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過ごし方

 代表が戻って来られて、2杯分のドリンクをトレーに乗せて持ってきた。私のハイボールと烏龍茶のようだ。四角のガラスコースターを丁寧に置きその上にシュワ~と音を立てたハイボールが目の前に。

「山下様、大変お待たせ致しました、ご希望になられたジムビームハイボールです。追加も可能ですのでご希望ならお申し上げください」

「はい、頂きます」

 グィっと三分の一を呑み、爽やかな炭酸が胃の方に流れ込むと頭の先から落ち着くのが分かった。グラスを置くと、ふぅ~と息を吐き少しばかり冷静さを取り戻した。

「落ち着きましたか」

「はい、いやージムの割り方、炭酸のキレ美味いです」お世辞で早く本当に美味い

「ありがとうございます。そう言って貰えると嬉しいですね」

そう言いひと呼吸置いてから

「では、当店の詳しい詳細をお伝えさせて頂きます。えーこちらはリラックスできる場とお伝えしましたが、当店は5つのコンセプトが違うお部屋をご用意し、そこで過ごしていただくだけで、気持ちも身体もリフレッシュ出来るという流れです。そこの部屋で過ごしていただくためには5時間7千円飲み放題付、完全予約制となります。5つの部屋はセキュリティも備え付けております」

早口にもならずに、丁寧に説明していただいたので何となくは理解した。

「なるほど、そういうシステムなんですね。ということは、私以外にも結構こちらに来られる方は多いということですか?」

「んーそうとは言い切れないです。何故かと言うと、皆が皆お悩みを深く持っている方は少ないものです。あ、変な意味ではなく、少なくとも小さなお悩みを持つ方のほうが圧倒的に多いですね。」

「そうなんですね。・・・・確かに、絶対とは言えないものの悩みを持つ方はいそうですね」

 確かにそうだ。多分悩みを抱えてない人のほうが相当少ないはずだ。ちなみに私も今、生きるうえで悩みストレスを抱えているのだけれど・・、そういう事を相談出来るのかな。


「もう少し詳しく説明すると、その5時間は寝ていようが、本を読んでようがお好きにお使いください。冷蔵庫も備え付けておりますので、食材を買いその場で料理したり、お酒のんだりも可能です。又、BARもございますので、そちらで何杯呑まれても追加料金は徴収しませんのでご安心下さいませ」

「へーいいですね。よく言われる日帰り施設的なことなんですか」

「はい、山下様がおっしゃる通りです。ここは日常から切り離して気持ちをリセットするリラクゼーション施設です。ただ、少しばかり心理的視覚等を通じて外的内的な面を我々はサポートさせて頂きます」

「そうなんですね。・・・ちなみにこの様な施設は数多くありそうなのに、何故田舎や避暑地等でやらなかったんですか」

 私はこう質問した。確かに、このようなところはそうそうある訳ではないが、気になる。イメージとしては、軽井沢や温泉が湧く場所又は都会から離れた所が多いと思っている、昨今の世情が影響しているのだろうか。とここで代表が、

「今のやり方ですね。多分昔なら避暑地や田舎とかが候補になるのかもしれないですが、時代に合わせた形ですので、駅近が主流です」

「そうなんですか。そうゆうもんなんですね」

「えぇ、細かい経緯はお伝えしかねますが、ここでは自由にお過ごし下さいませ。といった感じになりますが、山下様、如何なさいますか」

 正直、迷っている。金額の問題や怪しさではなく、良いと思いつつも決断しかねている自分がいる。昔からそうだ。頭ではこうしたい、この方が良い、というのを考えているが、言葉に出せない。それで、告白出来ず駄目になった人もいれば、大学のゼミで皆で考えた研究でも私の案を伝えていればコンクールでも上位になったんではないか、等つい考えてしまう人なのだ。

「お考えになられている最中だと存じ上げますが、山下様の最良のご検討で構いませんのでごゆっくりお考え下さい。後、こちらの、アンケートをご記入頂ければと思います。ご記入頂きながら整理されるのもよいかと思います」

と言いながら、一礼し席を外し

「ご記入を終えましたら、一声お掛けください。あっ、お飲物のお代わりは如何でしょうか」

「はい、かしこまりました。・・えー、同じ物を貰えますか」

「承知致しました、後程お持ち致しますね」

と言って席を離れられた。


 このアンケートは良く街で行う様なものより何かしらの適性検査といったありふれた内容のようだ。氏名生年月日住所、他には好きなことや数字色、食べ物などなどごくごく普通のアンケートではないか。そう思いながら、書き進めていた時、ふと思い出した。そうだ!あの缶の数字や色は味などは何なんだろう、と。そう思っていた時

「山下様、お待たせいたしました、ハイボールでございます」

「ありがとうございます、頂きます」

 グラスから、カランと氷が少し溶ける音がした。私は、この氷も生きていると感じる音か好きだ。この音に限らず、その時時の効果音や生活音を聴くとこの世界で生きている実感を感じる。ハイボールを手にしシュワシュワと炭酸の弾ける音も聞こえ、又爽やかさを感じた。やっぱり美味いなと心の中では思った。こんなにお酒が美味いと感じたのはそうそうないので変な気持ちになっていることだろう。そんな風に思いながらアンケートを記入していた時、最後の回答に、※何番の何色をご購入されましたか?※と、私が聞きたかった事の回答だ。質問は後にして、7で黄色と記入した。

