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甘いメル  作者: Caamy
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鎖の重み

【R15】本作は15歳以上推奨です。



第2章 - 鎖の重み


時間が過ぎ、俺は大人になった。


昔は泣き虫で、ガリガリに痩せたガキだった。


骨と皮だけの体で、頭の中はいつもぐちゃぐちゃだった。


でも今は違う。筋肉もついて、体つきも少しはマシになった。


頭の中の混乱は…まだ解決してないけど、それは仕方ない。


ゴーストは冷たいわけじゃない。


ただ…過保護すぎるだけだった。


あの人に抱きしめられるたび、息ができなくなる気がした。


守られていると同時に…壊されていく感覚。


でも、それで学んだこともある。


家をこっそり抜け出して、夜に外を歩き回る癖がついた。


ゴーストを驚かせるのが、日課みたいになってた。


多分…あの人は毎晩、俺が生きてるか死んでるか心配してたんだろう。


ここでは時間の流れ方が変だ。


重くて、遅い。


まるで一秒ごとに試されているみたいな感覚。


故郷の時間で換算すれば…


俺はもう17歳。


そろそろ大人ってやつだ。


自由にもなれる。


鐘の音はまだ鳴っていない。


朝の太陽は優しく差し込み…屋敷の人々はまだ眠っている時間。


でも俺とサフィラは…


汗だくで、シーツの中で笑い合っていた。


ワイングラスが二つ。


棚にはまだ半分残ったボトルが並んでる。


部屋中にワインと肌の匂い、そして…止まらない笑い声が広がってた。


「血に染まったブリゼルの地に行ってきた。」


そう言いながら、俺はボトルを口に運び、ぐいっと飲み干す。


笑いながらワインを見つめる。


「ずっと気になってたんだ…誰が黄金の玉座に座ってるのか。」


サフィラはからかうように眉をひそめた。


「また? 本当に何でも気にするんだね…」


唇を上げて言う。


「結局、この屋敷で一番変なのは…あんたなんだから、メル。」


俺はゆっくり笑いながら答える。


「それがどうした。」


真っすぐに彼女の目を見る。


「それに…どうして自分と違う種族に乗るんだ? 特別になりたいのか?」


彼女は少し近づき、尻尾をふわっと動かした。


「ほんと、メル…注目されたいだけでしょ?」


ベッドから起き上がろうとした瞬間、彼女が腰を掴んで引き戻した。


「何探してるの?」


甘く笑いながらそう言う。


「シャツ返して。」


手を伸ばす。


「もし日没までに戻らなかったら…ゴーストに殺される。」


彼女はわざと俺の手を無視して、低く囁く。


「さっきの、見た?」


「これ以上見つめたら…首切るよ。」


頬に触れ、尻尾を撫でる。


彼女の肌は、星のない夜空みたいな淡い青色だった。


サフィラは特別だ。


どこにも属さない存在。


レルフィリアでの生活は最初は地獄だった。


でも、少しずつ慣れてきた。


彼女は笑う。


その笑い声が部屋いっぱいに響き、俺はもっと身を寄せて、キスしようとした。


そのとき、三回のノック音。


ドアが叩かれ、空気が一瞬で変わる。


「若様、ご当主がお呼びです。」


執事の声は低く、でも重みがあった。


サフィラと目を合わせる。


「早く行って。」


彼女がそっと囁く。


「どうしてわかった? 寝てたって言ったのに。」


「いや、俺も寝てたはず。」


小さく答え、シャツを頭から被る。


「すぐ行く。」


ドアを開けると、執事が一瞬だけ部屋を覗き見て、すぐ顔を背けた。


俺は軽く手を振って、彼に廊下へ進むよう促す。


うつむいて、ついていく。


まるで怒られた子供みたいに。


「それで…ジェイヘイ、さっきのことだけど…サフィラが体調悪くて…俺はただ…」


必死に言い訳を探す。


「私はただの召使い。


あなたはご主人様の息子です。」


彼は淡々と答える。


「種族が違えど、あなたは若様。


召使いに耳も口もありません。」


気まずい沈黙。


二人で歩き続ける。


ゴーストの書斎の前で立ち止まる。


三回…ノック。


「入れ。」


低く鋭い声。


あの日の記憶が一気に押し寄せる。


9歳のあの日。


事故のあと、叱られるのを震えながら待ってた。


ジェイヘイを見る。


彼は無表情。


深呼吸して、静かにドアを開ける。


「……父さん、呼んだ?」


形式通りに頭を下げる。


ゴーストは俺を見ない。


封蝋された赤い封筒を手に持っていた。


「三日後、舞踏会がある。」


封筒を差し出す。


「出席しろ。息子として、この土地の代表として。


嫌なら、無理強いはしない。」


封筒を受け取り、落ち着く。


「俺はもう子供じゃない。


守られる必要なんて、もうない。」


自然に言葉が出る。


「父さんも言ってたよな…いつか自分の身は自分で守れるって。


今、それを証明させてくれ。」


ゴーストは…何も言わなかった。


自分がどれだけ危険な立場にいるか、わかってる。


それでも…封筒をポケットに押し込む。


初めて外の世界に出られるチャンスだった。


封筒を開ける。


金色のインクで輝く紙。


もし、この先何が起こるか分かっていたら…


もしかしたら…断ってたかもしれない。


でも、あの時の俺は…


ただ、自由に呼吸したかったんだ。


たった一晩だけでも。









Bem, nos vemos no próximo capítulo. ^-^

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