白き雷光
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男子生徒が剣を辰也目掛けて振り下ろしてくる。
辰也は剣を水平にして男子生徒の剣を防いだが、がら空きだった腹部を蹴り飛ばされた。
「ぐっ!」
ごろごろと辰也は地面に転がった。 しかし痛みは全くなく、辰也は直ぐに立ち上がった。
「みんな! 辰也君と優衣ちゃんを守るんだ!」
周りにいた生徒達がおもむろに変身を始め、銃を持った生徒達は辰也を蹴り飛ばした男子生徒に向かって発砲し始めた。
「退いてろ! 雑魚が!」
男子生徒が剣を振ると剣の軌道に沿って青い線の様な物が飛んでいき、生徒達に当たると生徒達は吹っ飛び、元の服装へ戻った。
「あれが風斬か……」
「は? 知らねえとか論外だろ」
男子生徒はそう言って再び辰也に襲いかかった。 しかし辰也の前に剣を持った生徒達が立ち塞がった。
「雑魚は退いてろっつっただろ!」
男子生徒は辰也を守ろうとした生徒達の胸や顔を剣で切り裂いた。
斬られた生徒達は怪我は一切していないが服装が元に戻り、剣も消えていた。
(ダメージを食らうと装備が消えるのか?)
辰也はまだ良く分かっていないアナライズに戸惑っていたがそう結論づけて男子生徒の攻撃を剣で防いだ。
「とっとと負けろよ……!」
「そういう訳にはいかないな……!」
「あっそ!」
再び男子生徒は辰也を蹴り飛ばした。
「うざいんだよ」
男子生徒はそう言って優衣の元へ歩いていく。
「風斬!」
辰也は男子生徒に向かって剣を振り抜いた。 辰也の剣の軌道に沿って青い斬撃が飛んでいく。
「うざいんだよ!」
男子生徒も同じ様に斬撃を放つと辰也の攻撃を相殺した。 その隙に優衣と辰也は駆け寄り、優衣は辰也の後ろに隠れた。
「優衣に手を出すな」
「あ? お前うざいな」
男子生徒はイラついた表情で辰也を睨んだ。
「力の差を分からしてやろうか?」
そう言って男子生徒は辰也に歩み寄っていく。
「喧嘩売ってんのか!」
男子生徒はそう言って辰也に剣を振り下ろした。 辰也は先程と同じ様に防ぐが次々と男子生徒は剣で攻撃を繰り出してくる。
頭を狙ってきたかと思えば軌道を変えて肩を斬られ、胸を狙ってきたかと思えば右腕を斬られた。
「頭と胴体以外なら簡単には消えねえからな!!」
男子生徒はそう叫んで辰也の手足をいたぶる様に剣で攻撃を加えている。
「くっそ……!」
辰也が優衣を庇いつつどんどん下がるしかなくなっていた時に男子生徒に向かって白い球体が飛んで来て、男子生徒は辰也から離れた。
辰也が白い球体が飛んで来た方向を見るとそこには先程やられてしまった生徒達が銃を構えている。
「ここは訓練室。 やられても直ぐにまた戦える!」
「邪魔すんな雑魚が!」
男子生徒が再び剣を振り抜くと生徒達は吹っ飛び、再び元の服装へ戻ってしまった。
「お前も邪魔!」
男子生徒は三度辰也に襲いかかった。 辰也も応戦するが男子生徒の方が遥かに剣の腕前が上で勝負は明らかだった。
「おらぁ!」
男子生徒の突きが辰也の胸元を捉えた。
「がはっ!」
《ダメージ超過。 装備が消失します》
アナライズから音声が聞こえるのと同時に辰也は元の服装へ戻り、床に転がった。
「お兄ちゃん!」
優衣は辰也に寄り添った。 怪我がないか確認しようとしているのか優衣は辰也の体をペタペタと触った。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「一応な……」
男子生徒がこちらに歩み寄って来るので辰也は優衣を背中に隠す様に立ち上がった。
「やっぱりかわいいなその子。 ヤりがいがありそうな奴じゃん」
男子生徒の笑みに優衣は思わず辰也の服を握りしめた。
「お前なんかに優衣を渡すか」
「だからお前は関係ねえ!」
男子生徒は剣を振りかざしてこちらに向かってくる。
(何度でも戦えるんだよな!)
