電脳世界『ポリゴンワールド』

ストーリーサイド『波動』

群青 音廻は帰還した

幻「おはよう、よく眠れた？」

音廻「そんなに。寂滅さんの話が気になりすぎて」

幻「やっぱり、二人が心配？」

音廻「当たり前だよ！　それに……なんていうか……二人には『私達を守る意思』っていうのが、明確に感じられたっていうか……」

幻「お、それはそれはいいものだ」

音廻「どうして？」

幻「プログラム関係なしに、私達を守ってくれたんでしょ？　嬉しいじゃん」

音廻「……そうだね」

幻「借りはちゃんと返さないとね。姉さん達のとこのに行こう」

寂滅「おはよう、昨日はよく眠れた？」

音廻「……なんで叡智さんあそこで燃え尽きてるの？」

寂滅「コーヒーの飲み過ぎだよ。まぁそんなことは置いといて、二人は、ポリゴンワールドはどこに生成されていると思う？」

幻「機械の中………じゃないんだろうね」

寂滅「異世界を生み出して、そこにデータを保存してるんだって」

音廻「はっ！？　じゃあ、電脳世界もある意味現実ってこと！？」

寂滅「そういうことになる。致命的な欠陥があったから、技術は公にはされなかったんだろうね」

幻「欠陥……？」

寂滅「この機械は異世界を生み出す場所が完全ランダムってことがわかったんだ。つまり、『異世界』と『この世界』が重なる可能性もある……」

音廻「そうなると、お互いに影響が出てしまう？」

寂滅「そう、それを踏まえて新聞を見てほしい」

音廻「……偶然として片付けるには無理があるな」

寂滅「確か、電脳世界に異常が起きてるんだよね？」

幻「うん、システムにバグ……がどうとか」

寂滅「今すぐにでなくとも、その影響はきっとこの世界にも現れる……参ったね」

音廻「どうすればいいの？」

寂滅「電脳世界の異変を解決する以外に方法はないと思う」

音廻「それならさっさと行かなきゃ」

寂滅「……私は正直反対だよ。バグまみれのゲームの中に二人を送るだなんて無茶だ。強制ログアウトができなくなる恐れもあるんだよ？」

幻「それでも、二人を放っておけるほど私は非情じゃない」

音廻「元はといえは、私達のせいなんだ。ちゃんと拭うものは拭わなきゃ」

寂滅「……少しだけ、姉さんと相談させてほしい」

幻「寂滅姉、だいぶ悩んでるみたい」

音廻「無理もないよ。……この世界も大変なことになるかもしれない、その前に片付けないと」

幻「そうだね。アズスチル達のことも気がかりだ」

音廻「話はどうなった？」

寂滅「………やっぱり、二人だけで行かせることはできないよ」

音廻「そっか……それが答えなんだね」

寂滅「だから、私達も電脳世界に行くよ」

幻「えっ？　じゃあ誰がこの機械を見るの？」

アヴォルフ「任せてくれ妹様、私がやるから」

寂滅「電脳世界にはいつでもログインできる。準備ができたらすぐに行こう。……ほら姉さんも準備して！」

叡智「そんながっくんがっくん揺らさなくても起きてるからっ！」

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音廻「無事に、戻って来れたみたいだ」

幻「身体の異変は特になし。大丈夫そう」

寂滅「………あ、そこら辺に生えてるやつ食べられるんだ」

叡智「寂滅それ毒キノコだからぺっしなさい！！」

寂滅「っとと、呑気にしてる場合じゃない。何が起きるかわからないもんな……」

幻「これからどうする？」

音廻「システムがある場所に行けば良いんじゃないの？」

寂滅「いや、下手に動いて危険に晒されるより情報を集めながら拠点に向かおう。貴方達が仲間にしたオリジナル電脳体が居るんだよね？」

音廻「うん………みんな大丈夫かな………」

叡智「…………なんで拠点が空飛んでるの？」

幻「アズスチルに言って」

音廻「高所恐怖症の人待ったなし」

寂滅「ふむふむ……ここは本来エネミー電脳体は侵入できないんでしょ？」

音廻「アルカディアさんはそう言ってた」

幻「ま、普通に侵入を許してたけどね」

叡智「なるほど……拠点自体にエネミー電脳体の侵入を防ぐ仕組みはないみたいだ。エネミー電脳体のほうに命令が組み込まれていたんだろうな」

寂滅「ということは、エネミー電脳体のデータが書き換えられている……ってこと？」

叡智「そう考えるのが一番しっくりくる。とりあえず、拠点のデータを書き換えて置こう………よし、これでエネミー電脳体は近寄れないはず」

幻「さらっとすごいことするじゃん」

叡智「叡智の名前は伊達じゃないからね」

音廻「その調子で世界まるごとどうにかできないの？」

叡智「不可能、ではないと思う。異世界と現実世界との重なりが今回の異変の原因だから。でも問題なのはバグに直接アクセスしないといけないことなんだ」

幻「システム、に？」

寂滅「この世界の中心に管理を行うシステムがあるみたい。ただ……地形が変わってる可能性が高いけど」

幻「変わってないことを祈るしかないか……」

音廻「それじゃあ早く出発しよう、変わる前に突撃しないと」

叡智「……その前に、ここらに居る電脳体達から話が聞きたい。少し時間をくれないか」

幻「わかった、手短に行こう」

幻「建物はボロボロだけど、人的被害はないみたいだ」

音廻「あ、姉さん達。意外と元気そうで良かった」

アズスチル「全然良くない。二人が無事なのは良かったが断じて良くない」

幻「エルドラドとアルカディアは？」

シルヴァリオン「そりゃぁ、汝らを庇ったからなぁ……」

音廻「そうじゃなくて、復活はしてないの？」

アズスチル「それは、そうなんだが……オリジナル電脳体を修復するのは中心区にある蘇生（リザレクション)システムの仕事だからな……私達にそれを知る術はない。中心区に異常がある以上、ちゃんと復元されているかどうか……」

シルヴァリオン「アズスチル、お前は心配しすぎだ。エネミー電脳体が暴走しているおかげで帰りが遅いだけ、ちゃんと復活しているさ」

アズスチル「だといいが」

音廻「どう思う、幻さん？」

幻「かなり不味い感じがする、姉さん達にも教えよう」

寂滅「エルドラドとアルカディアがまだ復活してない？」

音廻「だそうだよ」

叡智「楽観視できたらしたいところだが、そういうわけにもいかなさそうだな……」

寂滅「現実世界で突然倒れた二人、そして電脳世界でやられまだ復活していない二人………これは繋がってるとしか思えないな」

音廻「二人を助けるには電脳世界の二人を助けなきゃいけないってことだね」

叡智「多分ね」

幻「やるしかないじゃんそんなの」

音廻「だよね」

寂滅「それじゃあ早いところ中心区に行こう」

アズスチル「ちょっと待った」

音廻「姉さん？」

シルヴァリオン「前置きは無しだ。我らも中心区に行く」

幻「えっ？」

アズスチル「ここで黙って過ごせるものか。拠点は渚達に任せることにする」

叡智「……危険だぞ。おすすめはできない」

アズスチル「そんなもの、百も承知さ」

シルヴァリオン「それでも譲れないものが我らにはあるのさ」

寂滅「だけど……」

幻「手を貸してもらおう。戦力は多い方が良い」

音廻「私の姉さん達は強いんだ！　そう簡単にはやられないよ！！」

叡智「……わかった、そこまで言うのなら。……行こう、二人を助けに」