証明された
「どうしてまだ、なにも連絡がないの?」
イライラと私の前を歩いている。
それもそうね。
19日に雨は降った。
そして、今日が誕生日。
でも、まだ連絡がない。
それがとてもイラつくようで。
「当たったのに。雨降ったじゃない!」
「仕方ないだろ。あちらが、26日にも降るかもしれないのだから、っていって先延ばしにしているのだ」
「でも! おめでとうぐらいあってもいいと思うの! 私は王妃なのよ!」
ヒステリックに叫んでいる。
私は王妃をしらないけれど、こんな風に叫ぶのかしら。
と思っても、顔には出さない。
機嫌を損ねたらより面倒に叫ばれるから。
「まぁ落ち着きなさい。あと、数日なのだから」
宥める父親の声が、気持ち悪いくらい猫なで声。
……あぁ。お社の掃除がしたい。
あそこは、心が落ち着くし、より鮮明に未来が見える気がする。
ーーーーーーー
「あちらは怒ってないだろうか」
不安そうな顔をして、ため息をついている。
「しっかり書に記されていたではありませんか。過去にも神子を名乗り、謀ったものがいたと。正しき神子でなければ意味がないのです。公平に、正確をきすために、必要なことです」
頭をさげたまま答える。
「しかし、誕生日だ。これまで何度も当てている。先視の神子であることは確実であろう?」
「これまで、なんの交流もないのです。いきなり、その年になったからと連絡がきても、困るのでは? これから先、ずっと伴侶としてそばにいるのですから、慌てずともよいかと。それに、アオバの民にとって、神子は特別です。慎重になるべきかと」
それらしいことをいって、笑ってみせる。
「それもそうだな。あちらに嫌な顔をされるのは避けたいところだ」
19日に雨が降ったことで、恵みの雨だと民は喜んでいた。
すぐさま、呼び寄せようとしたところを、俺は止めた。
神子を迎えるための宴もなにも準備ができてないとか適当にいって。
「28日に、お呼びし、盛大な宴を催し、王妃として迎えましょう。そのほうが、あちらも、準備をしてくれていたとわかるでしょう」
神子の証明の儀式はない。
あるのは、これまでの蓄積のみ。
身内のみでの受け入れであり、民は神子であることは、あまり認識していない。
「アオバの神子をこちらは特別視していることを、理解いただき、アオバと王族が友好関係を築けていることを、示すのも大切なことです」
けして、アオバの民が反乱など起こすわけないことはわかっているが、長く神子は不在だったため、より神格化されている。
「王族でも貴族でもない方が王妃になるのです。後ろ楯と考えてはどうでしょうか」
神子のことは民の中で噂程度にはなっている。
だから、大々的に示すことで、民からの信頼という、後ろ楯を持つことで、王の立場を守るのだ。
とか適当にいってみる。
それを鵜呑みにして。
「おまえは、王妃のことも思ってくれているのだな」
嬉しそうに笑っているが。
正直どうでもいいところはある。
だれが神子であれ、俺はどうせ、離れる。
中途半端に王位継承権があると、まわりの目が痛いし、担ぎ上げられても面倒だ。
俺はあの子に会えたらそれでいい。
年齢的に神子と大差ないはずだ。
そうなれば、お付きとしてついてくるかもしれない。
また会えるかもしれない。
話せるかもしれない。
ここで会えなくても、俺は森にいく。
必ず探す。