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始まり‐ナンパ

  ◆


 町にはすでに、たくさんの人がいた。さまざまな場所で意見を言い合い、情報を交換し合っている。戸籍登録制なのでネカマなどはいないのだが、珍しいことに素で男女比が1:1だった。このゲームは、女性の間でも人気が高いらしい。

 ……先ほどから俺が歩くと他の周りの奴ら(とくに男)が見てくるんだが……。いや、気のせいだ。気のせいだと信じよう。俺の思い違いに決まっている。

 と俺が頑張って自己暗示をしていた矢先。


「お嬢さん? 私とパーティを作りませんか?」


 等と言うキザ野郎にナン……パーティ申請された。


「いえ……こちらは一人でする予定ですので……」


 俺の口から、地声より数トーン高いきれいなソプラノの声が出てくる。


「で、ではお名前だけでもお聞かせ願いますか?」

「……レイです」


 俺はぼそっと告げる。

 レイとは、俺が小さいころ好きだったシル○ーズ・レイリーと言うキャラクターの愛称だ――レイさんと呼ばれていた――。故に男の名前と言う印象が俺の中にはあるのだが、それを知らない人から見れば、レイと言う名は女とも取れる名である。ましてや外見がこんな状態であれば。

 兄貴は俺がこの名前を使うことまで考えていたのか。確かに、レイ、だと外見にも似合っているが。


「レイさんと言うのですか。私はハリツと申します。いつか機会があればご一緒に」

「はい、機会があれば(絶対ないけどな)」


 俺が裏で黒い顔をしていることに全く気が付かず、その青年は去っていった。これを、少し面白いと思ってしまったのも、兄貴の策略だろうか。考えすぎな気もするが、違うと断言できない所がつらい。

 ネカマは案外面白いのかもしれない。


 少し露店を覗きつつ、大広場に着いたのは三分前だった。

 すでに多くの人がいて、移動するのも一苦労である。十五万人はだてではなかった。

 大広場にあるベンチに座る。いやはや、この光景に年甲斐もなく興奮してしまう。だがそれはこの場所にいる全員に当てはまることだった。


 ――皆が笑顔で、楽しげに笑っている光景――


 いよいよ六時までのカウントダウンが始まり、数が少なくなるにしたがって、声が大きくなってゆく。

 ボルテージがマックスになる中、カウントダウンが0を示す。

 一斉に花火が打ちあがり、噴水が大きな広場の端まで届くような水の塔を作り上げる。

 そして広場のど真ん中に存在する鉄塔の上に、一人の人影が見えた。遠くからでもよくわかる。俺の兄、松原郷だ。彼の登場にプレイヤー全員が沸き……そして、ゲームが終わった。


「どうも。このゲームの製作責任者、松原郷です」

 あいさつに歓声が沸く。

「ええっと、突然ですがここで重大発表があります」

 当たり前だが、ここでプレイヤーは皆どよめいた。

 そのあとの言葉の重みも知らずに。


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