辰也は先程の生徒達の言葉を思いだし、アナライズに指を置いた。
今度は掛け声無しでも服装が変わり、手には長剣が現れた。
「バウンド」
男子生徒がそう呟くと床に垂直になる様に白い円状の物が男子生徒の足元に現れた。
男子生徒がそれを踏むと凄まじい速さで突進し、辰也の胸元を突き飛ばした。
「なっ……!?」
《ダメージ超過。 装備が消失します》
辰也は元の服装へ戻り、少し離れた場所に倒れた。
「お兄ちゃん!」
優衣は辰也の元に駆け寄ろうとしたが男子生徒が優衣の肩を掴んだ。
「おら来いよ」
男子生徒が乱暴に優衣を引っ張ると優衣は男子生徒を突き放した。
「お兄ちゃん以外なんて嫌だ!」
「あ? うるせえよ!」
男子生徒が拳を振り上げた瞬間に男子生徒に向かって青い斬撃が飛んで来た。
男子生徒は後ろに跳んで回避し、斬撃が飛んで来た方向を見るとそこには辰也が立っていた。
「いい加減にしとけよ雑魚が……!」
「黙れ。 優衣に触んな」
「黙れ? 誰に向かって言ってんだ!」
男子生徒が辰也に向けて剣を振り下ろそうとした次の瞬間。
「おい!!!!!」
誰かの怒声が響き渡り、全員の動きが止まった。
「瞬……!」
訓練室の入り口に立っていたのは先程エレベーターで会った早川瞬であった。
「何してんだてめえ」
瞬はそう言って男子生徒を睨みながらこちらに歩み寄ってくる。
「は? てめえには関係ねえだろ」
「黙って俺の質問に答えろ。 辰也と優衣ちゃんに何してんだ」
「うるせえな……。 この女貰おうとしたら邪魔してきたからボコっただけだろ」
「ふざけんなよ不良が。 辰也は今日来たばっかだぞ」
「それなら俺だってまだ1ヶ月ですけど!?
それなのにランキング15位の天才様ですけど!?
何か文句あんのか!?」
男子生徒の言葉に瞬はため息をついた。 瞬は辰也の手を取り辰也を立ち上がらせた。
「大丈夫か辰也?」
「あぁ。 ありがとう瞬」
「さてと」
瞬は再び男子生徒を睨み付けた。
「変わりに俺がお前と戦ってやるよ。 みんなの様子みた感じ全員を相手してたんだろ? 一人増えるだけだ」
「変わりに? お前だったら何とか出来るってか!?」
「あぁ。 何本勝負が良い?」
「俺の気が済むまでかな……。 それかてめえがこの女渡すって言うかだ」
「分かった」
瞬はそう言って左腕に着けているアナライズに指を置いた。
「剣士の装備を展開。 戦闘を開始するぜ」
瞬の服装が辰也達と同じ白いブレザーとズボンに変わっていく。
「準備は良いか?」
瞬の手には剣の柄が握られていた。 瞬はそれをまるで子供がおもちゃで遊ぶかの様にくるくると回しながら男子生徒にきいた。
「てめえこそ良いのかよ!?」
そう叫びながら男子生徒は剣を振りかざした。
次の瞬間瞬は男子生徒の目の前に立ち、男子生徒の胸元を短剣で突き飛ばしていた。
「え……?」
男子生徒の体は宙を舞い、服装は元に戻り床をごろごろと転がった。
「まだ気は済まないよな?」
瞬はそう言って余裕そうに構えている。
「てめえ!」
男子生徒の服装が再び白色の服装へ変わり、瞬に襲いかかったが瞬は一瞬の内に男子生徒の背後に回り込み、短剣で背中を切り裂いた。
男子生徒の服装は再び元に戻り、床にうつ伏せの状態で倒れた。
