「……え?」

「お兄ちゃんこちょこちょするの止めて! しゃべれないからぁ!」

 優衣がそう言うと辰也は優衣の腰から手を離して優しく優衣の頭を撫でた。

「椿さんから何も聞いてないのか?」

「うん。 当日に発表されるって」

「気にしても無駄ってことか」

 辰也はそう言って大きな欠伸をした。 優衣もつられた様に小さな欠伸をすると辰也の体に自分の体を寄せた。

「おやすみ。 お兄ちゃん」

「おやすみ。 優衣」

中間テストで執筆が中々出来ずに更新出来ませんでした。

これからも受験勉強等で更新が遅くなってしまうかも知れませんが気が向いた時に見ていただけるとありがたいです。

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