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6.詩織の正義

何やら、美咲の機械周辺がざわついている。

坂本は、離れた場所で他の機械を見ていたので気付くのが遅かった。


「何かあった?」

近くまで行き、女性作業者に聞く。

「営業課の人と美咲ちゃんが揉めてるみたい」

「えっ?」

「あの無理な事平気で言ってくる人に、美咲ちゃんもガマンの限界だったみたい」



「それ位融通きかせろよ。分かんないヤツだなぁ」

確かに営業課の橋本の声が聞こえる。


「他にも急ぎの仕事があるので、橋本さんの仕事だけ優先させる訳にはいきません」

美咲の声が、少し震えている。


たまらず坂本が一歩前に出ようとすると、後ろから詩織に腕をつかまれた。


「坂本は営業課へ行くんだから、今、橋本さんと揉めない方がいい」

そう言うと、詩織が前に出た。


「橋本さん、私が代わりにやりますから、依頼書こちらに下さい」

橋本はチラッと美咲を見ると、依頼書を詩織に渡した。


「いつまでに加工すればいいんですか?」

「今すぐだよ、今すぐ。午後1番にはお客さんの所に納品したいの!」


詩織はふぅ~とため息をついた。

「分かりました。では、橋本さんの仕事を最優先するので、島田営業課長と鈴木主任に納品が遅くなると、伝えておいて下さい」


「ちょっと、それどういう事?」

橋本は慌てた様子で詩織に詰め寄る。


「島田課長も13時に納品予定。鈴木主任は14時に納品予定。お二人とも2日前から依頼書を発行してくれましたが、材料が入って来なくて今日まで加工を待ってくれていたんです。

それを差し置いて、先にやって欲しいという事なので、お二人に事情を説明しておいて欲しい、と言ってるんです。では…」


「では…じゃないんだよ!」

橋本が詩織の手から、依頼書をひったくるように取る。

「他のヤツに頼むからいい」


「他にやってくれる人がいるんですか?」

…誰も橋本と目を合わせない。


「製造課の中で橋本さんの悪評が巡ってますよ。

おそらく島田営業課長の耳にも入ってると思います。

橋本さんの依頼書が正規のルートでまわってくるか?と先日確認されましたので、一度もまわってきた事はない、女性社員にばかり無理を言っている、と伝えたばかりです」


「ホントか?」

「えぇ」


クソッ、と吐き捨てるように言うと、橋本は依頼書を持って逃げるように工場を出ていった。


美咲は詩織にお礼を言い、女性作業員達は詩織を称賛していた。

坂本は詩織の気遣いを有り難く受け止めた。


普段、どちらかと言えば受け身で大人しい詩織が前に出る事は珍しい。

詩織にしては、かなり勇気がいった行動だっただろう。

坂本と目が合うと、詩織はホッとしたように笑った。




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