甘いメル

彼は人間――死なない者たちの中で、ただ一人。

かつて人間たちは、この世界を滅ぼしかけた。フリリアは彼らを追放し、二度と戻れないようにした。それなのに、今ここにいる。メルという存在は、誰にも知られてはならない「過ち」。忘れ去られるべき、忌まわしい過去の残滓。

ゴーストという残酷で謎めいた男に連れられ、メルは消えない罪を背負いながら生きている。時間が経っても癒えない傷。捨てたい過去。そして、この世界に許されない存在。

人間社会から遠く離れ、自分が「何をしたのか」、そして「何者なのか」を隠し続けてきた。

だが、遠くで鳴る鐘の音が、眠っていた運命を目覚めさせる。

生まれてはいけなかった愛。壊れた忠誠。巧妙に縫い付けられた仮面の裏で渦巻く嘘。

そして、過去が癒えない傷口のように甦るとき――
メルは選ばなければならない。

逃げ続けるのか。
それとも、世界が恐れる「怪物」として立つのか。