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端原中央帝国における「永続的官僚」の肖像 —飛竜院諸方と閣府政治の変遷、および豪政政権への止揚—

【要旨】 飛竜院諸方は、端原壮真・洞真・豪政という三代の神王交代劇において、常に閣府の中枢に留まり続けた稀有な政治家である。彼は「情報の独占」と「秩序の裁定」を武器に、血みどろの政変を生き抜き、最終的には新興勢力である端原豪政の権力基盤を法制・人事の両面から規定する役割を担った。本稿では、彼の行動原理が「特定の主君への忠誠」ではなく、「閣府という官僚機構の存続」に置かれていたことを論証する。


一、 閣府の再編と諸方の台頭——秩序の守護者として

諸方が政治の表舞台で決定的な役割を果たし始めるのは、7月7日の陰陽両閣再編である。彼は陰閣議員として就任し、管理局倫春(政務代行)の下で実務を掌握した。 彼の政治的性格が露呈した最初の事例は、林原政文の内乱処理に関する告発(6/6)である。同僚の安念常正が沈黙を守る中で、諸方は政文の独断処罰を倫春にリークした。これは正義感ゆえではなく、「中央の許可なき私刑」という秩序の逸脱を許さないという、徹底した中央集権的官僚の思考の現れであった。


二、 皇位継承紛争と「洞真派」への加担

端原壮真の崩御(3/21)前後の諸方の動きは極めて機敏である。彼は壮真の枕元に召された四名の重臣の一人であり、密葬(3/26)を差配した。 その後の継承争いにおいて、彼は当初「先代の遺志」を掲げる横田宗真と行動を共にするが、4月10日の政変(端原御所の惨劇)では、一転して洞真派に合流し、逃走する宗真を嘲笑う側へと回った。同伴の常房茂博を自らの手で斬った(あるいは斬らせた)事実は、彼が「勝者への帰順」をためらわないリアリストであることを示している。 洞真即位後の諸方は、陰陽両閣を横断する重要閣僚として、印刷台府(豪政)への干渉を強める洞真・繁賢体制の「実務の鍵」を握ることとなった。


三、 蒼佐繁賢との相克と「豪政受容」の転換点

諸方の政治史における最大の功績(あるいは転換点)は、独裁を強める蒼佐繁賢の排除である。 9月に入り、繁賢による閣僚の大量追放が始まると、諸方は自らの地位を脅かす繁賢に対して牙を剥いた。彼は追放された端原能真らの便宜を図り、端原谷春を動かして「御前閣議」をセットアップし、繁賢の追放(9/20)を決定づけた。 特筆すべきは、繁賢派を炙り出すための「偽作召集書」の頒布(9/21)を主導した点である。これにより、彼は閣府内の不純分子を一掃し、自身が「閣府の意思」そのものとなる独占的地位を固めた。


四、 端原豪政との関係——「人事官」としての調停と終焉

10月7日、印刷台府を率いて中央に入った端原豪政に対し、諸方は「抵抗」ではなく「制度による包摂」を選択した。


権力の移行: 諸方は豪政を玉座に先導し(10/9)、即位式の体裁を整えた。


官吏改革の主導: 10月11日、諸方は豪政より「人事官」に任命され、大規模な人事刷新を断行した。これは、印刷台出身の武功派(長池怜、培良昌之ら)と、中央の旧官僚層を融和させるための高度な政治工作であった。


戦犯処理の論理: 10月15日の閣議で、豪政が西海の役の戦犯(安念修身ら)の減刑を求めた際、諸方は「明確な戦意があった」と断じてこれを一蹴した。これは、新王の個人的情愛を「法と理屈」で掣肘する、官僚組織の意地を見せた場面といえる。


五、 結論:コンソメ民排斥と人事官罷免の意義

諸方の政治生命に影を落としたのは、11月19日の「緑川一族」との衝突であった。名門意識の強い諸方は、実力で恩賞を求める緑川隼忠ら(コンソメ民出身者)を激しく罵倒し、閣府出禁とした。この「階級的偏見」が緑川氏の乱を招き、結果として11月28日、諸方は人事官を罷免されるに至る。


しかし、彼の罷免後も「コンソメ民を新規閣僚に登用しない」という原則が可決された(11/27)事実は、諸方が身を挺して構築した「端原氏と旧名門官僚による排他的統治構造」が、豪政政権の背骨として定着したことを意味している。 飛竜院諸方は、血筋を重んじる旧世界の論理と、端原豪政という新時代の力の狭間で、閣府の「形式」を守り抜いた。彼こそが、端原中央帝国を「軍事集団」から「官僚国家」へと変質させた真の設計者であったと言えよう。

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