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18.美咲と坂本

美咲の希望で、居酒屋へ来た。

ホワイトデーのお返しなのに?と確認したが、オシャレな店じゃなく、赤ちょうちんの居酒屋がいいと言う。

確かに女子だけでは入りにくいだろう。


近くの駅で早目に待ち合わせ、何度か大輝と行った駅近の居酒屋へ行く。

カウンターだけの狭い店だが安くて美味しい。


「こんな日に若い女の子に似合わないウチでいいのかい?」

顔見知りの大将にからかわれながら、お互いに生ビールと食べたいものを頼む。

まだ店も混んでないから、注文した物はすぐに来るだろう。乾杯と同時に飲むビールが体に染み込んでいく。


「今日は何してた?」

美咲に問いかけながら耳を傾ける。

一人暮らしをしている美咲は、休みは家事を優先するらしく、朝からシーツを洗ったり衣替えをして過ごしたらしい。


「一人暮らしとは聞いてたけど、やっぱり美咲しっかりしてる訳だよな。オレは実家暮らしだから、まだ親に甘えてばっかりだしなぁ」


「坂本さんは何してたんですか?」

久しぶりに車を洗って、カー用品店をブラブラして少し買い物に行った位だよ、と話す。


その間に注文した串物が届くから美咲に進める。

「一人暮らしなんだから、沢山食べて。大きくなれないぞ」

「今から背は伸びませんよ」

美咲が焼き鳥を豪快に食べて、美味しい!と笑顔で言う。

作った訳でもないのに、坂本のてがらのように嬉しくなる。


美咲も呑める方だとは知っていたが、ビール位では表情に出ない。それももう終わりそうだ。

確認して、美咲用にレモンサワーを頼むと、美咲が言う。


「坂本さんは、今日はビールでいいの?」

「今日はもてなす方ですから。それに今日は美咲の話を聞きたいからさ、まず好きな物から話してよ」


〝好きな物かぁ…〟美咲はつぶやいて食べ物から話す。

坂本の誘導で、テレビ番組や歌手、スポーツや漫画まで話す。時々出る手振りが可愛らしくて、坂本は微笑んでしまう。

坂本も自分の話を織り交ぜながら、お酒も入って楽しい時間は過ぎる。


美咲は、好きな物に関してもハッキリしているから分かりやすい。それでいて裏がないから、本当の所、を考えなくていい。

でも、まったく気を使えない訳でもなく、空いた皿は自然に片付けるし、何より坂本にもいいタイミングで質問を入れる。職場でもそうだが、改めて自然に気を使える子だなぁと思う。


美咲は後輩だから自分はこうあるべき、という勝手な判断がどんどん崩れていく。

美咲の声や仕草が癒しとなって肩の力が抜けていく。


「美咲は呑むと話す方?」

「雰囲気と相手によりますね。坂本さんは聞き上手だから…」

「そうかぁ?話してると分かるけど、美咲はオレより全然しっかりしてるよな」

「う〜ん、しっかりしてるってあんまり嬉しくない、よく言われるから。女の子ってちょっと抜けてる位がやっぱり可愛いいじゃないですか」

そう言って、2杯目のレモンサワーを呑む。

やっと頬がほんのり赤くなってきている。


「美咲は可愛いよ」

「…今は私が言わせましたよね?」

「言わざるを得なかったな」

美咲が坂本を軽く叩く。

2人で顔を見合わせて笑うと、もっと美咲を笑わせたいと思う。




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