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10.坂本の本心

店を出て、詩織の家まで歩く。

酔いが一気に冷めるくらい風が冷たい。


「詩織、寒くないか?」

「沢山着てるから大丈夫」


寒さからか星空が余計に綺麗に見える。

今は必要のない演出なのに。


「詩織が会社に来るのもあと2週間か…」

「なんだかんだ有休も残っていたしね」


ゆっくりと歩きながら、今日みたいな日は二度と来ないだろうな、と思う。


「詩織、幸せになれよ」

「何よ、急に」

詩織が笑う。


「お前達が幸せになってくれないと、オレが困るんだよ」

「どうして?」

「どうしても」

お互い目を合わせた後、しばらく無言になるが、もう詩織の家は目と鼻の先だから間は持つ。

そのままゆっくり歩く。


「送ってくれてありがと」

詩織が少しうつむきかげんになる。

「寒いから早く中に入れ」

ポケットに手を入れたまま、坂本は詩織を急かす。


「坂本…」

「ん?」

「大輝が来なかった理由を聞かないの?」

詩織が顔を上げる。


「言えるなら言ってるだろ?」

「…私、今日の事忘れないよ」

「オレもだよ。数年後に大輝も入れて思い出話に出来るといいな」

「…うん」


玄関に吸い込まれた詩織を見届け、1人で駅に向かう道のりは、長くて苦しい。


詩織と大輝、両方の関係を壊したくなくてこの道を選んだ。

これが正しかったのかは正直分からない。

ただ、今の自分の気持ちに正直になっているかと聞かれたら、なっていない。


「詩織には言っておきながら、男らしくないなオレは…」


駅近くの居酒屋に入る。

独りで強めのお酒を呑みながら、今日の事を思い返すが、全然酔えない。



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