23.美咲と海
坂本の運転で、詩織の勤める喫茶店へ向かっている。
決めた時に美咲に一緒に行くか確認すると、あっさり〝詩織さんに会えるの楽しみです〟と言った。
坂本が詩織を好きだった事は、なんとも思っていないような態度だ。
快晴の気持ちのいい天気の中、ハンドルを握る。2人して、車内で飲む坂本用のコーヒーと美咲用のオレンジジュースを用意しているから、笑った。帰りの分まであるね、と話す。
この前呑みに行った事や、仕事中に迷惑がかからない程度で話す事で、美咲の事がかなり分かってきている。
片道2時間以上の車内も、話が途切れてもすぐに次の話題が見つかる。気兼ねなく過ごせるのはありがたいし、美咲が笑えば坂本も楽しくなる。そして自分が今すごくラクなのが分かる。
「坂本さん、海見えてきたよ」
窓を開けてみる。
「景色がいい所で1回休憩しよう」
ちょうどビューポイントと書かれた駐車場を見つけて停まる。
外に出て背伸びをしながら、深呼吸をする。
「気持ちいいなぁ〜」
そのまま、柵に寄りかかり海を眺める。
「運転、疲れてないですか」
隣に立つ美咲が聞く。
「元々好きだからね、全然大丈夫。美咲は?」
「笑い疲れました」
「お前が橋本さんのモノマネとかするからだろ。あまりに似てないからオレがやる羽目になったんだぜ」
「だって坂本さんもまったく似てないから」
「来月から営業課へ行くのに顔見たら思い出し笑いしちゃいそう」
そう言いながら、美咲のモノマネを思い出してまた笑えてくる。
「お前、他では絶対にやるなよ。笑ってくれるのはオレ位だからな」
「最後、ちょっと唇が尖るとこですか?」
「だから、やるなって」
モノマネする美咲を見て、また笑ってしまう。
「ホント、美咲と居ると楽しいよ…」
つぶやく様に言うと、打ち寄せる波をそのまま見つめる。しばらく無のまま水平線を隅から隅まで見渡してみる。今日は風がないから、波も静かだ。
「目的の喫茶店はもう近いはずだから、詩織に会いに行こうか」
「はい」
詩織の説明と地図で見ておいた記憶を頼りに、車を走らせる。思ったより分かりやすく、迷わず着いた。