 書き終えて、ハイボールを呑みながらアンケートの改めて見直しながら、考え込んだ。

「山下様、如何でしょうか?アンケートはお書き頂きましたでしょうか」

「はい、書けました」

「ありがとうございます。確認させて頂きます」

記入した用紙を渡して、代表はふむふむと言った感じで見ている。そして、確認し終えたようで

「ではお聞きいたしますが、ご予約はご決断如何でしょうか?もしまだ迷っておられるのであれば、決められた後で先程お渡し致しました名刺の携帯番号へお掛け頂ければ幸いです。その際は私共が山下様がリフレッシュ出来る様に、全面的にサポート致します」

「ありがとうございます。ただ一つ気になることがありまして」

「はい、何でしょうか?・・推測するに、缶の事でしょうか」

「はい、その通りです」

やはり、この人は私の思考と行動を読んでいるのか?ということは、やっぱり怪しいのか、

「ふむ〜、やはりまだまだ腑に落ちていない感じですかね〜」と少し首をひねりながらそう言っている

「あのーすみません、悩ましてしまい・・・。えー怪しい所や人だなって言うことは思っていないのですが、ドリンクの数字や意味が気になりまして。あっ、意味じゃなく色のことです」

「ふんふん、なるほど、そちらでございましたか。ドリンクの事ですね、後程お話しする予定でしたが、改めてご説明致しますね」

「はい、お願い致します」

「私共は、心理学を通じてお客様のお悩みを取り除くといった事も行わせて頂いておりまして、それを活かすために試行錯誤しながらサポートしております。その一つとして、自販機にてその方の今の心理状況が分かるといった感じです」

 分かりやすく且つ、丁寧に話していただけた。何となくは理解したが、まだピンときていない。

「ということは、占いの館みたいな、タロット占い的なものですか」

「ま〜俗に言うとそうなりますね。日本では易や五行陰陽説、誕生日、世界に目を向ければタロットや西洋占星術、手相や風水などなど数多くのやり方で人々の背中を押す事を行っており、占い好きな方々、行う方々が増えてきているのは確かです」

「星座占いなどは嫌いではないです」

 いつも、朝や昼またはスマホニュース等でいつも確認している。それと、占い師がテレビやメディアに出ない日見ない日はない。それ位目につくので少なからず信じている自分がいるのは確かだ。

「山下様の対応から、その様に感じておられるのは見受けられました。なので端的に説明すると、こちらDDでは、数秘術や色彩で心理を出す占いを行い、その方々に合わした空間をご用意し、リフレッシュして整えて頂く所になります」

私はうなづきながら心の中では、なるほどと思っていた。

「そして、今回、山下様がお選びになったのは7の黄色、天然水であり、最初に選んだのが今の気持ちを表しております。それが自然と反映しインスピレーションで気になる様に感じたのではないかと、または単に好きな数字と色をお選びになられたのですか」

 今は代表の話を聞いているが、所々当たっているフシがあるので少し気味が悪いが、それでも気になるほうが強い。

「はい、7は誕生日の数字で、黄色は最近ネットで見た占いで今年のラッキーカラーだからですね。その―何か気にするや好きなという感じではなく、気になったからかもです」

「なるほどなるほど、・・特段この数字や色に特別感は無いということで間違いないですか」

「えぇ、そう・・ですね」

何度か頷きながら

「では、最終的なご返答はお聞き致しますが、当店で色々と解決、気持ちをリフレッシュしてみませんか。今なら明後日のお部屋は何部屋か空いておりますが・・」

 最終的な判断として、入ってみたい。そして、今よりも自分を変えたい、いや前に進めれは何か変わるかもしれない。私は話を聞いている最中には決めていたのかもしれない。

「はい、是非お願い致します。明後日は特に用事は入っておりませんので」

「ご決断頂きありがとうございます。では明後日なのですが、先程お伝えした通り、5部屋あるのですが、13時の部と19時の部があり、現時点では13時の部のみで3部屋空室でございます。恐れ入りますが19時の部は全て埋まっております」

「あー、そうなんですね。・・・13時の部で構いません、お願い致します」と座りながらお辞儀した。

「かしこまりました、13時からで1部屋、押さえておきます。それでは当日は、10分前までにお越しくださいませ。使用料は当日頂戴致します。それとお持ち物はご自由にご用意して頂くことになりますが宜しいでしょうか?」

「はい、了解致しました」

「ありがとうございます。当日お越し頂くのを楽しみにしております。所で、ドリンクのお替りは如何でしょうか?」

「あっ、じゃー同じ物を」

「承知致しました」

 何とか決まってホッとした。最初はめちゃくちゃ悩んだが、少なからず不安は解消されたので、良しとしよう。

 そして追加のハイボールも美味しく頂き、明後日宜しくお願い致します、と言いここをあとにした。当日は、ゆっくり休めるだろうか、などなどを考えながら帰路についた。

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