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9.詩織の本心

まだ夕方の時間で混んでなくて良かったと、軽いツマミで酒を呑む。


話題はどうしても共通している事になるけど、今日は大輝の話が広がらない。 この2人で大輝の話がないのは、さすがにおかしいから、坂本は酒を呑むペースを落とす。

なるべく詩織に話をさせるように、聞き役にまわる。


「…坂本、私はあっちに行ったら〝木村詩織〟じゃないんだよ。〝高野大輝のお嫁さん〟なんだよ」


「…どういう事?」


「大輝の嫁になるなら、工場の事も早く覚えるために仕事手伝って欲しいって。

マンション借りてるのももったいないから、大輝の実家の空いてる部屋に引っ越してくればいいって。

結婚は、もう少し先だって言ってるんだけど、周りはそうは思ってくれないみたい。

お正月に挨拶に行って、始めて大輝のご両親の意向を聞いた。改めて結婚って家とするんだって思ったよ」  

お酒が入っているからか、詩織がいつもより饒舌になってきた。坂本の作戦通りだ。


「前に聞いた時と結構話が変わってきてるな」

「大輝は気にしなくていいよって間に入ってくれるけど、全てを無視するわけにはいかないしね」


「完全に向こうに引っ越した時に、詩織やっていけるか?」

「大輝を信じて選んだ道だからやっていくしかないでしょ」

もう戻れないと、詩織は思っているかもしれない。


「詩織、選択肢は沢山あるって事は頭に入れておけよ。それしかない訳じゃないんだ。

お前、相手に悪いと思うと絶対に譲るだろ?譲れない部分はちゃんと言えよ」


「大輝に対しても?」


「当たり前だろ。一番身近に居るんだから、一番詩織の事を理解してもらわなきゃ大輝の実家となんかうまくやってけないぞ」

「大輝忙しそうだし、なかなか言えなくてさ」


「お前、しっかりしろ。大輝を頼って向こうへ行くんだから大輝に支えてもらうのが当然だろ。

大輝もそのつもりでお前を連れて行くんだから、遠慮してる場合じゃない」


そうだね…と言い、詩織が続ける。

「もし相手が坂本だったら安心出来てただろうね…」

「もし、オレだったら…」

坂本は言いかけてやめ、詩織を見る。


「今から大輝に本音を言えなくてどうするんだ?

大輝はちゃんと受け止めてくれるから、安心して話せ、なっ」


「うん…坂本にこうやって相談するようにね」

「そうだな…まぁ、オレと大輝とじゃ詩織の中での立場が違うから、オレには相談出来るんだろうけどな」


「それもあるかもしれないけど…坂本が頼りになるからだよ。話を聞いてもらうと、迷っていた部分がふっ切れる感じ。代わりに負担かけちゃってるかもしれないけど、ごめん」


坂本は、残っていたお酒を飲み干す。

さっきよりアルコール度数の高いお酒を注文する。



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