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13.坂本と美咲

終業のチャイムがなって、今日も1日あっという間だったな、と思う。

まだ、やりきれない仕事が残っている。


ゆっくりと肩を回しながら、いつものように自販機へ行き、コーヒーを買う。

今はもう、残業の予定を聞きに寄ってきてくれる、同期の友は居ない。

坂本の機械の横に来て、梱包を手伝ってくれる愛しい同期も居ない。


2人が居なくなってから、一気に私用の会話の量が減った気がする。

寂しさを紛らわせたいから、出来るだけ忙しい方がいい。

それに、あと1ヶ月半もすれば課が変わって営業課の研修も始まるだろう。

場所が変われば、雰囲気も変わって、段々と思い出す頻度が減ることも期待している。


今はただ、2人が居ないという現実を受け入れて、慣れるしかない。

自分だけ取り残されているような感覚を抑えて。


コーヒーをいつものように一気に飲み干し、缶を捨てる。あと2時間で切り上げようと、予定を立てる。


工場に戻ると、数台の機械が動いていた。

坂本と同じ様に、残業の人が何人か居るようだ。

ざっと工場内を見渡す。

機械の不調で止まっている人は居ないようだ。


「美咲、大丈夫そうか?」

自分より後輩の美咲には声をかける。

「あと1時間位です。坂本さんは?」

「オレはあと2時間かな」


「何か手伝いますか?」

美咲の心遣いがありがたい。

「いや、大丈夫だよ。ありがとう」


自分の機械に戻り、黙々と作業を進める。

詩織が居なくなって1ヶ月弱経つのに、気を抜くとまだ近くに居る感覚に陥る。


離れてから一度だけメールがあった。

お互いに近況報告だけして、やりとりは終わってしまった。

その後も坂本からは連絡出来ずにいるが、元気にしてるのか、と作業しながら想う。


最後の日報を記入していると、帰るだけの美咲が出入口近くの坂本の機械に寄った。

「お疲れ、予定より遅かったな」

坂本が声をかけると、紙袋を差し出す。

「オレ、もうもらったよ」

「あれは、みんなに配った義理チョコです」


「もらっていいの?」

美咲がうなずく。


透明なラッピングで、チラッと見えて分かった。

「オレ、抹茶のチョコレート大好きなんだよ。話したことあったっけ?」


美咲が首を横に振る。

「手作りしようと買い物に行ったんです。そこでたまたま会って〝誰にあげるの?〟って聞かれたから〝坂本さん〟って答えたら〝坂本は抹茶のチョコレートが好きだよ〟って言われて…」


「詩織に会ったのか?」

美咲が今度は首を縦に振る。


「知らないうちにこっちに戻ってきてたんだな」


「会ってないんですか?」

「会ってないよ」

ふと、先日のメールが気になった。


「坂本さん、まだ詩織さんの事好きですか?」

「えっ?」

「坂本さん見てれば分かります」

「そっか」

さすがに恥ずかしくなって、挙動不審になる。


「そのチョコ、本命って言ったら迷惑ですか?」

目の前の美咲を見て、返事に戸惑う。

前からだが、美咲はイメージに似合わず直球で話すから、返事に躊躇する時がある。


「少し、時間もらっていいか?」

「はい。同情とかじゃなく、ゆっくり考えて下さい」


軽く笑って美咲が帰って行く。

今まで美咲の事は、後輩の可愛い女の子としてしか見ていなかった。

ただ、気持ちは単純に嬉しい。





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