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39.台風と坂本家

「雨風が強くなってきたね」

リビングのテレビをつけっぱなしにして、耳から情報が入るようにしている。

このままの進路をたどれば上陸するらしい。

美咲と坂本のお母さんは一緒に夕食の準備中だ。


一度お邪魔をした後も、度々食事をご馳走になり、坂本家にも慣れた。

台風が近づく予報を心配した坂本が、出張中だからと、実家に居るように言ってくれた。


「実は大丈夫なのかしら?」

「坂本さんは台風の進路方向とは別の方角へ行ってるので大丈夫みたいですよ」

「そう。美咲ちゃん、冷蔵庫からマヨネーズ出してくれる?手がお肉だらけだから」

「ハンバーグにマヨネーズいれるんですか?」

「隠し味よ。私がいいって言うまで入れてね」

「台風は嫌だけど、お母さんの作る料理はどれも美味しいから嬉しいな」

談笑しながら、美咲は付け合わせのサラダの準備を始める。


雨で濡れた愛のお風呂を待って、みんなで食卓を囲んだ。仁は夜勤で遅くなるらしい。坂本が居ない実家にお邪魔するのは始めてだが、何度も遊んでいる愛が居るのは心強い。


それこそ今年の美咲の誕生日は平日だったため、坂本の出張と見事に重なった。その日も愛と奈々と仁と4人で軽く呑みに行った位だ。

次の日仕事の奈々はその後渋々帰り、美咲のマンションには次の日の授業が午後からだった愛が泊まった。坂本から預かっていた誕生日プレゼントのネックレスを渡してくれ、女子トークに花が咲き、次の日の仕事中は睡魔との闘いだった。


愛も奈々もタイプは全然違うが、不思議と気が合ってすぐに打ち解けた。美咲が一番年上だが、場合によっては奈々が先陣を切ってくれたり、愛が意見をまとめてくれたり、役割が上手くまわるから、自分が年長者だからと気負わず過ごせる所がいい。


ゴールデンウィークも夏休みも、みんなで車を借りてテーマパークへ行ったり、近くのキャンプ場でバーベキューをしたりした。


「私が居ない時も4人で出掛けたりしたの?」

気になって愛に聞いた事がある。

「ウチに奈々がご飯食べに来る事はあったけど、こんなどこかへ遊びに行くなんてなかったよ。だって奈々がいるだけでほぼ兄妹で出掛けるようなもんでしょ?

美咲ちゃんが来てくれる様になってからだよ。みのにぃの彼女が美咲ちゃんで良かった」

愛の言葉が嬉しくて、涙が出そうになった位だ。




お風呂ももらって、愛の部屋で軽くビールで乾杯する。

愛はベッドを使わず、布団を2人分敷いてお互いその上に座っている。

ベッドは簡易的にビールやお菓子を置く机だ。


雨戸がガタガタいって風が強く吹いているのが分かるが、それも気にしてられない程、愛の〝好きな人が出来た〟トークで盛り上がる。


「愛ちゃん、写真ないの?写真」

「この人だよ、右から2番目の人」

「えぇ〜小さくてよく分かんない。今度いつ会うの?」

「同じ大学の人だから、授業では会えるけど…」

「2人で会う約束はしてる?」

「えっ、してない。なんか勇気が出なくて自分からは誘えないよ。今はグループ交際止まりだよ」


愛の言葉に美咲が姿勢を正す。

「愛ちゃん、私と坂本さんが付き合ったきっかけは、前も言った通り私がバレンタインのチョコをあげた事だよ」

「そうだったよね」

「それもその時、坂本さんには他に好きな人がいたんだよ。でも今言わなきゃ後悔するって思って、本命チョコって言ったの」

「みのにぃに好きな人がいるの知ってて告白したの?」

「もう言ってもいいと思うから言うけど、好きな人が会社を辞めて付き合ってた彼について行っちゃったの。

同じ会社の人だったから、坂本さんを見ていた私は落ち込んでる理由を知ってる。

それでも気丈に振る舞う姿を目の当たりにして、なんとか元気出してもらいたくて、私が近くに居るよ、気付いてよって言いたくなっちゃった。

タイミングもあったと思うけど、でもそのおかげで今すごく幸せだし、坂本家のみんなとも奈々ちゃんとも出会えたし、あの時思い切ってホント良かったと思う」

「そうなんだぁ…」


「もちろん愛ちゃんのタイミングで決めたらいいけど、自分から動いてもいいと思うよ」

「でももし、上手くいかなかったらどうしよ…」

「そしたら私がやけ酒にとことん付き合ってあげる。上手くいったら祝い酒だよ」

「美咲ちゃん、自分が呑みたいだけでしょ?」

「バレたか」

顔を見合わせて笑い合う。


「愛ちゃん、可愛いんだからもう少し自信持ってもいいと思うけどな…」

愛の髪を触りながら、美咲がつぶやく。

「でもね、好きな人に好かれなきゃ意味がないよね」

「その彼がどんな子がタイプかそこから攻めてみる?でも顔は別にして、性格は自分らしくいれなきゃ意味がないし、それにあと半年で卒業だよね。彼は卒業後はどうするの…?」


…2人の恋愛トークは続く。

いつの間にか、外は静かになってきている。



次の日の夕方、坂本が工場にやってきた。

視界に入った時にはすでに近くにいて、驚きながらも「お疲れ様です」と声をかけた。


「昨日は大丈夫だった?」

周りに迷惑かけないように、小さな声で話す所が坂本らしい。

「美味しいハンバーグをご馳走になったよ。夜は愛ちゃんの部屋で、女子トークしてたの。電話でれなくてごめんね」

「連絡取れなかったから、心配になって仁にメールしちゃったよ。帰ってきてそっと愛の部屋覗いたら、2人で仲良く手をつないで寝落ちしてたって。静かに電気を消して立ち去ったみたいだよ」

美咲が、思い出して笑う。


坂本が一瞬美咲の手を握った。

「今度オレとも手をつないで寝よ」

目が合うと手を離して、スッと戻って行った。

美咲の顔はまだ照れで紅潮したままなのに。 



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