「どうした? 天才様じゃなかったのか?」
「くそ!」
男子生徒は再び変身すると剣を瞬目掛けて振り抜いた。
しかし剣を振り抜いた時には既に瞬は男子生徒が剣を振った反対側に立っていた。
男子生徒は今何が起こっているのか全く理解できておらず、それは辰也と優衣も同じだった。
「て……めえ!」
男子生徒は次々と瞬に斬りかかるが剣は瞬に掠りもせず、たまに瞬がため息混じりに突き出す剣が男子生徒の胸元か首や頭に当たり男子生徒の変身が解除されるだけだった。
「すげえ……」
辰也は思わず声を漏らした。 それは辰也の正直な感想だった。
「もう気は済んだか?」
瞬は地面に這いつくばった男子生徒を見下しながらそう言った。
「まだだ……! お前が負けるまで……!」
「はい、ストップ」
そう声が聞こえ、辰也達が振り返ると訓練室の入り口に椿が立っていた。
「椿さん……」
「瞬君ちょっとやり過ぎよ。 辰也君達をいじめるような行為に腹が立ったのは分からないわけじゃ無いけど」
「まぁ俺の気は済みましたが」
瞬はそう言ってアナライズに軽く触れると瞬の服装が元に戻った。
瞬の後ろで男子生徒は無言で立ち上がると訓練室から出ていった。
「良いんですか? 椿さん」
「そりゃ瞬君がボコボコにしたあと私が何か更に言ったら可哀想でしょ」
椿は優衣の元に駆け寄ると優しく抱きしめた。 優衣も甘える様に椿に密着した。
「ごめんね遅くなって。 怖かった?」
「うん。 凄い怖かったけど……お兄ちゃんと瞬さんが守ってくれたから」
「本当にごめんね。 辰也君も大丈夫?」
「瞬と皆のお陰で大丈夫ですよ」
辰也がそう言うと瞬は辰也の背中を軽く叩いた。
「やめろ辰也。 照れるだろ」
「本当の事を言ったまでだよ」
辰也は笑いながらそう返した。 それにつられる様にして周りの生徒も笑い始めた。
「そう言えば瞬君。 美歌が貴方の事を探してたわよ」
「またすか……。 どうせ凛の世話だろうな……」
瞬はそう呟いて辰也達に別れを告げると訓練室から出ていった。
「それにしても瞬は強かったです。 あの不良をボコボコにしてましたし」
「まぁあの子は相当強いよ。 相手の子も強いけど瞬君の前ではね。
辰也君と優衣ちゃんはランキングの話はみんなから聞いた?」
「あ……確かポイントを取り合ってどうのこうの」
辰也がそう言うと椿は頷いた。
「その通り。 さっき辰也君達がやったように戦ってポイントを奪い合うの。
最初は500ポイントから始まるからね」
「最下位からですか?」
優衣は椿に抱きしめられたまま顔を上に上げてそうきいた。
「ん~。 下から30番目位かな。 全員で300人位いるけど」
「じゃあさっきの奴15位って……」
「かなり上位だね。 でも知っておいて欲しいのは上位7人の事よ」
「7人?」
優衣は首をかしげ、椿は優しく優衣の頭を撫でた。
「そう。 上位7人は他の生徒達とはひと味違う子達なの。
生徒達の間では「七人の白き暗殺者」なんて呼ばれたりもしてるわ」
「じゃあまさか瞬も……」
辰也がそう言うと椿は頷いた。
「早川瞬。 暗殺者ランキング4位。
「白き雷光」の異名を持つ子よ」
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